~3匹のこぶたパート2~ 藁の家か、レンガの家か。その先にあるもの
以前、こんなやり取りを耳にしました。
上司が部下に言ったそうです。
「君の作った資料は、三匹のこぶたで言うと“藁の家”だ。 狼が来たら、すぐに吹き飛ばされる」
すると部下は、こう返しました。
「でも、どうして狼は藁の家から行くんですか? レンガの家を建てていたら、途中で食べられちゃいますよね」
思わず、なるほど……と唸ってしまいました。
この話を聞いて、 「生意気だ」と感じる人もいれば、 「よく言った」と感じる人もいるでしょう。 あなたなら、どう受け取りますか。
見ているのは、同じ仕事。違うのは“景色”
部下は「効率」を見ています。
まず出して、方向性を確認する。 ズレていたら、早めに修正する。
一方、上司は「完成度」を見ています。
上層部の時間は貴重。 一発で、必要な情報が揃った資料を出したい。
どちらも、間違ってはいません。
ただ、立場と経験によって、見ている景色が違うだけです。 仕事を一人でしていれば、 この違いは表に出ません。 でも、チームで仕事をする以上、
こうしたズレは必ず起こります。
違いがあるから、強いチームになる
ある方は、こんな意見をくださいました。
この上司と部下のコンビは、
考え方が対極にあるからこそ、
最高のパフォーマンスを発揮できる可能性が高い。 同じ考え方の人ばかりだと、 見落としや思い込みが増えます。 違う視点があるからこそ、
仕事は立体的になります。
仕事を複数人で行う本当のメリットは、
違いを持ち寄れることなのかもしれません。
「どう伝えるか」で、衝突は減らせる
一方で、こんな実務的な声もありました。
「例え話をする前に、 『ここは上が特に気にするポイントだから入れておきたい』 と理由を伝えればいいのでは?」 確かに、その通りです。
「ちゃんとやれ」ではなく、
「誰が、何を、なぜ重視しているのか」を共有する。 感情や上下関係ではなく、
仕事の前提条件をすり合わせる。
それだけで、無用な衝突は減ります。
完成度は、部下自身のためでもある
別の方は、こんな視点を示してくれました。
一発で通る資料は、
上司や上層部からの信頼につながる。
信頼されれば、 細かく管理されなくなる。
結果として、 自分の仕事の自由度が高まる。
また、 藁の家を建てて、 大きく差し戻されるのは、 本当に効率的なのか?
個人のスピードだけでなく、
組織全体の時間で考えてみる。
そんな視点も、大切です。
レンガは、本当に時間がかかるのか
「レンガの家は時間がかかる」
そう思い込んでいるだけかもしれません。
途中で相談する。 周囲に頼る。
納期を見ながら進め方を調整する。
一人で抱え込まなければ、 レンガ工法は、
決して非現実的ではありません。
それでも、上司が疲れているときもある
一方で、こんな本音もありました。
「屁理屈ばかり言ってくる若手に、正直疲れている」 これも、現場のリアルです。
毎回、丁寧に対話できるほど、 上司にも余裕があるとは限りません。
だからこそ、 「君ならスピーディーにレンガの家を建てられるよ」 と、期待を先に渡して動かす。 それは逃げではなく、
その時点で使える現実的な関わり方なのだと思います。
仕事は、話し合いだけでは進まない
さらに、こんな整理もありました。
意見が違うなら、 まずは時間を決めて話し合う。 相手の意見を否定しない。 それでも折り合いがつかなければ、 仕事を止めないために、
どちらかに決める必要がある。
そのとき、 最終的に決めるのは上司。
それは好みではなく、役割だから。
提出後は、 上層部の反応を踏まえて振り返る。
対話 → 決断 → 振り返り。 この循環を回すことが、 組織で仕事をするということなのかもしれません。
私自身の考えとして
このやり取りを見て、 私がまず感じたのは、
この二人の間には心理的安全性があるということでした。
もしそれがなければ、
部下が上司に対して、
あんなふうに意見を言えるでしょうか。
あの一言は、反抗ではありません。
考えているからこそ出てくる言葉です。
心理的安全性の、その先へ
心理的安全性があることは、素晴らしい。 ただ、それだけでは、成果は最大化されません。
さらに一歩進むためには、 お互いが自分の価値観を理解したうえで、
• 部下は、 自分とは違う視点を持つ上司のやり方を 少し取り入れてみる柔軟さを
• 上司は、 部下の適性に合った承認や指導の仕方を 持つことが必要なのではないでしょうか。
三匹のこぶた パート2の結論
藁の家か、レンガの家か。
どちらが正しいか、ではありません。
• 違いをどう捉えるか
• どう伝えるか
• どう決めるか
• そして、自分に余白はあるか
この問いを行き来できることが、
チームを前に進める力なのだと思います。
心理的安全性とは、 「何でも言えること」ではなく、 違いを持ったまま、前に進める関係。
三匹のこぶたの本当の教訓は、 「どの家を建てるか」ではなく、 どうやって一緒に建て続けるか
なのかもしれません。
みなさんの職場では、今どんな家が建てられていますか?
藁の家でしょうか。 レンガの家でしょうか。
それとも、
まだ土台を話し合っているところでしょうか。
最後に。
今回の「三匹のこぶた パート2」は、
私一人の考えだけで書いたものではありません。 このエピソードを投げかけたところ、
本当にたくさんの視点やご意見をお寄せいただきました。 現場での経験に基づくもの、 育成の視点、 率直な本音――
どれも、簡単に切り捨てられるものではなく、
私自身、何度も読み返しながら考えさせられました。 この記事では、その中から一部を 私なりの解釈で紹介・引用させていただいています。
すべてをそのまま載せきれなかったことは心苦しいのですが、 どのご意見も、この文章の土台になっています。 貴重な時間を使って考え、言葉にしてくださった皆さまに、 この場を借りて、
心より感謝申し上げます。
本当にありがとうございました
