「来なきゃよかった」と思った瞬間、ゼロじゃない。
正直に書く。
「来なきゃよかった」と思った瞬間は、ゼロじゃない。
移住1年目。仕事が見つからなかった。
大阪では化学薬品メーカーで働いていた。研究職から管理部門に異動したとはいえ、専門性のある仕事だった。
でも、屋久島にはそんな仕事がない。
当たり前だ。わかっていた。でも、現実として直面すると、焦った。
求人情報を見ても、自分に合うものがない。貯金が減っていく。前職の収入ベースで住民税が来る。
「これ、やばいかも」
そう思った夜が、何度かあった。
妻は何も言わなかった。でも、不安だったと思う。子ども2人を抱えて、仕事がない夫と、知らない島で暮らしている。
僕も不安だった。眠れない夜が続いた。
妻に「戻ろうか」と言おうとしたこともある。
でも、言えなかった。言ったら、本当に終わる気がした。ここで諦めたら、一生後悔する気がした。
だから、言わなかった。
でも、「来なきゃよかった」と思った瞬間は、確かにあった。
貯金が減っていく通帳を見ながら、「神戸にいれば、こんな思いはしなかった」と思った。
仕事が見つからない焦りの中で、「安定を捨てたのは間違いだったのかも」と思った。
夜、眠れないまま天井を見つめながら、「やっぱり来なきゃよかった」と思った。
嘘をついてもしょうがない。そういう瞬間は、あった。
でも、そこで終わりじゃなかった。
縁があって保育の世界に入った。前の園長先生が東京に戻ることになり、園長を引き継いだ。今は、毎日子どもたちに囲まれて働いている。
振り返れば、あの苦しかった1年目があったから、今がある。
あのとき諦めて神戸に戻っていたら、今の自分はいない。園長として働いていない。子どもたちと毎日過ごしていない。
でも、当時はそんなこと思えなかった。ただ、必死だった。
移住を考えている人に、伝えたい。
「来なきゃよかった」と思う瞬間は、たぶんある。
仕事が見つからないかもしれない。お金が減るかもしれない。不安で眠れないかもしれない。
でも、それで終わりじゃない。
その先に、何があるかは、行ってみないとわからない。
「来なきゃよかった」と思う瞬間があっても、その先で「来てよかった」と思える瞬間が来るかもしれない。
僕は、今、「来てよかった」と思っている。
あの1年目のキツさがあったから、今がある。
