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都会と自然とそれからケーキ。

シュシュとお団子、滑らかな生足、中世ヨーロッパのBGM、香水の香り、姿勢のいいスーツの男性、すこく整った顔の子供、新作、割引、特売。情報、情報、また情報。情報社会の全てを1つずつ見ていたら気が狂ってしまいそうだ。

東京地下鉄構内、メトロ電車が目の前で止まるとき、ホームに吹く風は強く激しく生暖かい。風には味がないと思っていたけど、なんだか都会の香りがするなと自覚した時、私は何故だか少し泣きそうになる。そんな時は目をつぶって山の奥にいる過去の記憶を思い出す。川まで枯れた山の圧倒的な無音。鼓膜を圧迫し恐怖すら覚えさせるほどの静寂の中に、時折まじる鶯谷の声。広大な緑とさわやかな揺らぎ、わたしは生命の息吹に包まれる。森や川や海にいる私は大きな世界の小さな存在だ。そうして自らの無力さを思い出し、ひとつ心を撫でおろす。

今日はご主人様が誕生日だから、いつか好きだと言っていたケーキ屋さんで誕生日ケーキを買っちゃおう大作戦!だった。なのに行く途中に調べていたら誕生日ケーキは36時間前に予約しないといけないらしい。結局小さなケーキしか買えないじゃんか。大人なんだからケーキごとき買おうと思ったら買えるんだから、ホールケーキじゃないと意味ないのにな。こんなとき、自分の容量の悪さを呪うのだ。完璧スケジューリングプレミアム人間としての人生を送れていたら、もっと活動者として人気だし、ほころも人気になるし、誕生日の主様がよろこぶだろうに。5億光年先にある一生たどり着けそうにない理想と現実のギャップにやや落ち込む。

くよくよしても時間は前を歩いてく。だから気を取り直してケーキ屋へ1歩踏み出すと、ショーケースの鏡に写ったツインテールの女と目が合った。ツインテールは勇気をくれる。だって自分のこと可愛いと思ってないとツインテールをする勇気は出ない。私はメイドさんなんだぞ、かわいいんだぞという気持ちを与えてくれる特別な魔法だから、ご主人様ウケが悪くてもやり続けてしまう。でも冷静になって20歳も超えて平世界でツインテールをしているのは痛いよな。見た目と差異のない言動が出来れば違和感は無いのだけど、私は結局内面は割と大人だから、ちゃんとした話し方しかできないだろう。そう思ったら全てが馬鹿らしくなって、耳横2つのリボンを手早く解いた。魔法が溶けるのはいつだって一瞬だ。

こんな私なんかに憧れて一緒に働きたいですと言ってくれてる子を昨日面接で落とした。2日前も落とした。noteも全部読みました、と言ってくれて、愛嬌もあって、ほころに夢を見てくれていた良い子だったのに私は酷い。でも心を鬼にしないといけない、絶対良い場所にするには決意の力が必要なのだ。

採用とか、特典とか、そういう決意や決断に日々の力を使いすぎている。だからそこら辺に溢れるノイズまで受け止める余裕が無いのかもしれない。最近の情報の多さとそれを処理できない自分にどうも辟易してしまう。

重い足取りでやっとたどり着いたケーキ屋さんの扉を開けると、想定外のことが起きた。大きいケーキがあったのだ。一つだけ。無いと書いてあったのに。おそるおそる、「こちらっていただけますか」と聴くと、「はい」とのことで、すっごく嬉しい気持ちになった。ホールケーキが買えるらしい。私はとっても喜んだ。さっきまでの鬱々とした気持ちはどこかに飛んでいって、調子に乗ってメレンゲクッキーまで買ってしまった。魔法は溶けるのも一瞬だけど、かかるのもまた一瞬のことだ。


さくり、舌に甘すぎない優しいあまさが広がっていく。とってもおいしい。ざくり、ふわり、あまり、とろり、心がちょっぴりほころんだ。

しあわせの魔法はいつだってそばにある。日々の中にあるいいことを見つけて拾って生きていきたい。


全国各地で会える、旅するメイド屋さんを目指しています。秋葉原にて毎週水日、メイドバーほころを運営中。月1愛知。たまに大阪あんどもあ。ぜひ会いに来てください!自己紹介は固定の目次かXから

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メレンゲを食べるぼさぼさの私

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