ドイツサッカー少年記 ギムナジウム5年【その15】「1.Mai Turnier」
7)ギムナジウム5年 U12【その15】「1.Mai Turnier」
この日は、毎年Celle郊外の町で大規模なTurnierが開催されます。U6からU14までの試合が行われ、小さな村の一角が毎年多くの人で大変賑わいます。もちろん毎年参加するわけではありませんが、今年はU12の我がチームも参加資格を得て出場することができました。
そして、この大会の日は毎年とにかく素晴らしい天気に恵まれます。4月までは急に暑くなったり、逆に氷点下近くまで冷え込んだり、雨が降ったりと、本当に体に負担のかかる天候が続きます。しかし、5月1日になると突然初夏がやってきたかのような陽気になります。今年も20度を超え、ドイツ北部ではまさに夏のような一日でした。朝からみんなせっせと日焼け止めを塗っていました。
そして、このTurnierを境に、夏休みまで続くTurnierシーズンが始まったような感覚になります。リーグ戦とはまた違うカップ戦には、独特の緊張感と、それ以上にお祭りのような楽しさがあります。これまでも書いてきたように、どのTurnierでも様々な景品が当たる「くじ引き」は大いに盛り上がり、また、屋台もたくさん出店されます。(これらはすべて開催クラブが準備しています。)会場全体が一日中まるでお祭りのような雰囲気になります。
試合時間もU12では1試合12分程度なのでテンポがよく、予選グループステージから決勝トーナメントに進むにつれて、観客の盛り上がりもどんどん大きくなっていきます。
そんな最高の天候と会場に恵まれ、2025年夏休み明けの新シーズンから新しいチーム編成となって以来、初めての屋外Turnierとなりました。
大会は2つのグループに分かれて予選リーグを行い、各グループ1位同士が決勝戦を戦う形式です。我がチームは予選リーグで順調に勝ち点を重ね、グループ1位で決勝進出を決めました。そして決勝の相手は、ダービー戦のライバルチーム。予想通りの対戦カードとなりました。
しかし決勝戦は、結局0対0のままPK戦へ。12分間の試合の中で何度もシュートチャンスはありましたが、なかなか決め切ることができませんでした。一方、相手チームは一度もシュートを打てていません。それだけに、PK戦に持ち込まれてしまったこと、決め切れなかったことが本当に悔しく感じられました。
そしてPK戦。我がチームの1人目が見事に決め、歓声が上がりました。その1人目は、なんと次男でした。
2年前、蹴りたくなくても指名されて蹴った3位決定戦のPKを外して以来、彼はずっとPKを避け続けてきました。そんな次男が、決勝戦の1本目を自ら蹴って決めたのです。
私はまさか彼が蹴るとは思っておらず、その瞬間を見逃していました。というより、「決めたこと」以上に、「自分から蹴ったこと」に驚きを隠せませんでした。2年前の経験以来、彼はPKを本当に嫌がっていましたし、そもそもそんなに力強いシュートを打つタイプでもないので、蹴るだけでなく、決めるとも思っていなかったのです。とにかく私が一番驚いていました。
しかし、その後の2本目の選手はGKに止められ、3本目の選手は決めたものの、相手チームが3本すべて成功させたため、結果は準優勝となりました。
その後すぐに行われた表彰式では、久しぶりにメダルを受け取りました。銀メダルではありましたが、今シーズン前半はいろいろな問題もあったチームだっただけに、本当によく頑張ったと思います。
しかし、この日の最大の収穫は、何よりも彼が「有言実行」をやってのけたことでした。
実はこの4月から、毎回のトレーニングや試合の前に「今日意識すること」を自分で考えさせるようにしていました。トレーニングは私は見ていませんが、試合では私が気づいたことも含めて話し合いながら、まず本人にその日のテーマを考えさせ、それを実際に意識できたか、できなかったかをノートに書くようにしていたのです。
この日も、Turnierへ向かう車の中で、いつものように
「今日意識することは?」と聞きました。
すると彼は、
「もし今日の決勝でPKになったら、僕が蹴る。」
と答えました。
「決勝まで行けるかな?」「PK戦になるかな?」とは思いましたが、正直、彼が本当に蹴るとは思っていませんでしたし、コーチも任せないだろうと思っていたので、「そうだね、もしそうなったら頑張って」と軽く返していました。
そんな朝のやり取りを、私はすっかり忘れていました。
夜、夕飯を作りながら「今日意識したことは?」と聞くと、
彼は、
「朝もう言ったじゃん。もし決勝でPKになったら僕が蹴るって。」
と言いました。
その瞬間、
「そうだった!」と思い出し、本当にそれを実行した彼を、私は心から褒めずにはいられませんでした。
もちろん、PKを決めたことも素晴らしいです。でも、それ以上に、自分で言ったことを逃げずにやり遂げたこと。その挑戦こそが本当にすごいと思いました。
これまでの彼の性格やプレースタイルからは想像もできない行動でした。この4月に入ってから、人が変わったようにプレーも変わり始めていましたが、ここまで自分の思いを行動に移せるようになるとは、正直驚きでした。私自身がどちらかというと守りに入ってしまうタイプなので、なおさら簡単にできることではないとわかっているからです。
これまで書いてきたように、彼はFWやMFとして毎回得点を決めてきた選手ではありません。守備の選手です。しかし、誰よりも信頼される守備選手で、本当にミスの少ない選手でした。その一方で、リスクを冒してまで自ら点を取りに行くようなプレーは、公式戦やカップ戦では避け続けてきました。
けれど、この1か月、私が
「失敗したっていいんだよ。誰もわざと失敗するわけではないのだから。そして、他のFWの選手よりうまくやろうとしなくていい。もっと自分のやりたいサッカーをしてみたら? 守りに入らなくてもいいんだよ。失点したっていいじゃない、まだU12なんだから。もっとエゴイストになって挑戦してみなよ。」
と言い続けてきたことで、本当に彼は少しずつ変わり始めました。
そして今では、リーグ戦でもカップ戦でも思い切ったプレーが増え、利き足ではない左足でのシュートを決めたり、難しいボレーシュートを決めたりと、まるで別人のような選手になっています。
これまでの彼は、「自分の失敗は失点につながる」という意識がとても強く、守備では常に安定したプレーをしていました。しかしその反面、攻撃参加やリスクを伴うチャレンジは減っていっていたのです。
それが今では、FWとしてもMFとしても、そして守備としても、挑戦することを恐れずにプレーしているのがよくわかります。
私自身、チームとして勝つことももちろん嬉しいですが、それ以上に、彼がこんなにも生き生きと楽しそうにサッカーをしていることが本当に嬉しくてたまりません。
挑戦していた強豪クラブへの移籍がうまくいかなかったことは、彼にとってとても悔しい経験だったと思います。でも、その経験があったからこそ、今回のような大きな成長につながったのかもしれません。結果的には、本当に意味のある出来事だったのだと思わされました。
