#7 ベッドにサキイカ、窓に鉄格子。 失敗の果てに今選ぶソウル鉄板ホテル4選。
ホテル選びは旅の生命線
ソウル旅行の成否の半分、いや7割以上は「ホテル選び」がカギを握ると言っても過言ではない。 これは初渡韓からかれこれ30年、通い始めて15年の私が出した結論だ。
もちろん、苦労して並んだお店がマズかった、お財布をなくすトラブルに
遭った、店員さんがいじわるだった……などなど、旅に不確定要素や不測のトラブルはつきものだ。だが、それを差し引いてもホテル選びの占める割合は大きい。
それは「ホテルとは旅先で疲れた身体を癒す、いわば第2の家だから❤」などという、ロマンティックで高尚な理由ではない。 限られた時間の中でソウルという街を楽しみつくすために、計画変更、リサーチ、睡眠、充電、補食、そして戦利品(買い物)のストックなど、あらゆるチャージを行う
「前線基地」だからだ。
前線基地を誤る、すなわちホテル選びを間違えるということは、死を招く
ことを意味する。
私の中に、<ホカンス>などという優雅な言葉はない。いかに便利で、機能的で、コスパがよいか? その観点でいつもホテルを選ぶ。 しかし、
かくいう私もコロナ以前は「夏は屋上にプールがあることが絶対条件」などと、イカれた幻想を持ってホテルを選び、ソウルに出かけた時期もあった。
だが、写真と実物は違う。 ブランドのサングラスをかけ、お気に入りの水着で臨んでも、予想以上にしょっぱく「学校のプール感」が強かったり。意外と短いソウルの夏に間に合わず、唇を紫にしてブルブルとパーカーを羽織ったり……なかなか、オシャレバカンスは成立しなかった(遠い目・・・)。
そして年に3回、4回、それも弾丸で通うようになって、ようやく
<ホテルは最強前線基地を選ぶべし>という考えに至るようになる。
今日は,そんな私が乗り越えてきた「天国と地獄」のエピソードを交えながら、今の私がたどり着いたオススメ鉄板ホテルを紹介したい。
ソウル・地獄のホテルのほろ苦い想い出たち
地獄篇でまず思い出すのは、Dホテル。 ソウルの東の果てのバスターミナルの街にある巨大ホテルである。 開業は1990年だったので、私たちは開業後10年未満の1997年か1998年に、ここを女子3人旅で訪れたのである。
数あるソウルのホテルの中で、中心部から1時間弱かかるこんな辺鄙な場所を、なぜ当時の私たちが選んでしまったのか? それはひとえにコストを抑えたかったから。
この年の初めに初渡韓した私たちは、食、買い物、街歩き……すぐにソウルの魅力にとりこになった。初渡韓の際に泊まったのはウェスティンチョースン。中心部のラグジュアリーホテルだ。 帰国後、同じメンバーでまたすぐ行きたくなる。だが、そんなにちょくちょく行けるほどのお金はない。でも行きたい……。 悶々として、安いツアーを死にもの狂いで探す。 「ちょっと明洞(ミョンドン)からは遠いけど、3人1部屋で泊まれて安い! これっきゃない!」 みたいな感覚で鼻息荒く空港から送迎バスでDホテルにやってきた。
12階か13階建ての巨大ホテル、近くには大きなバスターミナルが見える。
えんじの絨毯のクラシックな部屋に通されて、とりあえずベッドカバーをめくる……と、そこには前の客が残したサキイカらしきつまみの残骸…。 ベッドの下を見る。お菓子のパッケージや空き箱。要は清掃が異常に甘いのだ。
でも気にしない。ボロくたって部屋は寝るだけさ! 怖いほどのポジティブシンキングで街に繰り出す女子3名。雑貨や洋服などなんでも安い<明洞衣料>や靴店で山のように買い物をし、ビビンバを食べ、大胆にもタクシーを拾いソウル東端のDホテルまでとホテル名がかかれたカードを見せる。
私たちが乗ったタクシーは、ダッシュボードに山のような造花が飾られ、半透明のクラッチ上部には水中花のようにこれまた花が見える。 後部座席に乗り込むとスピードをぐんぐんあげ、交差点で止まり、なんと知らないおじさんが助手席に乗り込んできた。

ちょっとビビる私たちに、運転手は「大丈夫、Dホテルに必ず行く」的なことを言っているようなのだが、恐怖は消えない。仕方なく後部座席で日本語でずーーっと大声で喋り続けた。 やがてお金持ちそうな住宅街でおじさんは降り、しばらく走った後、無事Dホテルに到着したのだった。
これは韓国で当時あったタクシー相乗りの「合乗(ハプスン)」というシステムだったのだが、今考えてもなぜ地下鉄に乗らなかったのか? 我ながら
理解に苦しむ。 そもそもDホテルがどの駅にあるかも当時の私たちは知らなかったのだ。日本にたとえれば、新宿で遊んで東京と千葉の県境までタクシーで戻るような暴挙。知らないとは恐ろしいものである。
Not only ボロ but also コワイ
そしてそれから15年近く時がたち、またまた私は過ちをおかすのである。
この時も理由は「安いから」。 転職した会社で仲のよい後輩が仕事のストレスで辛そうだった。話をすると海外旅行して気分転換したい……とのこと。 私はしばらく中断していたソウル旅行を思い出す。後輩も韓国コスメに興味があり、ぜひ行ってみたいという。善は急げ!とばかり調べ、連休でできるだけ安いツアーを探す。
鍾路5街(チョンノオーガ)という東大門のそばに泊まれて安いツアーがある! 1も2もなく予約し、私たちは機上の人となった。今度もワゴンで空港から送迎がある。やけに庶民的な薬屋だらけの街で降ろされ、地図を頼りにホテルを探す。路地をしばらく行ったところに今回の宿<ホテルL>はあった。 入り口にはファンシーなぬいぐるみやテーブルセットが飾られ、ペンションのようだ。
ところが部屋に案内されてギョッとする。ドアの上に在室を表す横長の赤いランプがあるのだ。ここは大人ホテルか、はたまた手術室か……。

不安を押し殺しながら部屋に入ると、窓は曇りガラスで外は見えない。そして窓枠は鉄格子……。私たちは無事帰れるのか?! 紙のように薄いアメニティのタオルをみながら思わず後輩と笑う。
Not only ボロ but also コワイ……。(ボロいのみならず怖い。)
予想外の設定に後輩のストレスも吹っ飛びそうだ。 「寝るだけだからいいもんね~」とまたどこかで言ったセリフを繰り返すも、明け方には外から聞こえる韓国男女の激しすぎる痴話喧嘩で起こされ、逆に曇りガラスと鉄格子で良かったと感謝する始末。
何一つオシャレでも素敵でもなかったが、このホテルL、従業員は親切で気持ちよい滞在だった。さすがに再訪しようとは思わなかったが(笑)。 その後名前を変えて鍾路(チョンノ)の地でバックパッカーの友として存在していたが、2025年12月1日、つい最近その営業が終了したという。ボロだ、
貧乏宿だと好き勝手言っていても、いざなくなると寂しいものだ。
えんじ絨毯のDホテルはその後、リノベを繰り返しながら営業は続き、地方とソウルをつなぐ玄関口の宿としての役割を今も果たしているらしい。 今となってはサキイカの洗礼もいい想い出である。
失敗の果てに・・・私が譲れない4原則と鉄板ホテル
……数々の地獄を這いずり回り、失敗の屍を乗り越えてたどり着いた、私の現在の「前線基地」。 選定基準は、若き日のような「プール」や「オシャレさ」ではない。私のソウル旅を支えるのは、この絶対譲れない4原則だ。
【駅近】 荷物を預けてすぐ動ける。朝から晩まで、そして最終日もギリギリまで時間が読め、活動できる。駅徒歩5分以内が絶対条件。
【コンビニ併設】 Tシャツ短パン・すっぴんで必要な時におやつや飲み物を補充できる幸せ。おみやげだって調達可能。
【充電環境】 スマホ、Wi-Fi、PC、バッテリー……。旅の命綱ともいうべき電化製品をチャージするためのコンセントとUSBポートの充実。
【そこそこ清潔】 毎日掃除がきちんとされていて、普通のタオルがあること。そんなに高望みはしていない。
この4条件をクリアし、私が愛してやまない「鉄板の4選」がこれだ。
① ホテル スカイパーク2(乙支路入口)
~2号線にすぐ乗れる幸せをかみしめて~
最寄り駅は2号線乙支路入口(ウルチロイプク)。 緑の電車、この2号線は、弘大(ホンデ)、新沙(シンサ)、聖水(ソンス)、チャムシル……と観光客にも人気のスポットがたくさんある駅を通り、使用頻度が高い。 この駅から歩いて数分にある同ホテルは、ロッテ百貨店も大通りはさんで目の前、
明洞の人気ショップも5~6分という利便性である。 同系列のスカイパーク
セントラルとスカイパーク2が並んで建ち、ほぼ違いは見当たらないのに
なぜか「2」の方がお値段抑え目、という不思議。 半地下にイートインの
セブンイレブンがあるのでとっても便利。
② サボイホテル(明洞)
~1957年創業、明洞の主(ヌシ)~
「え、あんな古参ホテル?」と侮るなかれ。 明洞のメインストリートのド真ん中、あの喧騒の中にありながら、中庭に足を踏み入れると空気が変わる。 リノベ済みの部屋はシンプルだが機能的。そして何より最強なのは「コンビニ(GS25)」が敷地内(1階)にあること。 爆買いして、部屋に荷物を投げ込み、1階でコーヒーやお茶を買って、また街へ繰り出す……。他で浮気しても、なぜかまたここに戻ってしまう、いわば<第2の実家>である。

③ MOXY SEOUL 仁寺洞(鍾路3街)
~屋台の喧騒を抜けドア一枚でSOHOへ~
マリオット系列のカジュアルブランド「MOXY」は、鍾路3街(チョンノサンガ)4番出口の目の前でピンクのネオン管風のロゴが印象的だ。 部屋はお世辞にも広いとはいえないが、テーブルと椅子を壁掛け収納にした機能的な客室で、USBポートも最新仕様で完備。 チェックイン時にくれるトークンを手にルーフトップバーでドリンクサービスを受けるもよし、POP ARTのイラストが印象的な吹き抜けのラウンジでコーヒーサービスやスマートボールを楽しむもよし……。 夜中まで騒ぎが続く真下の屋台街の騒音は、防音していても若干気になるが、スタッフのフレンドリーさと、すぐ目の前に広がる「益善洞(イクソンドン)」の韓屋カフェ街へのアクセスの良さが全てを
解決する。


④ ホテル スカイパーク キングスタウン東大門(東大門)
~眠らない街の要塞~
東大門でナイトショッピングをするなら、ここ一択と言っても過言ではない。 現代シティアウトレットの上層階に位置し、広大なロビーと中庭的な
吹き抜けの空洞を持つ、まさに「要塞」。 特筆すべきは、ロビー階にコンビニがあり、そのまま部屋へ直行できる動線。そして、歩き疲れてもまた階下の現代シティアウトレットに降りて行って買い物をしたり、地下食堂で
アワビ粥や百味堂のソフトクリームを食べたりできてしまうこの素晴らしい立地。ダイソーも教保文庫も、更に小ぶりだがオリヤンだって入っている。 チェックイン・アウトも多言語対応の端末でパパッと出来て、とにかく
便利。


結論
結局のところ、ガイドブックの星の数や、インフルエンサーのキラキラした写真が全てではない。 私が挙げた「4原則」が私にとっての正解であるように、あなたにはあなたの「譲れない条件」があるはずだ。
他人から見ればボロい宿でも、あなたがそこで安らぎ、次の日の活力を得られるなら、そこは天国だ。逆にどんなに高級でも、スタイルに合わなければ、それはただの箱でしかない。 自分なりの優先順位を決め、それを満たす宿を探すことができれば、それはあなたにとって唯一無二の神ホテルになる。
さあ、今日もソウルをさまよう勇敢なる兵士(ソルジャー)たちよ!
この地での栄光の為に、最強の前線基地を追い求めよう!
【DATA BOX】
ROZÉ's Select:ソウル鉄板ホテル4選
1. ホテル スカイパーク 2 明洞(Hotel Skypark Myeongdong 2)
住所: ソウル特別市 中区 明洞9キル 22
アクセス: 地下鉄2号線「乙支路入口」駅 5番出口 徒歩約2分
推しポイント: 2号線ユーザーに最強の立地。セントラルより少し安くてお得。半地下のセブンイレブンが便利。
Map (Naver): https://naver.me/56YlQWfC
2. サボイホテル(Savoy Hotel)
住所: ソウル特別市 中区 明洞8ナキル 10
アクセス: 地下鉄4号線「明洞」駅 6番出口 徒歩約3分
推しポイント: 創業1957年の安心感と、明洞のど真ん中という利便性。1階のGS25(コンビニ)が便利すぎる「第2の実家」。
Map (Naver): https://naver.me/5U1C6JIn
3. モクシー ソウル 仁寺洞(MOXY Seoul Insadong)
住所: ソウル特別市 鐘路区 敦化門路11キル 37
アクセス: 地下鉄5号線「鐘路3街」駅 4番出口 目の前
推しポイント: 益善洞カフェ街の目の前。コンパクトで機能的な部屋と、おしゃれなラウンジ。夜中の屋台街の熱気を感じたい人に。
Map (Naver): https://naver.me/xhHn5mXQ
4. ホテル スカイパーク キングスタウン 東大門(Hotel Skypark Kingstown Dongdaemun)
住所: ソウル特別市 中区 奨忠壇路13キル 20
アクセス: 地下鉄1・4号線「東大門」駅 8番出口 徒歩約5分
推しポイント: 眠らない街の「要塞」。現代シティアウトレット直結で、買い物・食事・休息のループが止まらない。
Map (Naver): https://naver.me/5NdMj994
