方程式を「解く」とは何をしているのか――ガロア理論入門:対称性・正規部分群・可解性(⚠️随時更新)
皆さん、こんにちは
HSP×アンチ東大主義の、@おはようございますです。
0. 学校数学の方程式観の限界
学校数学で方程式を学ぶとき、私たちはこう教わる。
係数が与えられる
計算すると解が出る
公式があるかどうかが重要
しかしこの見方には、決定的に欠けている視点がある。
それは
「解たちのあいだに、どのような対称性があるか」
という問いである。
1. まず用語を整理する
方程式とその解
例として、一般の3次方程式を考える。
$${f(x)=x^3+ax^2+bx+c=0}$$
解を
$${\alpha,\beta,\gamma}$$
と書く。
ここで重要なのは、
$${\alpha,\beta,\gamma}$$ という名前は 単なる命名 にすぎないという点だ。
どれが $${\alpha}$$ で、どれが $${\beta}$$ かに本質的な違いはない
解全体として「区別されていない」
これが 解の対称性 の出発点である。
2. 体と拡大体
体(field)
体とは、加減乗除(0で割ることを除く)が自由にできる数の集合である。
例:
$${\mathbb{Q}}$$:有理数体
$${\mathbb{R}}$$:実数体
$${\mathbb{C}}$$:複素数体
拡大体
体 $${K}$$ に新しい数を加えてできた体を 拡大体 という。
例:
$${\mathbb{Q} \subset \mathbb{Q}(\sqrt{2})}$$
根号拡大とは?
根号拡大 とは、
$${E\subset E(\sqrt[n]{a})}$$
の形の拡大体のこと。
四則演算 + 根号
私たちが「公式」と呼んでいる操作は、すべて根号拡大の反復
3. ここがガロアの革命(最重要)
革命前:体を直接調べていた
それまでの数学者はこう考えていた。
解を含む体をどう拡大すればいいか?
しかしこの方法では、5次方程式で完全に行き詰まった。
ガロアの発想転換
ガロアは、視点を 180度反転 させた。
「体そのもの」ではなく
体に作用する写像の集合 を調べよう
これが革命。
4. ガロア群とは何か
自己同型
体 $${L}$$ の自己同型とは、
和・積を保ち
係数体 $${\mathbb{Q}}$$ を固定する
$${L}$$ から $${L}$$ への写像
のこと。
ガロア群
$${\mathrm{Gal}(L/\mathbb{Q})}$$
とは、
「係数を動かさず、解だけを入れ替える写像全体の集合」
である。
群をなす
解の 対称性の総体
5. なぜ「正規部分群」でなければならないのか
結論
ガロア理論において部分群 $${H \le G}$$ が正規部分群でなければならない理由は、
部分群 H に対応する固定体が
係数体上で「自己同型に対して不変」にならないから
である。
①. 基本設定
$${K \subset L}$$:体拡大
$${G = \mathrm{Gal}(L/K)}$$:ガロア群
部分群 $${H \le G}$$ に対し、固定体を
$${L^H := \{x \in L \mid \sigma(x)=x \ \forall \sigma\in H\}}$$
と定義する。
②. 正規性と固定体の関係
$${H}$$ が 正規部分群であることは、
$${gHg^{-1} = H \quad (\forall g \in G)}$$
が成り立つことを意味する。
このとき次が成り立つ:
$${g(L^H) = L^H \quad (\forall g \in G)}$$
つまり、
固定体 L^H がガロア群全体の作用で不変になる
③. 正規でない場合に何が起こるか
$${H}$$ が正規でないとき、ある $${g \in G}$$ に対して
$${gHg^{-1} \neq H}$$
となる。
このとき、
$${g(L^H) = L^{gHg^{-1}} \neq L^H}$$
つまり、
同じ部分群から定義したはずの固定体が、
群作用によって別の体に移ってしまう
④. これは何が「ダメ」なのか
方程式を「解ける」と言うためには、
解の表示が
係数体だけに依存し
どの自己同型に対しても同じ形を保つ
必要がある。
しかし正規でない場合、
ある解を基準に定義された体構造が
別の解では別の体構造に変わる
これは
係数体上で定義された対象になっていない
ことを意味する。
⑤. 商群が定義できないという致命点
正規部分群でなければ
$${G/H}$$
は群にならない。
しかしガロア理論では、
$${\mathrm{Gal}(L^H/K) \cong G/H}$$
という対応が本質的である。
したがって、
商群が定義できない
次の段階のガロア群が作れない
拡大体の「段階構造」が壊れる
⑥. 可解性との関係
根号による解法とは、
$${\{e\} = G_n \triangleleft G_{n-1} \triangleleft \cdots \triangleleft G_0 = G}$$
という 正規部分群列で、
各商群$${G_{i-1}/G_i}$$ がアーベル
であることに対応する。
正規性がなければ、
この列自体が定義できない
「段階的に解く」ことが不可能
⑦. まとめ
部分群 $${H}$$ に対応する固定体 $${L^H}$$ が
係数体上で意味を持つためには
群作用に対して不変でなければならないそのために必要十分な条件が
$${H}$$ が正規部分群であること正規でない場合、
固定体が自己同型で移動する
商群が定義できない
方程式の解が係数だけで表せなくなる
6. なぜ「アーベル群」でなければならないのか
根号拡大と群の性質
根号拡大
$${E \subset E(\sqrt[n]{a})}$$
に対応する群の商:
$${G/H}$$
は必ず 可換(アーベル) になる。
厳密には、「1のn乗根」がすでに体に含まれている場合に限り、$${x^n - a = 0}$$ のガロア群は巡回群(アーベル群)になる。
もし1のn乗根($${\zeta}$$)が含まれていない場合、まず$${\zeta}$$を添加する操作が必要になり、その過程もガロア群に反映される。
「根号で解ける ⇔ ガロア群が可解群」という結論自体は正しいが、その内訳は「巡回群の積み重ね」である。
理由:
根の選び方は「巡回的」
巡回群は可換
非可換だと何が困るか
非可換群では:
操作の順序が意味を持つ
一貫した「公式」が作れない
つまり:
根号という操作では
非可換な対称性を壊せない
7. 可解群とは何か
群 $${G}$$ が 可解群 とは、
$${G=G_0 \triangleright G_1 \triangleright \cdots \triangleright \{e\}}$$
で、
各 $${G_{i+1}}$$ は $${G_i}$$ の正規部分群
商群 $${G_i/G_{i+1}}$$ はアーベル
であること。
8. 方程式が「根号で解ける」とは何か
ここで完全に一致する。
方程式が根号で解ける
⇔
ガロア群が可解群
これは偶然ではない。
根号拡大 ⇔ アーベル商群
拡大体の塔 ⇔ 正規部分群の塔
構造が完全に対応している
9. なぜ5次方程式は解けないのか
一般の5次方程式のガロア群は:
$${S_5}$$
$${S_5}$$ は可解でない
理由:内部に単純非可換群 $${A_5}$$ を含む
結果:
対称性を
根号操作で
段階的に壊せない
10. まとめ(決定版)
方程式の本質は「解の対称性」
解くとは「対称性を段階的に破ること」
根号は「アーベルな対称性」しか壊せない
5次方程式の対称性は、それを超えている
だから、公式は存在しない
