節税・補助金・融資は目的ではない|判断基準は「最終的に会社にいくら残るか」
こんにちは。中小企業診断士の篠原啓祐(しのはらけいすけ)です。福岡県を拠点に、全国の起業家や経営者への経営面のコンサルティングやサポートを行っています。
経営分析シリーズの最終回です。
今回は、経営者の方からご相談の多い節税・補助金・融資について書きます。セミナーでもご要望をいただいたテーマでした。
最初に、いちばん伝えたいことを書きます。
この3つは、全部「手段」です。目的ではありません。
順番が逆になっていませんか
本来の順番は、こうです。
経営課題・目標があって
そのために必要な投資・行動が決まって
その資金の手当てを考えて
実行する
補助金も融資も節税も、③に出てくるものです。①や②の代わりにはなりません。
ところが実際には、③から始まってしまうことがあります。「補助金の公募が出たから、何かに使えないか」「融資が下りそうだから、何か買おうか」。
順番が逆になると、必要でないものを買うことになります。
補助金:「もらえるからやる」ではない
補助金の判断基準は、これだけです。
必要な投資に使えるかどうか。
補助金があるから設備を買うのではありません。必要な設備投資がある。それを実現する方法のひとつが補助金です。
実務的な注意点も挙げておきます。
補助金は基本的に後払いです。まず自社で全額を支払い、実績報告の後に入金されます。つまり、一時的に資金が出ていきます
補助率が3分の2でも、3分の1は自己負担です。300万円の設備なら100万円は自社のお金です
申請から入金まで、1年近くかかることも珍しくありません
「もらえるお金」という感覚で動くと、この資金繰りのズレで苦しくなります。前回までに作った収支の見通しと必ずセットで考えてください。
融資:借りられるから借りる、ではない
融資の判断基準はこうです。
返済後も資金繰りが回るか。
私は日本政策金融公庫で約20年、融資を担当してきました。その立場から申し上げると、審査で見ているのは「貸したお金が返ってくるか」です。厳しい話に聞こえるかもしれませんが、逆に言えば、返せる計画であることを説明できれば強いということでもあります。
そして、それは借りる側にとっても同じ基準です。
借入は、返済という固定的な支出を将来に作ります。前回まででやってきた「必要な利益から逆算する」計算に、その返済額が乗ります。
だから融資は、収支計画とセットで考えるものです。いくら借りるかではなく、返済が乗った状態で会社が回るか。ここを先に確かめてください。
節税:税金を減らしても、現金が減っては意味がない
いちばん誤解が多いのが節税です。
「税金を払いたくないから、何か買おう」
決算期末によく聞く話です。しかし、ここには落とし穴があります。
仮に法人税等の実効税率をおよそ3割としましょう。100万円のものを買って経費にすると、税金は約30万円減ります。
でも、手元の現金は100万円出ていきます。
税金は30万円減った。現金は100万円減った。差し引き70万円、会社のお金は少なくなっています。
その100万円が、本当に必要なものだったなら問題ありません。必要な投資を、たまたま今期に前倒ししたというだけです。
問題は、必要でないものを税金のために買った場合です。この場合、節税は資金繰りを悪化させます。
さらに、現預金が減れば前々回に書いた流動比率も下がります。金融機関から見た会社の姿も変わります。
判断基準はひとつ
3つとも、突き詰めると同じところに行き着きます。
最終的に、会社にお金がいくら残るか。
補助金をもらった結果、残るのか。融資を受けて返済した後、残るのか。節税をした結果、残るのか。
この基準さえ持っていれば、判断を大きく間違えることはないと思います。
シリーズのまとめ
全7回、ありがとうございました。最後に、この流れを振り返ります。
決算書で現在地を知る(1〜2本目)
数字が変化した理由から課題を見つける(3〜4本目)
必要利益から未来を逆算する(5本目)
動かす数字と行動を決める(6本目)
財務分析の目的は、決算書に詳しくなることではありません。
経営の次の一手を決めること。
これに尽きます。
明日から、何をしますか?
最後にひとつだけ、書いてみてください。
明日から何をしますか。
大きなことでなくて構いません。
主力商品の価格を確認する
原価をもう一度調べてみる
月末の預金残高を見る
資金繰り表を作ってみる
2期分の決算書を並べてみる
そのひとつが、数字を経営に活かす第一歩になります。
数字は、経営者を追い詰めるためのものではありません。次の一手を選ぶための道具です。この7本が、その入口になれば嬉しく思います。
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