野又穫 増改築し続ける終わりのない旅
野又穫の描く建造物が過去の遺構なのか、未来の構造物なのか判然としない感覚に惹かれます。
当店では野又穫の画集は東日本大震災前の作品集しか在庫がありません。
静かで時間の止まったような画面を思い返しながら、震災後の作品がどのように変化したのかに思いを馳せています。

ALTERNATIVE SIGHTS もうひとつの場所 野又穫作品集
NOMATA PRINTINGS 野又穫画集
野又さんの絵は、まず石の柱のイメージがあり、そして背後にはかならず地平線がある。その地平線は、もちろん、ルネサンス期に芽を吹き、シュルレアリスムでその意味を確立した幻想の源としての地平線である。
野又さんの絵を、絵画好きの建築家である私は、以上のように理解したのだが、さて、最後に一つ謎が残る。誰もやらないそうした画法と画題を駆使して、野又さんは何をしようとしているんだろう。一本の石の柱と地平線によって、何を描こうとしているんだろう。幻想的な世界を描こうとしてるんだろうか。ちがうと思う。現代でふつうに幻想的世界を求めるなら、独立柱やパースの遊説のようなそれこそ古典的なやり方はしない。もっと、グニャグニャさせたり、ヘンな動植物を主役にすることで、いかにもの幻想画が生まれる。
野又さんが描きたいのは、幻想性ではないのではないか。どういえばいいか、野又さんの中には、未知の未来というコマッタモノがあって、それは言葉でも絵でもちゃんとはとらえられないから、仕方なく、せめてその予兆をなんとかキャッチしようとキャンバスに向かっているのではないか。
MINORU NOMATA ALTERNATIVE SIGHTS



ごあいさつ
図版
Ⅰ 気流を捕まえて
Ⅱ 昇る願望
Ⅲ 屋根と煙突の記憶
IV 緑色の気配
V 終わりとはじまり
VI 明暗のちから
Ⅶ 幾何形の不思議
エッセイ
「もうひとつの世界」小池一子
「予兆の画家― 野又穫」藤森照信
「エテーリアからマニエラへ―野又穫の気球についての覚書」谷内克聡
「野又穫の作品とその背景にあるもの」定松晶子
年譜
掲載作品リスト






2009年のシリーズ〈映遠〉では、野又は新たなテーマを見出したそれは「茶室」だと言う。そのためか、作品中の建築は少し小さめで、相変わらず人物は作品中には現れないものの、人間が生活する空間や気配を感じさせるものとなった。三角屋根が多く、塔にそれが組み合わされているものもある。野又にとって三角屋根は安心の住処である家を連想させるのだろう。「安らぐ」モチーフだという。視点は少し高い位置へ移り、穏やかな遠景が眼下に広がる。「だんだん自然に対して優しくなっている」「自分がいちばんホッとできる世界を描いているのかも知れない」という野又の言葉が実感される。
「絵は逃避的な世界ではあるけれど、留まるところではなくて、元気になって戻ってくる、そういうものでありたい」と野又は言う。
MINORU NOMATA ALTERNATIVE SIGHTS
野又穫 もうひとつの場所
野又穫
青幻舎
2010年
ソフトカバー
A4判
159ページ
区分⑫ アート・デザイン・芸能
分類⑫①アート・グラフィック(日本)
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