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令和スーパー物語~誤発注のスター⭐️A子編〜第4話「鬼のいたずら!?煮干しの逆襲」

フレッシュマートはざまは、築30年以上のチェーンスーパー。
棚はガタピシ、冷蔵ケースはカラカラ鳴る。
「今日こそ壊れるかも」と、毎朝がスリル満点。
でも、毎日通ってくれる常連さんがいる私たちの店。
その裏側には、今日も静かなドタバタ劇があリます。

◾️大漁だ〜!?

「……これ、なに?」

バックルームにずらりと積まれた段ボールを前に、副店長の声が低く響く。

「に、煮干しです……」

そう答えるA子の声は、いつになく小さかった。

「20入りが……11ケース……」

副店長の目が、煮干しの海をさまよう。

「ってまた、どこをどう押したら、こんな数になるの!?」

「ええっ……指が勝手に……」

「…はい、魔法の指ね…」

「はい〜…」

そう、またしてもやってしまった。
A子——それは、魔法の指を持つ誤発注の天才。
今回の主役は、「煮干し」。

「いやー、これは無理でしょ」
パートのC子が段ボールをつつく。

「だって煮干しって、だしじゃん」
D子も鼻をつまみながら言う。

「おかずじゃないもんね、みかん缶みたいに“そのまま美味しい”ってわけじゃないし」

「だし取る以外のレシピ、出てこないわ」

「賞味期限もそんなに長くないね。」

誰もが、今回ばかりはお手上げムード。


◾️とにかく何かしなければ!

POPは作る。煮干しといえばカルシウムだから、それを推そう。
でもそれ以外に…
煮干し単体でのレシピはなかなか思いつかない。
だから前回の策は使えない…

時は節分間近。
ふと私は思い出した。

——あ、煮干しの原料はカタクチイワシ。
そしてイワシといえば、節分!
玄関にイワシの頭を飾って、鬼を追い払うという、あの日本の風習。

……なら、こうすればいいんじゃない?

「煮干しで、リース作って、玄関に飾るっていうのはどう?」

頭の中で売場のイメージが広がっていく。
ちょっとユニークで、でも季節にぴったり。
しかも飾ったあと、出汁にできるというサステナブルさまで備えてる。

私の提案に、たぶん全くイメージできていないみんなが絶句したあと、副店長がぽつりと言った。

「……趣味悪っ」

でも私は、やった。

リースに使える形の煮干しをひとつひとつ選び、
**大根を干すときのような、クローブ・ヒッチ(マスト結び)**で糸に通していった。
煮干しの小さな背中に丁寧に結び目を作る。

この結び方なら、しっかり固定できて、形もきれい。
何より**“ちゃんとした”感じがする。**

グルリと輪っかになるように結び終えたら、
そこに南天の葉と実を添えた。
ヒイラギと同じく、災厄を退けるとされる縁起物。

魚の匂いに耐えながら、黙々と煮干しと向き合う私に、
D子が笑いながら言った。

「ねぇ……なにしてんの?魚の工作?」

「いや、魔除けの儀式だわ」

完成したリースは、思った以上にインパクトがあった。と、思う。

節分コーナーにポスターと一緒に飾った。
POPにはこう書いた。

「カルシウム足りてますか?」
煮干しリースだって作れます!
飾ったあとは、お味噌汁の出汁にどうぞ♪
作り方プリントもご自由にお持ちください!

ポスター
玄関に飾ったところ
店頭 節分コーナー全体 ポスターとPOPを配置 煮干しは福豆の横に配置
リースも設置。リースの後ろに作り方のプリントも下げてある。

プリントには、煮干しリースの作り方を、写真付きで簡潔に説明。
作り終えたあとはそのまま鍋にポン、という“エコ鬼退治”スタイル。

リースの作り方
出汁をとる様子

◾️魔法が炸裂!?


そして迎えた週末。
節分前の店頭に、変化が起きた。

「ねぇなにこれ、煮干しの……リース?え、かわいくない?」
「飾ったあと出汁にできるって!最高じゃん」
「うちの玄関、今年これにしよ!」
「おばあちゃんに作ってあげようかな」
「え、インスタ載せよ……“#鬼退治リース”だって」

気づけば、あの“煮干しの山”は、
お客様の笑い声とシャッター音で賑わっていた。

バックルーム。

C子「……売れてるよ、煮干し……お客さんおもしろがってた。」
D子「まじか……リース、バカにできない……」
A子(ポケットに手を突っ込んで)「ふっ、見たか……魔法の指……」

私「よしっ!」

その日の終わり、副店長が私に言った。

「……あのリースの写真、送ってくれる?」

「えっ、“趣味悪っ”って言ってたくせに?」

「……部長に送るんだよ。あれ、ちゃんと報告しときたい」

「……えっ、あ、はい。」

そうか、たぶんこれが副店長なりの“褒め”!?

私たちはついに認められたのだ!!!

◾️あれから5年

「あの煮干し、おいしいのよ。」
「前、山盛り積んであった時に買ってから、ずっと買ってるわ」

煮干しはずっと、定番人気商品に。

魔法の指がまた動いたとき、
私はいつも、頭をひねってPOPをつくる。

だって誤発注は、チャンスだから。

ようやく私たちに春が来た・・・?

▶︎次回予告
最終話「なんでこんなに発注したの!?200本の中華あん、春に舞う」
春の兆しが見えはじめたある日、届いたのは中華あん200本!?
今度ばかりはA子の魔法も通用しない……のか?
部長からの電話が鳴り響く中、最終章、始まります。


✏️編集後記

記事内の言葉・POP・展開方法は、すべて実際の売場での出来事をもとにしています。
事実に基づいていますが、登場する人物・団体・店舗名などはすべてフィクションです。
実在のものとは一切関係ありません。

こんなスーパーの舞台裏が、どこかで誰かの参考になれば嬉しいです。
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