立脚中期を支えるのは「大殿筋」じゃない?——中殿筋を主役に、ハムストリングスで“質”を決める臨床の視点
「立脚中期でしっかり支えるには、大殿筋を効かせなきゃ!」 若手セラピストの皆さん、そう思って大殿筋のアプローチばかりしていませんか?
実は、私も以前はそう勘違いしていました。 股関節を伸展させて体を支えるなら、お尻の主役である大殿筋を叩かなければ、と。
しかし、歩行分析を深め、目の前の子どもたちと向き合う中で気づいた「真実」があります。
立脚中期の主役は、大殿筋でもハムストリングスでもなく「中殿筋」である。 そして、その主役を舞台に立たせ、歩行の質を決定づけているのは「ハムストリングス」である。
今回は、理論と臨床のギャップを埋めるための「立脚中期の考え方」を整理します。
1. 理論上の主役は「中殿筋」
まず大前提として、歩行分析の基礎に立ち返りましょう。 立脚中期(Mid Stance)の最重要課題は以下の3点です。
単脚支持の成立
骨盤の側方安定
重心のスムーズな前方通過
このフェーズでは、骨盤を水平に保つ**中殿筋(股関節外転筋群)**の役割が極めて重要になります。 ここが機能しないと、トレンデレンブルグ徴候や体幹の側屈が生じ、エネルギー効率は著しく低下します。
つまり、「骨盤を落とさないための主役」は中殿筋と整理できます。 また矢状面では、ヒラメ筋が前方回転(Ankle Rocker)を制御しながら、重心の前方移動を滑らかにしています。
2. 大殿筋とハムストリングスの「真の役割」
では、伸展筋群はどのように位置づけられるのでしょうか。
■ 大殿筋(単関節筋):ブレーキの主役
大殿筋の活動ピークは、立脚初期(Loading Response)にあります。主な役割は衝撃吸収と体幹前傾の制御です。 つまり、「ブレーキとしての伸展筋」という役割が中心であり、立脚中期では活動は相対的に低下していきます。
■ ハムストリングス(二関節筋):質を決めるバランサー
ハムストリングスは立脚中期の主働筋ではありません。しかし、以下の制御的役割を担います。
膝過伸展の抑制
後方安定性の補助
矢状面での微調整
つまり、「主役ではないが、歩行の“質”を決める筋」と捉えるのが臨床的にしっくりきます。
3. CP児の臨床で起きている「抗重力伸展活動の破綻」
ここからが臨床のリアルです。 CP児(脳性麻痺児)では、クラウチング姿勢をはじめとしたアライメント異常が生じやすくなります。
股関節屈曲・内旋
膝屈曲
体幹前傾
この状況では、主役であるはずの中殿筋はレバーアームが短縮し、十分な力を発揮できません。大殿筋も伸張位となり、効率的な伸展トルクを生み出しにくくなります。
ここで重要なのは、「ハムストリングスの短縮によって支持しているわけではない」という点です。 CP児では、選択的運動コントロールの低下や筋出力低下などが複合的に存在し、「抗重力伸展活動そのもの」が十分に発揮できない状況にあります。
この不安定な状態でなんとか安定を得るために、ハムストリングスを「固める」ことで代償する戦略を脳が選んでいるのです。
4. 【有料部分】ハムストリングスを「機能的支持筋」に変える2つの臨床アイデア
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