これはもう縁があったとしか思えない
ツイッターが、まだ今ほど使いにくく改悪されていなかったころ。
私の日課は、タイムラインをゆるゆると徘徊し、流れてくる面白ポストを眺めることだった。
そんなある日のこと。一風変わった、そして、妙に強烈な引力を持つツイートが紛れ込んできた。
「なんだか男同士の距離が近いな……?」とは思っていたけど、悪役令嬢ものとしての作品の出来が良すぎたためそちらが主題だと思っており、私の乱視が悪さをして距離が近く見えているんだろうと考えていたら、挿入し始めたため、流石に乱視のせいではなくなった
私はこのツイートの元ネタとなった作品がどうしても気になった。
というのも、どうやらそれなりに多くの人が読んでいる作品らしいのだ。ツイートした本人も、フォロワーさんに勧められて読んだとのこと。
「そんなに面白い作品なのか?」
「いったい何という作品なんだ?」
私は思いつく限りのキーワードで検索をかけた。
しかし、何をどう探しても、お目当てのものに辿り着くことはできない。
当たり前だ、情報が少なすぎる。
タイトルも分からない。作者も分からない。分かっているのは、ツイートとそのリプライに書かれていた断片的な内容だけ。
これでは、いくら検索したところで見つかるはずもない。
「まあ、こういうのは縁だ。本当に縁があれば、いつかどこかで巡り会えるだろう」
そのときはそう自分を納得させ、そっとスマホの画面を閉じた。
ところで、話は変わるがpixivコミックをご存知だろうか。
私はたまに、そこで「0円漫画」を漁っていた。
一定期間ごとに無料で読める作品が入れ替わるシステムは、新しい物語との出会いを求める人間にとって、まさに宝の山であり、最高の暇つぶしスポットだ。
その日も、特に目的があったわけではない。
「今日は更新されているかな?」
「されてたら、どんなのが増えてるだろう」
そんな軽い気持ちで、いつものようにページを開いた。
新しく追加された作品を確認して、何となーくスクロールして、そして、たまたまその本に目を留めた。
『毒を喰らわば皿まで』
何とも心惹かれるタイトルだ。
絵柄もいい。
私は、即購入した。……と言っても0円だが。
で、結果。
「なんだこれ、おもろいやん」
ページをめくったが最後、私はすっかりその世界観に捕らわれていた。
何が良いって、全部が主人公の手のひらの上なのだ。
はらはらするような展開は皆無で、主人公の思惑どおりにするすると物事が進んでいく。読んでいて、ほとんどストレスがない。
「はいはい、そうなるよねー」
「そうそう、いいぞもっとやれ」
私はすっかりこの爽快な逆襲劇の虜になっていた。
しかし、ここで大きな壁にぶつかる。
試し読みとして公開されていたのは、一巻分のみだったのだ。
この先の展開はどうなるのか。
一体、どういう結末を迎えるのか。
居ても立ってもいられなくなった私は、スマホの検索窓を叩き、この先の物語を調べるべく奔走し始めた。
そして。
あのツイートが引っ掛かったのである。
「お前かぁあああああ!!?」
思わず、そう叫んだ。
同時に、いや、もうこれ運命だよね?とも思った。
まさか、あのとき散々探しても見つけられなかった作品と、こんなところで巡り会うとは。
これはもう、縁があったと言いきってしまって良いだろう。
……とはいえ。
ハピエン至上主義の私は、ここで一度冷静になった。
勢いだけで購入して、もし自分の許容範囲外のシチュエーションが出現したら困る。
私はアルファポリスにユーザー登録して、待てば無料の機能をフル活用し、ちゃんと最後まで結末を確認した。
そして、「まあ、これならいいか」と、購入を決意したのだった。
そんなこんなで買った『毒皿』だが。
うん。
買って良かった。
私は小説は一巻のみ、漫画は当時発売されている分すべてを購入したのだが、原作小説には漫画では拾いきれていないシーンや、文字で読んだ方が分かりやすい伏線があった。
漫画で読んで「ここ好き!」となった場面を、原作小説でさらに深掘りできる。
その違いも含めて、最高に楽しい読書体験になった。
現在、原作小説は5巻まで刊行されており、どうやら「1st. Life」は完結しているらしい。
……1st. Life?
ファーストライフ?つまり、セカンドライフもあるってこと?
あるんですよね?あるってことだよね……!?
私はそう信じている。
いや、だって「1st. Life 完結」って書いてあるんだから。1があるなら2もあるだろ。
これはもう、期待していいやつでしょう。
私は今日も続きを待っている。
