ひとつの熱帯夜、六つの文芸│シロクマ文芸部
「熱帯夜」から始まる文芸。
短歌
熱帯夜
涼しコンビニ 人ひしめき
おしくらまんじゅう
冬の如しも
俳句
熱帯夜
ベランダ出ても
同じ宵
狂歌
熱帯夜
打ち水したら
仇となり
湿気の海で
泳ぐ羽目とは
川柳
熱帯夜
エアコン修理
汗だくに
都々逸
熱帯夜かな
汗ばむうなじ
誘われ滑り
角ゴツン
自由詩
熱帯夜、窓を開ける。
壁の向こうから、
知らない声がこぼれてきた。
電話の向こうは、たぶん実家。
子どものような泣き言と、
懐かしい方言。
一人には慣れたつもりでいたけど、
まだ、泣くほど誰かを恋しがれる人がいるんだな。
しばらくして、静かになった声のかわりに、
知らない曲が流れてきた。
知らないのに、なぜか好きな旋律。
風が吹いたから、
涼みにベランダへ出たら、
同じタイミングで、
隣の扉も開いた。
気まずさを一秒だけ挟んで、
「その曲、いいですね」
とだけ、言った。
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