#11 ワイングラスのはずがオデン串。 ソスンラギル、800mの石垣道の誘惑と 敗北。
歴代の王と王妃の位牌が祀られている、世界遺産「宗廟(チョンミョ)」。 その西側の石垣に沿って伸びる、約800メートルの静かな小道がある。
その名は「西巡邏街(ソスンラギル)」。 「巡邏(スンラ)」とは、夜間に盗賊や火災を防ぐために見回る「巡回」のこと。かつては、兵士たちが王の魂を守るためにこの石垣の横を行き来していたという。

そんな歴史ある通りが今、ソウルで最もアツいスポットになっている。 延々と続くクリーム色の石垣、春の新緑、秋の紅葉。その美しさは文句なしだ。 だが、現在の「巡回」は、昔ほど過酷ではないが、精神的に少々厳しいものがある。
石垣の向かいには、リノベされたお洒落なオープンカフェやワインバーが並ぶ。 そこでは、センスの良い若者たちが、石垣を借景に昼からワイングラスを傾けているのだ。 「優雅かよ!」 心の中でツッコミながら歩く。
特に人気のタコスショップなどは、数時間待ちは当たり前。 「並ぶ? 」
いや、私は旅人改めいっときの巡回兵。立ち止まりなどしてはいけないのだ
結局、人気の店はどこも満員。 新進ジュエリーアーティストのポップアップショップを冷やかし、雰囲気だけ味わって、私はまた元来た道を戻る。
そう、ソスンラギルは私にとって、石垣と、楽しそうな人々を眺めるだけのランウェイなのだ。



一時のカロスキルでも、イクソンドンでもそして現在のソンスでも・・・。ソウル人気スポットあるある現象。
人気がありすぎて入れない・・・。
何時間も1人で並ぶ根性と忍耐力をハナから持ち合わせていない私は、
社会科見学ののち退散・・・といった具合になるのが常である。
巡回兵の休息。入り口で待ち受ける「天使と悪魔の2択」
お洒落な店には入れなかった(入らなかったと言いたい)。 でも、小腹は
減ったし、喉も乾いた。 そんな傷心の「巡回兵」を、この通りの入り口
(鍾路大通り側)で待ち受けているのが、究極の「高低差」2択だ。
道の左側にあるのは、真っ白な壁と無機質なインテリアが眩しい
「THE HAEBOM CAFE(ザ・ヘボムカフェ)」。 ミニマルで洗練された
外観。大きな窓からは光が差し込み、テイクアウト用の小窓さえも愛らしい。 ここでアイスアメリカーノを片手に佇めば、私だって「ソスンラギルの住人」になれる。 SNS映えも完璧だ。天使の誘惑である。
しかし、その視線をふと斜め向かいに向けてみてほしい。

カフェより少し手前、片手にオデン、片手にトッポギを持つ女の子のイラスト看板が強烈な「ホロロク プンシク」。 トッポギ、スンデ、オムク(練り物)……。 中は細長い立ち食いカウンターになっており、美男美女も、
アジョシ(おじさん)も、みんな無心で串を頬張っている。朝早くから夕刻までソウルの人々の小腹を支えるいわば<富士そば>のような頼れる存在だ。

気がつけば、私の足はこちらに向かっている。 お洒落なカフェインよりも、魚のすり身の出汁(ダシ)を欲しているのだ。 30cm以上あろうかという、サーベルのような長い串に刺さった「釜山オムク」を手に取り、熱々のスープ(無料)を紙コップで流し込む。
「・・・そう、これこれ!こうでなくっちゃ。」
ソウルでも人気の「孤独のグルメ」 その主人公、 井之頭五郎ばりに 心の声が快哉をあげる。
ワイングラスを傾けるのもいいが、オデン串を片手に石垣を眺めるのも、また一興。 今のソウルの「洗練(カフェ)」と、昔ながらの「情感(プンシク)」。 この高低差が入り口でせめぎ合っている感じこそ、ソウルのカオスであり、私がこの街を愛する理由だ。
さあ、お腹もすっかり満たされた。再び 巡回に戻ろうか・・・。
【DATA BOX】
ROZÉ's Select:西巡邏街(ソスンラギル)の巡回スポット
1. 西巡邏街(Seosulla-gil / 서순라길)
Access: 地下鉄1・3・5号線「鐘路3街(チョンノサンガ)」駅 7番または
8番出口から徒歩すぐ
Map (Naver): https://map.naver.com/p/search/서순라길
Memo: 宗廟(チョンミョ)の西側の石垣道。約800mにわたり、
お洒落なカフェやバーが並ぶ。週末は激混みなので、
平日の昼間や夕暮れ時の「巡回(散歩)」がおすすめ。
2. ホロロク プンシク(Hororok Bunsik / 호로록분식)
Genre: 粉食(トッポッキ、オデン、ラーメンなど)
Address: ソウル特別市 鐘路区 栗谷路10キル 85
(서울 종로구 율곡로10길 85)
Access: 西巡邏街の入り口(大通り側)すぐ
Map (Naver): https://map.naver.com/p/search/호로록분식
Memo: 「悪魔の誘惑」こと、実力派プンシク店。看板の女の子の
イラストが目印。長~い「釜山オムク」は必食。トッポギや
ラーメンもあり、まさにソウルの「富士そば」的存在。
店名である「ホロロク」はラーメンや熱いスープをすする
時の「ツルツルーッ」「ズズーッ」などの音をあらわす。
3. THE HAEBOM CAFE(ザ・ヘボム / 더 해봄)
Genre: カフェ
Address: ソウル特別市 鐘路区 栗谷路10キル 83
(서울 종로구 율곡로10길 83)
Access: ホロロクプンシクの斜め向かい
Map (Naver): https://map.naver.com/p/search/더해봄
Memo:真っ白な外観と無機質なインテリアがお洒落なカフェ。
テイクアウトして石垣をバックに写真を撮れば、
誰でも「ソスンラギルの住人」になれる(はず)。
