令和2年刑(わ)第410号事件――事件前の事業活動から、国家出力確定後の説明参照停止位置まで
2020年6月2日、私、山下量平に対する刑事判決が確定した。
東京地方裁判所刑事第6部、令和2年刑(わ)第410号。
罪名は、わいせつ電磁的記録等送信頒布である。
2020年5月18日に判決が宣告され、私は懲役2年及び罰金200万円に処され、懲役刑については裁判確定の日から3年間、その執行を猶予された。
私は第1回公判で、起訴状記載の公訴事実について「そのとおり間違いありません」と述べている。
私は、この国家出力を否認していない。
存在しなかったことにもしていない。
無罪又は冤罪という別の結論へ置き換えるために、この事件を公開するのでもない。
それでも、この事件について社会側から一つの場所で確認しようとすると、判決だけでは追えない事実が残る。
山下量平は、事件前に何をしていたのか。
刑法第175条の事件は、いつ、何を端緒として形成されたのか。
誰が対象映像を選び、誰が購入し、誰がダウンロードしたのか。
職業安定法違反という別の事件名義で取得又は確認された情報は、どこで刑法第175条の事件へ接続したのか。
誰が逮捕状を請求し、誰が発付し、誰が逮捕し、誰が勾留を決めたのか。
何が公訴事実となり、公判では何が扱われ、何が公判へ提出されなかったのか。
私は何を述べ、反省について何を問われたのか。
どのような国家出力が形成され、それが確定した後、私はその形成過程について制度内でどこまで確認できたのか。
本件では、一人の人物が一つの役割だけを持っているわけではない。
一つの資料が、一つの事件名義だけに閉じているわけでもない。
だから私は、確定した判決からすべてを逆算して事件を説明するのではなく、制度上確認できる記録と当事者として確認してきた事実に沿って、事件が形成されていった時間を前から追う。
■ 事件になる前、私は何をしていたのか
2018年、私は成人向け映像コンテンツの制作及び販売に関する事業活動を開始した。
約1年間の実稼働期間に、企画立案、映像素材の制作、編集加工、販売促進の企画、販売導線の設計及び販売活動全体の運用を行った。
本件について確認された記録には、この事業の累計売上高が3億円を超えていたことを示す記録がある。
また、2019年には、FC2コンテンツマーケットにおける全世界の販売者を対象とした販売順位で、第1位及び第2位を同時に記録した事実が確認されている。
これは、後に刑事事件となった一つの動画だけを制作していたという意味ではない。
複数の映像を制作し、販売し、その全体を事業として運用していた。
その中に、後に起訴状で「本件対象映像」とされる一つの動画が存在した。
本件対象映像に出演する女性を含む各出演女性は、完成した映像へ偶然記録された被写体ではない。
無修正の性的映像を販売対象とする制作過程において性的行為を行い、その行為が撮影・記録されることによって、販売対象となる映像の制作に現実に関与していた。
ただし、そこから各出演女性の法的位置を一括して決めることはできない。
誰が、いつ、何を行い、その時点でどのような認識と意思決定を持っていたのかは、それぞれの人物について具体的事実と記録に即して扱う必要がある。
制度上確認可能な本件記録では、本件対象映像の出演女性及び後に登場する参考人女性について、その氏名は表示されていない。
そして、私に対して最終的に公訴提起されたのは、成人向け映像の制作一般でも、出演女性との関係一般でもない。
本件対象映像1点について、電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録を頒布したという公訴事実である。
■ 刑法第175条の事件は、「山下量平」を被疑者として始まっていない
本件について現在確認されている端緒行為は、2019年10月に位置する。
特定非営利活動法人ぱっぷすを介して、参考人である女性から事情聴取が行われた。
その後、2019年12月9日付で「動画購入及びダウンロード実施結果報告書」が作成されている。
作成主体は、警視庁渋谷警察署派遣、警視庁生活安全部保安課の司法警察員巡査部長・古川裕人。
宛先は、警視庁渋谷警察署長、司法警察員警視正・田中康義である。
この文書は、最初から「山下量平に対する事件」という事件枠では始まっていない。
本文冒頭に置かれているのは、「被疑者 不詳 に対する わいせつ電磁的記録等送信頒布 被疑事件」という事件枠である。
一方、同じ報告書の中では、FC2コンテンツマーケット内の販売者アカウントについて、「本件被疑者が使用していると思料される」という主体帰属を含む記載が置かれている。
つまり、一つの文書の中に、「被疑者 不詳」という状態と、特定の販売者アカウントを「本件被疑者」が使用していると思料する状態が同時に存在する。
何を根拠として、そのアカウントが「本件被疑者」のものとされたのか。
その判断を誰が、いつ、どの資料と基準を用いて行ったのか。
報告書本文から確認できるのは、そのような主体帰属を含む文言が配置されているところまでである。
判断に用いられた具体的事実、資料、判断基準及び手続は、本文には記録されていない。
2019年10月の参考人女性への事情聴取と、12月9日に文書上確認される「被疑者 不詳」に対する刑法第175条事件との間についても同じである。
事情聴取が行われたことは確認できる。
事件枠が文書上に現れたことも確認できる。
一方、参考人女性からの事情聴取を、誰が、いつ、どの資料と基準によって、その事件枠へ接続したのかという生成過程は、動画購入及びダウンロード実施結果報告書本文には記録されていない。
端緒と事件枠は確認できる。
その二つの間にある判断生成過程は、同じ条件では確認できない。
■ 古川裕人は、捜査官であると同時に、購入・決済・ダウンロードを行った人物でもある
2019年12月6日、古川裕人は、FC2コンテンツマーケット内の「本件販売名義」のページで販売されていた動画の中から、本件対象映像を購入対象とした。
その後、ショッピングカートへの投入、決済情報の入力、決済完了、購入後ページの確認、ダウンロード、動画の再生確認までを行った。
12月9日付の動画購入及びダウンロード実施結果報告書には、その一連の操作が資料1から資料11までの添付資料とともに記録されている。
ここで、古川裕人を単に「捜査官」とだけ書けば、本件における人物関係の一部が消える。
古川は捜査主体である。
販売ページを確認した主体でもある。
本件対象映像を購入対象とした主体でもある。
決済を行った主体でもある。
ダウンロード操作を行った主体でもある。
その操作によって送信・受信が発生する工程に関与した主体でもある。
再生確認を行い、その経過を報告書にした記録作成主体でもある。
そして後に、同じ古川裕人が起訴状の公訴事実では「不特定の者」として記載される。
この複数の位置は、一つにまとめることができない。
一方、古川が捜査官として購入したという事実だけから、「だから捜査は違法だった」「だから頒布罪は成立しない」という結論へ進むこともできない。
刑法第175条1項後段の「頒布」について、本件以前の2014年11月25日、最高裁判所第三小法廷は、インターネット上の配信サイトから顧客の操作を契機として自動送信し、顧客側のパソコンへわいせつなデータファイルを記録・保存させる行為について、電気通信の送信による頒布罪の成立を認めている。
また、アメリカ合衆国内のサーバを利用した事案についても、日本国内で顧客のパソコンへ記録・保存された事実等を踏まえて刑法の国内犯規定の適用を認めている。
これは、本件以前に存在した一般的な判例上の法的枠組みである。
しかし、その一般判例が本件において具体的にどのように参照され、古川裕人を「不特定の者」とする本件公訴事実へどのように当てはめられたのかは、別の問題である。
古川が多数の販売動画の中から本件対象映像を購入対象とした理由。
捜査として購入操作を行う必要性。
他の手段を検討したかどうか。
購入実施を決めた判断主体、判断時点、判断基準及び判断根拠。
これらは、動画購入及びダウンロード実施結果報告書本文には記録されていない。
確認できるのは、誰が、何をしたのかである。
そこから先の「なぜその対象だったのか」「なぜその方法だったのか」は、同じ文書からは確認できない。
■ 職業安定法違反の家宅捜索と、刑法第175条の聴取が同じ日に存在した
2019年12月19日、私の自宅に対する家宅捜索が実施された。
その家宅捜索の事件名義は、わいせつ電磁的記録等送信頒布ではない。
職業安定法違反被疑事件である。
捜索は、警視庁渋谷警察署派遣、警視庁生活安全部保安課司法警察員・菅野豊彦以下10名によって実施され、記録で氏名を確認できる構成員には、舩生智宏、古川裕人、鈴木穣、佐藤由梨が含まれる。
私は立会人としてその場にいた。
その日のうちに、私は警視庁渋谷警察署5階生活安全課へ任意同行され、古川裕人から聴取を受けた。
ここでは、家宅捜索の事件名義と、その後の聴取で前提となった事件が同じではない。
家宅捜索は職業安定法違反被疑事件名義で行われた。
一方、同日の任意同行による聴取は、刑法第175条被疑事件を前提として進行した。
本件記録では、職業安定法違反被疑事件の趣旨、対象人物及び刑法第175条被疑事件との関係について、私に説明が行われなかった状態が確認されている。
さらに、任意同行時、古川裕人は私に対し、2020年に刑法第175条違反の容疑で逮捕する旨と、その刑法第175条事件の担当者が自分である旨を告知した。
しかし、この時点より前に古川自身が作成していた動画購入及びダウンロード実施結果報告書、その文書に存在する「被疑者 不詳」に対する刑法第175条事件という事件枠、参考人女性の存在、同女性から事情聴取が行われていたこと及びその内容について、私は説明を受けていなかった。
この把握不能状態は、任意同行時だけで終わらず、その後の逮捕、勾留を経た期間にも継続したものとして確認されている。
ここでも、説明されなかったという事実から、その理由を推測することはできない。
捜査上の理由があったのか。
説明しないという選択がどこかで行われたのか。
誰が説明範囲を決めたのか。
その判断主体、判断時点、判断基準及び判断手続は、制度上確認できる本件記録には記録されていない。
■ 別の事件名義で取得された情報が、刑法第175条事件の処理へ接続していく
2019年12月19日の家宅捜索で取得された情報機器や、その過程で確認されたアカウント情報等は、職業安定法違反被疑事件という名義だけに閉じたままではなかった。
2020年1月以降、それらは刑法第175条事件の検分、売上確認、差押、動画対比、そして逮捕状請求へ接続していく。
1月15日、警視庁渋谷警察署派遣、警視庁生活安全部保安課司法警察員警部補・花田正二は、動画検分結果報告書を作成した。
検分対象とされたのは、2019年12月6日付領置調書(甲)の押収品目録第1号物件であるDVD-R1枚、「5785」と記載されたものに記録された動画ファイル「5785c07285abcf1b.mp4」である。
報告書には、動画ファイル名を示す資料、動画の開始時及び収録時間を示す資料、わいせつに該当するとされた場面を一時停止した画面キャプチャー等が資料として添付された。
一方、そのDVD-R及び動画ファイルをなぜ検分対象として採用したのか。
何を基準として、どの場面を評価対象又は資料として選んだのか。
その具体的な採用・選定過程は、報告書本文には記録されていない。
1月22日には、司法警察員警部補・舩生智宏が「サーバ管理者及び設置場所特定報告書」を作成した。
ドメイン名やIPアドレス検索結果等を用いて管理主体をFC2 INC、FC2, Inc.と特定し、FC2コンテンツマーケット利用規約の「本サービスは、米国内の設備から管理及び提供されている」との記載を根拠として、サーバコンピュータの設置場所をアメリカ合衆国内と特定している。
結果と参照した記載は存在する。
一方、一般的な利用規約の記載を、本件対象映像が保存された個別サーバの設置場所特定へ適用する基準、適用範囲及び当てはめ手続は、本文には記録されていない。
同じ1月22日には、司法警察員巡査・佐藤由梨が、FC2コンテンツマーケット内で使用されていた「本件販売名義」と「本件販売名義②」の売上を合算し、総売上金額を確定している。
二つのアカウントの売上レポートから合算結果を算出したことは記録されている。
一方、なぜその二つのアカウントを合算対象としたのか、重複の有無をどのように扱ったのか、合算条件を誰がどのように固定したのかは、本文には記録されていない。
この事件では、結果が記録されていないのではない。
検分した。
特定した。
換算した。
合算した。
その結果は、複数の文書に残っている。
一方、その結果へ至る対象選定、条件固定、当てはめの工程は、同じ密度では残っていない。
■ 一つの差押調書に、二つの事件属性が置かれた
2020年1月30日、司法警察員巡査部長・堀ノ内宣行が、差押調書(甲)を作成し、差押えを実施した。
差押許可状を発付したのは、東京簡易裁判所裁判官・松井秀彦である。
この文書では、異なる事件名義の関係が一つの文書内に現れる。
差押調書本文冒頭では、私に対する「わいせつ電磁的記録等送信頒布被疑事件」が事件枠として記載されている。
一方、同じ文書の別紙「差し押さえるべき物」では、同じ情報機器群が「職業安定法違反被疑事件」の証拠品として列挙されている。
一つの差押調書の中に、刑法第175条系事件と職業安定法違反被疑事件という二つの事件属性が併置されている。
差押場所は、警視庁渋谷警察署5階生活安全課の証拠品保管庫だった。
堀ノ内宣行が差押主体となり、地方公務員・藤﨑洋文が立会人となった。
差押調書には、立会人の申立てとして「差押対象はこの袋に入っています」と記録されている。
一方、保管庫内の物件が、それ以前にどの処分によって保管庫へ移されたのか。
どの保管番号が与えられ、誰が管理していたのか。
袋の中の物件と別紙列挙物件が同一であることを、誰が、いつ、どの資料と方法によって照合したのか。
これらは、差押調書本文には記録されていない。
そして同じ1月30日、古川裕人は動画対比報告書を作成した。
2019年12月6日に古川自身が購入・ダウンロードした「5785c07285abcf1b.mp4」が「動画ア」とされ、差し押さえられた64GBのUSBメモリ内に保存されていた本件対象映像が「動画イ」とされた。
古川は、両動画のプロパティ、長さ、SHA-1ハッシュ値を確認し、複数の再生時点の画面を比較した上で、「両動画は同一である」と結語している。
購入時に取得された動画と、差押物件内に存在した動画が、一つの同一性判断へ接続したことは確認できる。
一方、なぜその比較点を選んだのか。
どの条件を満たせば同一と判断するのか。
誰がその確認条件を固定したのか。
その生成過程は、報告書本文からは確認できない。
■ 複数の事件名義で作られた資料が、一つの逮捕状請求へ集められた
2020年2月3日、警視庁渋谷警察署の刑事訴訟法第199条第2項による指定を受けた司法警察員、警部・横山昌樹が、私に対する逮捕状の発付を請求した。
事件名義は、わいせつ電磁的記録等送信頒布被疑事件である。
逮捕状請求書別紙1「相当な理由」には、それ以前に異なる時点と事件名義で形成されていた資料が、一つの疎明資料群として列挙された。
「被疑者 不詳」に対するわいせつ電磁的記録等送信頒布被疑事件段階で作成された動画購入及びダウンロード実施結果報告書。
職業安定法違反被疑事件段階で作成されたアカウント確認結果報告書、総売上金額確認報告書。
刑法第175条被疑事件段階で作成された動画検分結果報告書、サーバ管理者及び設置場所特定報告書、差押調書(甲)、動画対比報告書等である。
資料の存在は確認できる。
別紙1に、それらが一つの「相当な理由」を構成する疎明資料群として置かれたことも確認できる。
一方、「被疑者 不詳」段階、職業安定法違反被疑事件段階、刑法第175条被疑事件段階という異なる事件枠で形成された資料を、誰が、いつ、どの基準によって一つの疎明資料群へ再配置したのか。
資料の選別、名義差の処理、再配置の手続は、逮捕状請求書本文及び別紙には記録されていない。
同日、東京簡易裁判所裁判官・松井秀彦が通常逮捕の逮捕状を発付した。
2月4日、警視庁渋谷警察署派遣、警視庁生活安全部保安課司法警察員警部補・舩生智宏によって、私は逮捕された。
2月7日、東京地方裁判所裁判官・金子茉由は、わいせつ電磁的記録等送信頒布被疑事件について勾留状を発付し、私を警視庁渋谷警察署留置施設へ勾留することを命じた。
本件記録では、当初の勾留期間は2月14日までとされ、刑事訴訟法第60条第1項第2号に対応する罪証隠滅のおそれ及び同項第3号に対応する逃亡のおそれが記載されている。
ここで確認できるのは、本件勾留状に何が記載されたかである。
刑事訴訟法上の一般的な勾留要件を、そのまま本件で実際に行われた個別の判断生成過程へ置き換えることはしない。
刑事訴訟法は勾留及びその期間について法定の条件を定めているが、本件において具体的にどの資料をどう評価して各要件が認められたのかは、別の確認対象である。
■ 勾留期間延長の理由には、「参考人取調べ未了」と記録された
2020年2月14日、勾留期間は2月25日まで延長された。
本件記録では、その延長に係る勾留状の理由欄に、「関係人取調べ未了」「証拠解析・精査未了」「参考人取調べ未了」「被疑者取調べ未了」という各事項が記載されている。
この「参考人取調べ未了」は、単なる捜査経過の記述としてだけ存在しているわけではない。
刑事訴訟規則第151条以下は、勾留期間延長の請求に際して「やむを得ない事由」と延長を求める期間を記載し、その事由を認めるべき資料を提供すること、裁判官が請求を理由ありと認めた場合には、勾留状へ延長する期間及び理由を記載することを定めている。
したがって、本件勾留状の「参考人取調べ未了」は、勾留期間延長の裁判において、勾留状上に記載された延長理由の一つとして存在する。
ここには、時間上の関係がある。
2019年10月には、ぱっぷすを介した参考人女性への事情聴取が既に行われている。
それでも2020年2月14日の勾留期間延長時点では、「参考人取調べ未了」と記載されている。
ただし、この二つをつないで、「2019年10月に事情聴取された女性について追加取調べが未了だった」と結論づけることはできない。
同一人物への追加取調べを意味するのか。
別の参考人を意味するのか。
複数の参考人を含むのか。
制度上確認可能な本件記録だけからは確定できない。
確認できないところを、一つの説明へ変換しない。
延長後の勾留期間中には、別の捜査も行われた。
留置中の私は警察車両で「本件ホテル」付近まで同行し、車内から自分でそのホテルの所在を指示・特定した。
捜査官は、その指示に基づいて所在を確認した。
その「本件ホテル」は、本件対象映像の撮影場所である。
したがって、時間線上では、2019年10月の参考人女性への事情聴取、2020年2月14日の「参考人取調べ未了」という勾留期間延長理由、その延長後の勾留期間中に行われた被疑者本人による本件対象映像の撮影場所特定という出来事が存在する。
その順序は確認できる。
しかし、それらをどのような捜査判断によって相互に接続したのかは、時系列だけから因果として作ることはできない。
■ 職業安定法違反被疑事件は、私が起訴された事件と同じではない
ここまでの時間線には、職業安定法違反被疑事件という名義が複数回現れる。
2019年12月19日の家宅捜索。
そこで取得された情報機器やアカウント情報。
その後の売上確認。
2020年1月30日の差押調書における事件属性の併置。
そして、それらの情報が刑法第175条事件の検分、動画対比、差押、逮捕状請求へ接続している。
本件記録から確認できるのは、この名義をまたいだ処理接続が存在することである。
一方、その情報を刑法第175条事件へ接続した判断主体、判断時点、判断基準、接続手続及び名義差の整理方法は、制度上確認できる本件記録には記録されていない。
そして、私に対して実際に公訴提起された事件は、2020年2月25日付起訴状による、わいせつ電磁的記録等送信頒布被告事件である。
起訴したのは、東京地方検察庁検察官検事・三摩哲也だった。
制度上確認可能な本件記録の中に、職業安定法違反について私が別個に公訴提起された記録は確認されていない。
同時に、職業安定法違反について不起訴処分がなされたことを示す処分記録も、制度上確認可能な本件記録中には確認されていない。
だから、「職業安定法違反でも起訴された」とは書けない。
「職業安定法違反は不起訴になった」とも書けない。
記録から固定できるのは、職業安定法違反被疑事件名義による捜査及び取得・確認情報が存在し、それらの一部が後行する刑法第175条事件へ接続した一方、私に対して公訴提起され、国家出力形成の対象となったのは、わいせつ電磁的記録等送信頒布被告事件だったというところまでである。
■ 起訴状で、何が犯罪事実として構成されたのか
2020年2月25日の起訴状は、私の何が刑事裁判の対象とされたのかを具体的に固定している。
起訴状では、私は、インターネット上の動画販売サイトを利用して、不特定多数のインターネット利用者にわいせつな電磁的記録である動画ファイルを頒布しようと考えた主体として記載された。
対象は、男女の性交場面等を露骨に撮影したと記載された「本件対象映像」1点である。
2018年12月27日頃、東京都渋谷区の当時の自宅において、インターネットに接続したパーソナルコンピュータを用い、その動画ファイルをFC2, Inc.が管理するサーバコンピュータへ記録・保存させたとされている。
そして2019年12月6日、FC2コンテンツマーケットを利用して同サーバへアクセスした「不特定の者である古川裕人」に対し、警視庁渋谷警察署に設置されたパーソナルコンピュータへ動画ファイルを送信させ、同パーソナルコンピュータへ記録・保存させる方法により、電気通信の送信によってわいせつな電磁的記録を頒布したと構成された。
罪名及び罰条は、わいせつ電磁的記録等送信頒布、刑法第175条1項後段である。
ここで、起訴状が記載していることと、その公訴事実がどのように形成されたかを分ける必要がある。
起訴状は公訴事実を明示している。
しかし、被疑者不詳段階、職業安定法違反被疑事件段階、刑法第175条被疑事件段階のどの資料を採用し、どの資料を採用せず、どの評価を経てこの公訴事実を形成したのかという資料選別基準と形成過程は、起訴状本文には記録されていない。
一方、起訴状に証拠や判断過程の全体を記載しないこと自体は、刑事訴訟制度の一般的な構造から切り離して評価できない。
本件で確認する必要があるのは、その先にある公判記録、証拠等関係カード、調書判決、そして判決確定後の記録確認と制度内照会までたどったとき、本件固有の資料選別、評価及び接続の過程へどこまで到達できたかである。
■ 「不特定の者である古川裕人」という一文には、複数の役割が重なっている
起訴状だけを読むと、古川裕人は「不特定の者」として現れる。
しかし、事件の時間線を前から追うと、その一文の中には、既に複数の役割を持つ同一人物が存在している。
古川は警察官である。
2019年12月6日に販売ページを確認した。
本件対象映像を購入対象とした。
購入・決済操作を行った。
ダウンロードした。
受信側パソコンに動画が記録・保存される工程を発生させた。
再生確認を行った。
12月9日に、その一連の操作を報告書にした。
12月19日には私を任意同行で聴取し、刑法第175条被疑事件の担当者であると告知した。
2020年1月30日には、自分が購入・ダウンロードした動画と差押物件内の動画を比較し、「両動画は同一である」と結語した。
その同じ人物が、2月25日の起訴状では「不特定の者である古川裕人」として、頒布の相手方の位置に置かれた。
この人物関係から、直ちに「犯罪は成立しない」という結論を導くことはできない。
逆に、最高裁判例が顧客の操作を契機とする自動送信について頒布罪の成立を認めているからといって、本件における古川の複数の役割がどのように評価されたかまで分かったことにもならない。
本件で、捜査主体であり、購入・決済・ダウンロード主体であり、受信発生操作に関与し、刑法第175条事件担当者であり、証拠形成にも関与した古川裕人を、公訴事実において「不特定の者」として配置することについて、どの具体的事実と基準によって判断したのか。
それは、本件固有の判断生成過程の問題である。
本件の調書判決本文には、その具体的な説明は記載されていない。
一般法理が存在することと、本件固有の判断理由を確認できることは同じではない。
■ 出演女性、参考人女性、購入者は、同じ位置にいる人物ではない
本件は性的映像を扱うため、「女性」「出演者」「参考人」「被害者」「購入者」という言葉を一つにすると、事件の構造を変えてしまう。
本件対象映像の出演女性は、映像制作過程に関与した人物である。
2019年10月には、ぱっぷすを介して事情聴取された参考人女性がいる。
公訴事実上、頒布の相手方として記載された人物は古川裕人である。
これらの人物は、それぞれ別の位置にいる。
刑法第175条1項後段が処罰対象として定めるのは、わいせつな電磁的記録その他の記録を電気通信の送信により頒布する行為である。
本件起訴状も、特定の出演女性に対する加害を公訴事実として構成したのではなく、本件対象映像を「不特定の者である古川裕人」へ送信し、そのパソコンへ記録・保存させた行為を頒布として構成している。
だからといって、出演者の経験、認識、意思又は制作への関与が重要ではないという意味ではない。
それらが別の法的又は事実的問題へ関係する可能性と、本件で何が実際に公訴事実となったかは分ける必要がある。
出演したという事実だけから出演女性を共犯者として扱うこともしない。
参考人であったという事実だけから被害者と扱うこともしない。
本件記録上確認できない被害事実を追加することもしない。
何が公訴事実になったのか。
誰が制作へ関与したのか。
誰が参考人だったのか。
誰が購入・受信したのか。
その違いを保持しなければ、後に公判で問われる反省の対象についても、別の出来事を本件へ持ち込むことになる。
■ 公判で、私は起訴状記載の公訴事実を認めた
2020年4月7日、東京地方裁判所刑事第6部で第1回公判が開かれた。
出頭したのは、裁判官・室橋秀紀、裁判所書記官・高橋啓、検察官・小野翔太郎、弁護人・村上兄、被告人である私、山下量平である。
私は、起訴状記載の公訴事実について、「そのとおり間違いありません」と述べた。
この事実は動かさない。
その上で、公判記録を追う。
第1回公判調書では、証拠調べについて「証拠等関係カード記載のとおり」と記録されている。
これは、証拠調べの具体的内容が、公判調書本文そのものではなく証拠等関係カードへ接続される記録形式である。
ここから「公判調書本文に証拠内容が全部書かれていないから、裁判所は証拠を見ていない」と変換することはできない。
本件で確認する必要があるのは、具体的な資料の流れである。
逮捕状請求書別紙1の「相当な理由」には、多数の疎明資料が列挙されていた。
その中には、2019年10月のぱっぷす関係資料を含む資料群が存在した。
本件記録では、そのうち一部の資料について、公判段階で証拠調べ請求が行われず、裁判所へ提出されなかった事実が確認されている。
ここでも、公判非提出から「裁判所はその事実を一切知らなかった」と結論づけることはできない。
確認できるのは、逮捕状請求時の疎明資料群に含まれていた資料の一部が、公判証拠としては提出されなかったということ。
そして、その資料を提出対象から除外する判断主体、判断時点、判断基準、判断手続及び除外範囲の確定過程が、制度上確認できる本件記録には記録されていないことである。
■ 公判では、「反省」も問われた
第1回公判で、私は裁判官・室橋秀紀から反省について質問を受けた。
当時、私が考えていた反省は、判決までに謝罪の言葉を整え、「反省しています」と表明すれば終了するものではなかった。
自分がどのような認知を経て行動したのか。
どの判断過程に問題があったのか。
どの条件を変更すれば同じ行為の再発を防げるのか。
心理的要因と、行動へ至る構造的要因を長期的に検証する。
自分の判断過程や善悪判断の基準を問い直し、必要な変更を続ける。
反省は生涯にわたって自分と向き合う過程である。
私は公判記録上、その趣旨を述べている。
一方、室橋裁判官からは、公判期日という時間的区切りまでに、どのような反省を行ってきたのかを確認する問いがなされた。
私は、この違いを「裁判官が反省を理解しなかった」という評価へ戻したいのではない。
裁判官の善意又は悪意を推測する問題でもない。
私にとって後に残ったのは、反省を国家出力へ接続する具体的な条件だった。
何を反省の対象とするのか。
反省内容を、どの資料によって確認するのか。
どの基準で十分又は不十分と評価するのか。
誰が評価するのか。
反省を証拠評価、法益評価、量刑及び再発防止へどのように接続するのか。
原典では、本件において刑法第175条の公訴事実が特定の被害者との関係修復を犯罪成立要件として構成したものではないこと、また起訴状記載の公訴事実以外の別件犯罪事実や余罪を前提とする反省対象も確認されないことを、本件固有の条件として分離している。
だから、私は「悪いことをしたのだから反省すればよい」という一般的な道徳の説明だけでは、反省対象を具体化できなかった。
国家から人生の正解を教えてほしかったのでもない。
国家出力が何を判断対象とし、どの資料を使い、何をどのように評価したのかを確認した上で、自分の認知と行為をその現実へ接続し、再発防止のために変更するべき条件を特定しようとしていた。
■ 2020年5月18日、国家出力が形成された
2020年5月18日、第2回公判で判決が宣告された。
東京地方裁判所刑事第6部。
裁判官は室橋秀紀。
裁判所書記官は柿本真紀である。
判決は、調書判決の形式で作成された。
罪となるべき事実については、「起訴状記載の公訴事実と同一であるから、これを引用する」という形式が採られている。
主文では、私を懲役2年及び罰金200万円に処し、罰金を完納できない場合は金1万円を1日に換算した期間労役場に留置し、懲役刑について裁判確定の日から3年間その執行を猶予するとされた。
2020年6月2日、この判決は確定した。
ここが、本件における国家出力である。
国家出力が存在する。
主文を確認できる。
罪となるべき事実について、起訴状記載の公訴事実を引用したことも確認できる。
私は公訴事実を認めている。
判決確定日も確認できる。
これらは、本件を検討するときに動かさない。
一方、調書判決本文には、捜査過程で形成された複数の資料から、どの資料をどのような理由で判断材料として位置づけたのか、証拠をどのように評価したのか、法益を本件具体的事実へどのように接続したのか、公判非提出資料との関係をどのように扱ったのか、古川裕人の複数の位置をどのように評価したのか、反省をどの対象・基準・手続で量刑へ接続したのかという個別の判断生成過程は記載されていない。
一般的な刑法解釈を調べることはできる。
最高裁判例を読むこともできる。
刑事訴訟法上の制度を確認することもできる。
学説や実務上の説明を参照することもできる。
それらは一般法理を理解する上で必要である。
しかし、「この判例を室橋裁判官がこのように適用したはずだ」「この法益を検察官はこう評価したはずだ」「この理由で資料を提出しなかったはずだ」と本件記録上確認できない場所へ置けば、それは一般法理又は推測によって作った説明になる。
本件固有の判断生成事実とは別である。
私は、その二つを同じものとして扱わなかった。
■ 国家出力が確定しても、事件の時間線はそこで終わらなかった
2020年6月2日、刑事判決は確定した。
国家出力は最終的な法的効力を持った。
しかし、私にとって、反省と再発防止の検証はそこで終了しなかった。
国家出力が存在する以上、それを生成した判断対象、使用資料、評価、資料選別及び反省接続条件について、制度の内部にたどることのできる記録又は説明経路が存在すると考えていた。
そこで、判決確定後も記録を確認した。
刑事確定訴訟記録。
捜査過程に関する記録。
誰が何を作成したのか。
どの事件名義で作成されたのか。
何が逮捕状請求に用いられたのか。
何が公判へ提出されたのか。
何が提出されなかったのか。
閲覧・謄写を求めた。
制度内の機関へ照会した。
その過程で現れた状態は、一つではなかった。
資料が存在するが、提示されない。
照会を行ったが、回答を確認できない。
閲覧又は謄写が許可されない。
必要な判断生成要素が文書本文に記録されていない。
回答主体を特定できない。
制度内操作を続けても、その先の説明参照経路へ進めない。
これらを全部「分からなかった」という一語にまとめると、何が実際に起きたのかが消える。
■ 2025年、裁判所へ提出されなかった記録を確認しようとした
2025年9月12日、私は東京地方検察庁の保管検察官に対し、裁判所へ提出されなかった記録について、記録の種類を含めた把握と閲覧・謄写を申し出た。
対象には、職業安定法関係記録を含む公判不提出記録が含まれていた。
2025年9月24日、東京地方検察庁保管検察官・是木誠から回答があった。
回答は、「刑事訴訟法第47条の趣旨に基づき、貴意に応じかねます」というものだった。
この文書によって、少なくとも二つのことが固定された。
私が不提出記録の閲覧・謄写を申し出たこと。
その申出が不許可となったこと。
一方、その文書からは、不許可とした具体的理由、対象となった記録の全範囲、「刑事訴訟法第47条の趣旨」のどの部分を本件のどの事実へどのように当てはめたのかという個別の判断生成過程までは確認できなかった。
ここでも、不許可が法的に正しいか間違っているかという評価と、不許可理由を文書からどこまで参照できるかという問題は別である。
私は、後者を後者として保持した。
■ 「記録されていない」は、「行われなかった」ではない
事件前から判決確定後までを一つの時間線で追うと、同じ形が繰り返し現れる。
参考人事情聴取から事件枠が形成された。
販売者アカウントが「本件被疑者」のものと思料された。
本件対象映像が購入対象となった。
購入、決済、ダウンロード、再生確認が行われた。
動画が検分された。
サーバ管理主体と設置場所が特定された。
売上が換算され、二つの販売名義が合算された。
物件が差し押さえられた。
二つの動画が同一とされた。
異なる事件名義で形成された資料が、一つの逮捕状請求の疎明資料群へ再配置された。
逮捕状が発付された。
逮捕された。
勾留された。
起訴された。
公判が行われた。
判決が形成された。
これらの行為、文書及び結果は確認できる。
一方、その各工程について、対象選定、判断基準、採用基準、名義差処理、資料選別、評価構造、判断手続、接続手続を構成する要素が、文書本文に記録されない状態が反復している。
原典では、この記録生成仕様を生成過程不可視化として固定している。
ここで重要なのは、非記録化を不存在へ変換しないことである。
判断基準が文書本文に記録されていないからといって、誰も判断していなかったことにはならない。
資料選別理由が記録されていないからといって、選別理由そのものが存在しなかったことにもならない。
生成過程不可視化は、そのような意味の概念ではない。
国家出力を成立させるために必要な判断、選別、評価等が制度運用上作動していたにもかかわらず、それらの生成要素が制度文書本文上で参照可能な形として記録されず、その非記録化が反復する制度運用上の記録生成仕様を指す。
これは、「警察が隠した」という人物評価ではない。
「検察官が意図的に消した」という主張でもない。
「裁判官に判断理由が存在しなかった」という主張でもない。
記録に存在しない意図や目的を、私は追加しない。
■ 説明が少なかったのではなく、制度内でどこへ進めばよいかを確認できなくなった
判決後に「もっと詳しく説明してほしかった」というだけなら、本件は説明の量の問題として終わる。
私が確認した状態は、それだけではなかった。
どの資料をたどれば、本件対象映像を選定した基準へ行けるのか。
どこへ照会すれば、職業安定法違反被疑事件名義で得られた情報を刑法第175条事件へ接続した基準を確認できるのか。
どの記録から、公判へ提出する資料と提出しない資料を分けた基準を追えるのか。
何を参照すれば、本件具体的事実について証拠及び法益をどのように評価し、公訴事実を国家出力へ接続したのかを確認できるのか。
反省を量刑又は再発防止へ接続する基準は、どこに記録されているのか。
制度内で確認を反復しても、その先へ進む説明参照経路を成立させることができなかった。
原典でいう制度内説明到達不能状態は、「私には説明が理解できなかった」という意味ではない。
説明が不足していたという評価語でもない。
制度内の資料、主体及び手続をたどり、国家出力の形成過程に関する判断生成構造へ到達する説明参照経路が成立しなかったという観測事実を指す。
同様に、反省接続構造欠落は、「私の反省は正しかった」という概念ではない。
反省は公判で実際に照会された。
しかし、その反省をどの対象に、どの基準及び手続をもって量刑判断又は再発防止判断へ接続するのかという制度的構造を、制度内で確認できなかった状態を指す。
国家出力は確定している。
反省も照会されている。
その一方で、判断生成構造と反省接続構造への制度内説明参照経路が成立しない。
これらは、相互に矛盾する事実ではない。
同時に存在し得る。
■ この事件そのものが、FCなのではない
私は、この確認過程を経て、後にFC(First Case)を固定した。
ただし、FCは令和2年刑(わ)第410号事件の別名ではない。
私の人生の別名でもない。
生成過程不可視化そのものの別名でもない。
国家出力確定後、制度内照会と記録確認を反復した結果として、不提示、不応答、不許可、非記録化、判断生成構造欠落、反省接続構造欠落及び説明参照停止位置を、制度外の一般説明で補完せず、一つの欠落事実構造として固定したものがFCである。
生成過程不可視化は、国家出力の確定以前から作動していた記録生成仕様である。
それに対してFCは、国家出力確定後の制度内照会及び確認を経て固定された欠落事実構造である。
成立時点も、対象も、機能も異なる。
その欠落を、一般論、学説、経験則又は推測によって補完せず、欠落した状態のまま扱う形式を設計する工程がFMP(First Modeling Phase)である。
FMPを通じて、確認可能なもの、確認不能なもの、説明参照が停止する位置及び制度外補完が始まる位置を分離し、第三者が同一条件下で照合、検証及び再適用できる形式知として固定した基準体系がFM(First Model)である。
FMも、刑法第175条についての正解ではない。
失われた判決理由を復元するモデルでもない。
欠落したものを、欠落のまま扱うための参照体系である。
2025年11月12日、私はこれらの定義を原典として確定した。
2026年4月10日、Zenodo上でVersion 1.0を公開した。
DOIがあるから、私が正しいのではない。
国家機関が私の分析を認定したことにもならない。
DOIによって成立するのは、第三者が私の人格や説明を信じなくても、同じ版の原典へ戻り、そこで何を事実として固定し、何を固定していないのかを確認できる参照条件である。
■ この事件について、確認できることと確認できないこと
令和2年刑(わ)第410号事件について、現在確認できることは少なくない。
私は2018年から成人向け映像の制作及び販売事業を行っていた。
2019年10月、ぱっぷすを介した参考人女性への事情聴取が行われた。
12月6日、古川裕人が本件対象映像を購入対象とし、購入、決済、ダウンロード、再生確認を行った。
12月9日、その過程が「被疑者 不詳」に対するわいせつ電磁的記録等送信頒布被疑事件として報告書化された。
12月19日、職業安定法違反被疑事件名義で家宅捜索が行われ、同日には古川裕人によって刑法第175条被疑事件を前提とする任意同行聴取が行われた。
2020年1月には、動画検分、サーバ管理主体・所在地の特定、アカウント及び売上の確認、差押、動画同一性対比が行われた。
1月30日の差押調書では、刑法第175条系事件と職業安定法違反被疑事件の双方の事件属性が同一文書内に置かれた。
2月3日、異なる事件名義で形成された資料が、一つの逮捕状請求における疎明資料群へ再配置された。
2月4日、私は逮捕された。
2月7日、勾留された。
2月14日、「関係人取調べ未了」「証拠解析・精査未了」「参考人取調べ未了」「被疑者取調べ未了」を理由欄に持つ勾留期間延長が行われた。
その延長後の勾留期間中には、私自身による本件対象映像の撮影場所の現場特定が行われた。
2月25日、三摩哲也検事によって、わいせつ電磁的記録等送信頒布被告事件として起訴された。
4月7日の第1回公判で、私は起訴状記載の公訴事実を認めた。
同じ公判では、室橋秀紀裁判官から反省について質問された。
逮捕状請求段階の疎明資料群に存在した資料の一部は、公判へ提出されなかった。
5月18日、懲役2年及び罰金200万円、懲役刑3年間執行猶予の判決が宣告された。
6月2日、その判決が確定した。
判決確定後も、私は記録確認と制度内照会を続けた。
2025年9月には、裁判所へ提出されなかった記録の閲覧・謄写を申し出たが、不許可となった。
これらは、時間線上で追跡できる。
一方、同じ資料条件から確認できないものもある。
2019年10月の端緒から、「被疑者 不詳」の事件枠へ接続した具体的基準。
「本件被疑者が使用していると思料される」とされた主体帰属の判断生成過程。
複数の販売動画から本件対象映像を購入対象とした理由。
捜査官自身が購入する必要性を判断した過程。
職業安定法違反被疑事件名義で取得・確認された情報を、刑法第175条事件へ接続した基準と手続。
検分対象、わいせつ該当場面、サーバ所在地、売上合算、差押物件、動画同一性判断における各選定、当てはめ、条件固定の生成過程。
複数事件名義の資料を、逮捕状請求における一つの「相当な理由」へ再配置した基準。
起訴時に何を採用し、何を採用しなかったかという資料選別過程。
公判へ提出する資料と提出しない資料を分けた個別の判断基準。
古川裕人の複数の位置が、公訴事実形成及び国家出力形成においてどのように評価されたのか。
証拠及び法益を、本件具体的事実へどのように評価したのか。
反省を何に対して、どの基準と手続によって量刑及び再発防止へ接続したのか。
一般法理を使えば、これらの一部について合理的な説明を作ることはできる。
刑法第175条の判例もある。
刑事訴訟法と刑事訴訟規則もある。
刑事実務の一般的な説明もある。
しかし、その説明が本件で実際に採用された判断生成過程だったかどうかは別である。
私は、その境界を消さなかった。
■ 国家出力が確定したことと、その形成過程を参照できることは同じではない
この事件について、もっと短い説明をすることはできる。
山下量平は無修正の成人向け動画を販売し、警察官が購入し、逮捕・起訴され、公訴事実を認め、有罪判決を受けた。
その説明は、本件の一部を示している。
しかし、それだけでは事件全体を追えない。
その前には、成人向け映像の制作及び販売事業が存在した。
参考人女性への事情聴取があった。
「被疑者 不詳」という事件枠があった。
捜査官自身による対象選定、購入、決済、ダウンロード、受信、再生確認があった。
別の犯罪名義による家宅捜索があった。
その名義で取得・確認された情報が、後に刑法第175条事件へ接続した。
一人の人物が複数の位置に現れた。
一つの物件と一つの情報が、複数の事件名義と工程を通過した。
逮捕状請求時には、それらが一つの疎明資料群へ再配置された。
公判では、そのすべてが証拠として提出されたわけではなかった。
私は公訴事実を認めた。
反省も問われた。
そして、起訴状記載の公訴事実を引用する調書判決が形成され、確定した。
国家出力は存在する。
国家出力を否定しなくても、その形成過程について何を制度内で参照できるかを確認することはできる。
反対に、形成過程をすべて確認できないからといって、国家出力が存在しなかったことにもならない。
私は、この二つを分けた。
そして、制度内で到達できなかった場所を、判例、学説、専門家の一般説明、自分に都合のよい推測によって埋めなかった。
その結果として残ったのは、「答えがなかった」という感想ではない。
誰が何を行ったのか。
何が記録されたのか。
どの事件名義で形成されたのか。
どの資料が次の工程へ接続したのか。
何が国家出力となったのか。
制度内でどこまで参照できたのか。
どこから先の判断生成過程を、確認可能な記録として追えなくなったのか。
その境界である。
令和2年刑(わ)第410号事件は、2020年6月2日に国家出力が確定した事件である。
同時に、その国家出力が確定した後も、私が反省と再発防止のために形成過程の確認を続け、制度内の説明参照経路がどこまで延び、どこで停止するのかを確認し続けた事件でもある。
この二つのどちらかを消せば、事件全体ではなくなる。
だから私は、この事件を、判決だけからでも、私自身の経験だけからでもなく、事件前の事業活動、端緒、人物、行為、事件名義、記録、その接続、公訴事実、公判、国家出力、そして国家出力確定後の制度内確認までを、一つの時間線としてここに置く。
私を信じる必要はない。
国家出力に反対する必要もない。
刑法第175条に賛成する必要も、反対する必要もない。
まず、この事件について、何が記録され、何が記録されず、何を制度内で確認でき、どこから確認できなくなるのかを、同じ対象として参照できるようにする。
社会側から令和2年刑(わ)第410号事件を確認するとき、その出発点をここに置く。
■ 原典公開先
原典名
『国家出力確定後の説明参照不能過程の形式知化と制度科学的定義』
原典公開先
https://doi.org/10.5281/zenodo.19490699
■ 主要参照先
最高裁判所|平成25年(あ)第510号 平成26年11月25日第三小法廷決定
最高裁判所「裁判例検索」
最高裁判所|平成25年(あ)第574号 平成26年11月25日第三小法廷決定
最高裁判所「裁判例検索」
e-Gov法令検索|刑法
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045
e-Gov法令検索|刑事訴訟法
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131
最高裁判所|刑事訴訟規則
https://www.courts.go.jp/assets/keijisosyoukisoku_20260521.pdf
最高裁判所司法研修所|新プロシーディングス刑事裁判
https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/shihoukensyujyo/shinproceedingskeijisaiban.pdf
