その仕事、受けないほうが儲かります。ひとり社長が仕事を断るべき5つの基準
「仕事が来たら、とりあえず受ける」
独立したばかりの頃なら、それは間違っていないと思います。
実績を作りたい。
売上を増やしたい。
取引先を増やしたい。
紹介を断りたくない。
だから、多少条件が悪くても、
「まあ、今回だけは……」
と引き受けてしまう。
ところが、月商100万円、200万円と売上が増えてくると、少しずつ状況が変わってきます。
仕事を受ければ受けるほど忙しくなる。
メールや打ち合わせが増える。
修正依頼が増える。
細かい作業に時間を取られる。
請求や入金管理にも時間がかかる。
そして月末。
「これだけ働いたのに、なぜかお金が残っていない」
そんな状態になっていませんか?
ひとり社長やフリーランスにとって、実は「仕事を取る力」と同じくらい重要なのが、仕事を選ぶ力です。
売上を増やすことだけを考えていると、忙しいのに儲からない仕事を抱え込んでしまいます。
そこで今回は、
「その仕事、本当に受けるべき?」
を判断するための5つの基準を紹介します。
1.「売上」ではなく「時給」で考える
まず、一番わかりやすい基準です。
その仕事はいったい、1時間あたりいくら稼げるのか?
これを計算してみてください。
例えば、10万円の仕事があったとします。
「10万円なら、悪くない」
と思うかもしれません。
しかし、その仕事に、
・打ち合わせ3時間
・メールや電話5時間
・実作業15時間
・修正対応8時間
・請求などの事務2時間
合計33時間かかっていたらどうでしょう。
10万円 ÷ 33時間 = 約3,030円。
売上は10万円でも、時間あたりの売上は約3,000円です。
もちろん、ここから経費や税金なども考える必要があります。
つまり、本当に見るべきなのは、
「いくら売れたか」ではなく「どれだけの時間とコストを使って、その売上を作ったか」
です。
特にひとり社長の場合、最大の経営資源は「自分の時間」です。
会社員のように、忙しくなったからといって簡単に人員を増やせるわけではありません。
だからこそ、
低単価 × 長時間
の仕事を抱えると、あっという間に時間が埋まります。
逆に、
高単価 × 短時間
の仕事が増えれば、売上が同じでも利益は大きく変わります。
一度、最近受けた仕事を3〜5件ほど並べて、
「売上 ÷ 実際に使った時間」
を計算してみてください。
意外な結果になるかもしれません。
2.やり取りが多すぎる仕事は要注意
ひとり社長が見落としやすいのが、
「見えない時間」
です。
仕事そのものは3時間で終わる。
でも、
「この件について確認です」
「やっぱりこちらに変更してください」
「念のため、もう一度お願いします」
「社内で確認しますので少々お待ちください」
……と、メールやチャットが延々と続く。
こういう仕事は珍しくありません。
問題なのは、その時間の多くが請求できない時間だということです。
例えば、
「5万円で受注した3時間の仕事」
でも、実際には、
・メール1時間
・オンライン打ち合わせ2時間
・修正2時間
・確認・資料整理1時間
と追加で6時間かかっていたら、合計9時間。
5万円 ÷ 9時間 = 約5,555円です。
さらに、
「電話に出るために他の仕事を止める」
「急な修正に対応するため予定を空けておく」
といった待機時間まで考えると、実質的な効率はもっと下がります。
だから、仕事を見るときは、
作業時間だけではなく、「その仕事に振り回されている時間」まで含めて考える。
これが重要です。
3.将来につながらない仕事を見極める
ここからは、単純な時給だけでは判断できません。
例えば、今は単価が低くても、
「この実績があれば、大きな案件につながる」
「この会社との取引が、新しい顧客を紹介してくれる」
「この仕事を経験することで、新しいサービスを作れる」
という仕事なら、受ける意味があります。
つまり、
今の利益だけではなく、未来の利益も考える。
ということです。
反対に、
「毎回同じ作業」
「単価は上がらない」
「紹介も発生しない」
「実績としても使えない」
「スキルも身につかない」
という仕事なら、少し注意が必要です。
その仕事を続けることで、
「忙しい状態」が固定化されてしまう
からです。
例えば、毎月20万円の売上を作ってくれる仕事があったとします。
一見するとありがたい仕事です。
しかし、その仕事に毎月50時間かかっているとしたらどうでしょう。
その50時間を使って、
・新規営業をする
・既存顧客への提案をする
・商品やサービスを改善する
・単価の高い仕事を作る
・新しいスキルを身につける
こともできます。
つまり、安定した20万円の裏側で、
「もっと大きな20万円、30万円を作るチャンス」
を失っている可能性があります。
これが「機会損失」です。
4.「断れないから受ける」をやめる
仕事を断れない理由として、一番多いのがこれかもしれません。
「せっかく声をかけてもらったから」
「今後の付き合いもあるから」
「断ったら悪いから」
「仕事がなくなるのが怖いから」
もちろん、人間関係は大切です。
ただし、
「相手に悪いから」という理由だけで、自分の時間を差し出し続ける必要はありません。
むしろ、本当に長く付き合いたい相手なら、
「何でもやります」ではなく、
「この条件なら、こういう成果を出せます」
と伝えられる関係のほうが健全です。
仕事を断ることと、相手を拒絶することは違います。
例えば、
「今回はスケジュールの都合で難しいのですが、○月以降でしたら対応可能です」
「現在の体制ではご希望の条件でお受けするのが難しいため、今回は見送らせてください」
「この内容ですと、○○円であれば責任を持って対応できます」
という伝え方もあります。
大切なのは、
「受ける・断る」の二択ではなく、「条件を変える」という選択肢を持つこと。
です。
単価を上げる。
納期を延ばす。
修正回数を決める。
業務範囲を明確にする。
打ち合わせ回数を減らす。
こうした工夫だけでも、仕事の採算は大きく変わります。
5.その仕事を受けることで、何を失うのか
最後に、ぜひ考えてほしい基準があります。
それは、
「この仕事を受けることで、何を失うのか?」
仕事を受けると、売上が増えます。
でも同時に、時間が減ります。
そして、ひとり社長の場合、その時間はほかの仕事には使えません。
例えば、
「明日までに10万円の仕事を受ける」
とします。
10万円が入る。
これはプラスです。
しかし、その仕事に丸2日かかることで、
「20万円の案件を提案する時間」
「既存顧客への営業」
「新しいサービスを作る時間」
「家族との時間」
「休む時間」
などを失うかもしれません。
つまり、
仕事の価値 = その仕事から得られる売上
ではありません。
本当は、
その仕事から得られる利益 − 失う時間・機会・余力
まで考える必要があります。
特に、すでに仕事がいっぱいになっている人ほど、この考え方は重要です。
暇なときは、
「とにかく仕事を取る」でいい。
でも、仕事が埋まってきたら、
「どの仕事を残すか」
を考えなければいけません。
これは、事業が次のステージに進むための大きな分岐点です。
仕事を断ることは、売上を捨てることではない
ここまで読んで、
「でも、仕事を断ったら売上が減るじゃないか」
と思った方もいるかもしれません。
その通りです。
短期的には、売上が減る可能性があります。
だから、何でもかんでも断ればいいわけではありません。
重要なのは、
「売上を減らす」のではなく、「利益の低い仕事から、利益の高い仕事へ時間を移す」
という発想です。
例えば、月100万円を売り上げている人が、100万円 → 120万円を目指すとします。
単純に20万円分の仕事を追加すると、当然忙しくなります。
一方で、「月100万円の中にある、利益の低い20万円をやめる」という方法もあります。そして空いた時間で、
より単価の高い仕事を作る。
既存顧客への提案を増やす。
新規営業をする。
サービスを改善する。
業務を効率化する。
こうして、
「忙しさを増やさず、利益を増やす」
方向へ舵を切る。
これが、ひとり社長にとって非常に重要な考え方です。
では、どんな仕事を断るべきなのか?
最後に、今回の内容を5つのチェックポイントにまとめます。
仕事の依頼が来たら、次の質問をしてみてください。
CHECK 1
その仕事は、時間あたりで十分な利益が出るか?
CHECK 2
メール・打ち合わせ・修正などの「見えない時間」は多くないか?
CHECK 3
その仕事は、将来の売上や実績、スキルにつながるか?
CHECK 4
「断れないから」という理由だけで受けようとしていないか?
CHECK 5
その仕事を受けることで、本当にやるべき仕事の時間を失わないか?
5つのうち、複数に「NO」がつくなら、一度立ち止まってみてもいいでしょう。
「今回は受けない」
「条件を変更する」
「単価を上げる」
「業務範囲を絞る」
という選択肢があります。
まとめ
ひとり社長やフリーランスにとって、
「仕事を取る」ことはゴールではありません。
売上を作る。
利益を残す。
そして、その利益を生み出す時間を確保する。
ここまでできて、初めて「儲かっている」と言えるのではないでしょうか。
仕事が少ない時期なら、多少条件が悪くても受ける。
仕事が増えてきたら、選ぶ。
さらに仕事が増えたら、断る。
この「選別」ができるようになると、経営の景色はかなり変わります。そして、忘れてはいけないのが、
「売上を増やす」だけが、手残りを増やす方法ではない。
ということ。
同じ100万円を売り上げても、100時間で作る人と、200時間で作る人では、事業の余裕がまったく違います。だからこそ、
「その仕事はいくらになる?」
だけではなく、
「その仕事は、自分の時間をどれだけ使う?」
と考えてみてください。
もしかすると、あなたが今必要なのは、「もっと仕事を探すこと」ではなく、
「受けない仕事を決めること」
なのかもしれません。
最後に
仕事を断るのは、少し怖いものです。特に、これまで「仕事があるだけありがたい」と思って頑張ってきた人ほど、難しいと思います。
でも、ひとりで事業を続けていくなら、
「何でも受ける人」から「仕事を選べる人」へ。
少しずつ変わっていくことも、大切な経営判断です。
「もっと稼ぐ」だけではなく、「稼いだお金を、ちゃんと残す」。
そのためには、自分の時間の使い方から見直してみる。
今日からできる「手残り最大化」の第一歩です。
