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tetsuya99
【せりふ三題噺】問題ありません|爆弾低気圧.マティーニ.六法全書|ショートショート
「——問題ありません。」
女は静かにそう言って、目の前の爆弾低気圧を睨んだ。
街全体が風で唸り、空が怒っているようだった。
カウンターの上では、マティーニのグラスが揺れている。
女の名は、法条リラ。
元・気象庁勤務、今は“天候裁判官”を名乗る魔法使い。
彼女の持つ六法全書は、天気の規律を裁くための“呪法書”でもあった。
ページをめくるたび、風がざわめく。
第66条、〈気圧変動に関する不当行為〉。
リラは指先でそこをなぞり、囁くように唱えた。
「風よ、己の立場を思い出しなさい。」
すると、荒れ狂っていた嵐が一瞬で鎮まり、
街には静かな雨音だけが残った。
彼女はグラスを手に取り、一口だけマティーニを飲んだ。
「この程度の低気圧、まだまだ可愛いわね。」
そう呟いて、六法全書を閉じる。
表紙の金文字が、かすかに光った。
第六章 “心の天気”に関しては、自己責任とする。
リラは小さく笑った。
嵐も恋も、扱い方を間違えれば災害だ。
——けれど、ちゃんと向き合えば。
「問題ありません。」
今夜も、彼女の裁判は続いていく。
了

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