【医療―教育連携シリーズ①】医療と学校はなぜ連携出来ないのか? ー学校の視点からー
私がスクールカウンセラーとして学校現場に入り、
たびたび悩まされるのが医療と教育の連携の難しさです。
ふだん病院で仕事をしているだけに、
一歩外に出て活動をしていると病院に繋がることの
大変さが身に染みてよく分かります。
医療機関につながれない問題
これはもうどこの地域であっても共通の問題でしょう。
「電話して問い合わせたら受診まで3か月かかると言われた」
「あそこの病院では半年や1年待ちと言われた」
そんなことが日常になっています。
なかには、先日まで受付していたのにいざ電話したら
「初診は当分受け付けていません」
などと言われることもあります。
私が勤めている病院の話ですが、
児童思春期の予約は毎月第一月曜日に行ない、
2か月先の1か月分の予約を受け付ける
(例えば、2月第一月曜日に4月の予約分を受け付けして、
3月になると5月分の予約枠を受け付ける)
を行なうシステムになっています。
一般精神科のため、病院には
お子さん以外にも認知症の方や働き盛りの方、
書類申請などで数年ぶりに来られる方(再初診)など、
様々な方が来られます。
全体のパイを児童思春期だけに割り振れないのです。
児童思春期外来では病院の採算が取れない理由
これまた私が勤めている病院の話ですが、
下にあげる検査は無料で行っています
(保険診療外の検査なので、検査用紙代などすべて病院側の赤字)
未就学児(2歳~6歳):
ECBI(アイバーグ子どもの行動評価尺度)、
SESBI-R(改訂版サッター-アイバーグ児童生徒の行動評価尺度)、
ITSP(乳幼児感覚プロファイル)
児童・生徒(7歳~18歳):
Conners3(コナーズ3)
LDI-R(LD判断のための調査票)
SP(感覚プロファイル)
AASP(青年・成人用感覚プロファイル)
18歳以上の方:
CAARS(コナーズ成人ADHD評価スケール)
CAADID(コナーズ成人ADHD診断面接ツール)
A-ASD(成人期ASD検査)
1人に複数の検査を組むため、
その分コストや人件費がどうしてもかかります。
これが、児童思春期の間口を狭くしている
最も大きな原因だと思っています。
でも、医療と教育の連携が悩ましいのはこれだけではありません。
教育機関が医療と連携する時に感じる難しさ
※(注:ここから少し愚痴が入ります。お気を悪くされそうな方;特に医療機関にお勤めの方やドクターの方はご注意ください。もちろん読み飛ばしていただいても構いません)
苦労して医療機関に繋がったお子さんで、
診察時に担当医から
「発達障害は病院では治せない。
問題が起きているのは学校なのだから、
学校での環境調整が必要」
と言われてくる子がいます。
診察前の時点で、
既に学校ではできる限りの配慮を検討していました。
それでも
「不適応になりやすいこの子が医療に繋がったら、
何か活路が見えてくるのではないか」
という期待を私も学校の先生もご家族も込めていたのですが…。
診察の話を聞いた学校側(担任)の落胆は言うまでもありません。
このような病院側の対応はいくつかの誤解を招く可能性があります。
1)発達障害は「治すもの」ではない
最近は
ニューロダイバース(神経多様性)
という言葉が少しずつ聞かれるようになり、
発達障害(←そもそも、この言葉も既に使われていませんが)を
障害モデルで捉えない見方が主流になっています。
どのような合理的配慮があれば
この子が自分らしさを失わず過ごしていけるかを、
ご家族はじめ学校と医療とで話し合っていきたいのに。
誰も病院で「発達障害を治そう」などと思っていません。
2)学校(担任)への責任のなすりつけ
「問題が起きているのは学校なのだから、学校での環境調整が必要」。
これ、言いたいことは分かりますが、
「病院は薬を処方するだけ。
あとは環境調整できていない学校の問題でしょ」
という裏の意味が見え隠れしてしまうのは私だけでしょうか。
このような発言をする医療機関は
大体薬の処方だけして終了
という印象です。
肝心の
合理的配慮を共に考えたり、
地域と足並みを揃えてやっていくスタンスに
欠ける場合が多い
と感じています。
医療はどうやってもお子さんとご家族の日常には介入できないのに、
学校(担任)への責任のなすりつけが生じたことで、
今まで上手く行っていた
家庭―学校という日常の連携
が崩れてしまったケースもありました。
こうなってくると、
医療が介入したことで返って足並みが乱れ、
そのことでよりお子さんにしわ寄せがいくという逆効果も。
「薬をいくら服用しても効いていないように見える」
なんていうこともしばしば窺われます。
特別支援教育の困難さの何割かは、
こうした
不適切な医療の介入が原因となって生じている
パターン(←医原性と言います)
もあると感じています。
本来あった
家庭と学校のバランスを崩さない医療介入
こそが効果的なのだと考えています。
スクールカウンセラーとしてできること
私は公認心理師資格を持っていますので、
関わっている子が医療機関につながる際には
必ず以下の紹介書を作成しています。
(ドキュメントの個人情報を削除していますので、
公認心理師資格をお持ちのスクールカウンセラーの
先生はご自由にダウンロードしてお使いください)
保護者さまも、ダウンロードしてスクールカウンセラーの
先生に持参されても良いと思います。
支援内容としては、例えば
・不安の改善にむけた心理療法と環境調整、
・感覚特性に配慮した教室内環境の適正化と家族支援
のようにざっくりとまとめています。
そして、上記のように医療と教育の連携が
上手くいかなくなりそうな雰囲気を察知した際には、
紹介状の支援内容に下記文言を加えています。
・地域連携の推進(学校・行政・療育・医療との連携支援)と
適切な合理的配慮の模索
この一文を記載し主治医に見てもらうことで、
①主治医の視点を学校だけにフォーカスさせない、
②場合によっては「医療公認」で担当者会議を開催していく流れをつくる
→皆で適切な合理的配慮を考えていくチーム作りにつながる、
ということを狙っています。
初めに示したように大体の医療機関は
収益性とタイパの観点がネックになっていますので、
SCからの照会作業を通して枠組みを呈示すれば、
病院側も逆に服薬管理が自分たちの「役割分担」なのだと明らかになり、
返ってやりやすくなるのではないでしょうか。
様々なご意見があるかと思いますが、
「教育と医療の連携」の狭間で苦しむお子さん・保護者さんが
1人でも減るよう、力を尽くしていきたいと考えています。
今回もお読みいただきありがとうございました。
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