鉄板上司が立ちはだかる!「言った者負け」職場は危険がいっぱい|ニデック品質不正@生きた教科書を読む
リスクコラム中井です。
不祥事をいくつも分析していると、同じような構図に出くわします。
「言った者負け」という職場の実態もそう。とても危険なので、用心が必要になります。
■物言えぬ組織を作る鉄板上司
諸悪の根源は、分厚い鉄板のような上司、人呼んで鉄板上司です。
何を言っても弾き返され、自分が苦労するだけと分かった部下は、「言わない方が得だよね」とあきらめるーーすると、不祥事が再生産されて膨れ上がり、いつか激しくパンクする。
モーター大手「ニデック」(京都市)の一部拠点でも、同じでした。
品質不正を分析した調査報告書の101ページを読んで、「またか~」とため息が出ました。(2026年09月04日付☞欄外①にURL)
<問題を報告して是正すれば、……売上及び利益の減少又は損失の計上につながることへの懸念があった>
<上位組織へ報告すれば叱責、責任追及又は人事上の不利益を受け、報告者自身がその後の顧客対応及び問題解決を担うことになるとの不安も、問題を報告しない理由となっていた>
<問題を報告しても十分な支援を得られず、報告者自身が対応を抱えることになるとの認識から、報告が「言った者負け」と受け止められていた>
「ニデック」の場合、強権経営者に率いられていたため、上層部になればなるほど、上司の鉄板は厚く硬くなっていただろうと思います。
こんなプレッシャーがのし掛かった物言えぬ組織の内側で、品質不正が大きく育っていったのです。
■パイプ詰まりは山ほどある
なにも、「ニデック」に限った話では、ありません。昔から、実例は山ほどあります。
たとえば、2021年10月に公表された三菱電機の品質不正に関する調査報告書(☞欄外②にURL)も、同じように指摘しています(269ページ)。
<「言ったもん負け」という言葉に表れているように、問題を報告したとしても、その解決が現場に丸投げされるのであれば、現場は、解決が困難な問題であればあるほど報告を躊躇(ためら)うことになる。……三菱電機が、会社として現場を全面的にサポートして解決策を考え出してくれるという信頼感がなければ、現場が問題を報告することは難しい>
なんなら、もっと、さかのぼれます。
20年ほど前、巨大製鉄会社の工場で違法排水と排水データ捏造が発覚。立て直しのために送り込まれた新所長に、インタビューしたことがあります。
その所長は、15000人の従業員から「情報が上がってくるシステムがないこと」が問題だと気づきました。だから、携帯メールでのトラブル報告を、昼夜を問わず20人の部長に義務付けます。
「言っても意味がない」と部下に軽んじられた部長からの報告は遅くなる。これで、パイプの詰まり具合が分かったそうです。
以前の原稿でも引用した「悪い情報をあげてくる部下を大切にしよう!」という金言は、こうした事態を回避するために使われます。
そんな金言があるくらい、情報パイプの詰まりは懸案であり続けていると言えるかもしれません。
■責任は現場という理不尽
「ウチの職場も『言った者負け』だな~」と思い当たるなら、くれぐれもご注意下さい。
問題が発覚したあとの、責任の所在に注目してみましょう。
「ニデック」の報告書で、844件の品質不正について、「経営層が指示したり関与したりした事実は確認されなかった」と記述されています。結果として、直接的な責任を問われるのは、製造現場に近い従業員になるわけです。
もしも生成AIが使えたら、山頂の城にいる経営層が、ふもとまで続く何十枚もの鉄板上司でしっかり守られているイラストを作りたいところです。
この城と何十枚もの鉄板構造に、最も責任があるはずです。
ただ、風土とも呼ぶべきこの構造は、多くの先人が長い時間をかけて築いています。だから、この構造を作り上げた責任はあいまいに拡散し、改めて経営層を守ることになっていると思います。
エイヤッと、まとめてみればーー
経営層にとって、「言った者負け」という構造や風土を維持することは、ある意味で安全に繋がります。
逆に、現場スタッフにとって、「言った者負け」という構造や風土に甘んじることは、とても危険です。
そんな風に今回の品質不正を整理し直すと、汚名を着せられる現場スタッフが気の毒になります。最初から最後まで、理不尽です。
経営層が経営責任を明確にしないと、顧客企業、株主、社会から見放される。「ニデック」は、それくらい厳しい局面に立たされたと思います。
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ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。次の世代に後ろ指をさされないように、また、頑張ります。 <了>
【欄外①】ニデック【6594】2026年09月04日 開示情報 - 調査報告書の公表及び当社の対応に関するお知らせ ニデックに関しては前にも投稿してます。ドラキュラを蹴り出した結果報告が、今回の原稿です↓
【欄外②】https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/pr/pdf/2021/1001-b3.pdf
*ロクの祈り「あした天気になあれ」

