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【2000スキ感謝!連載小説】おののもん-京都あやかし奇譚-②

< 前回のあらすじ >
一族の宿命を背負い、
地獄へ向かう若様。
小太郎は、主人を地獄へ送らねばならぬ現実と、
胸の奥にくすぶる想いの間で揺れていた。
このまま若様の手を取って、
一緒に逃げよう──
そう言うたら、
どんな顔、しはるやろか。

第2話 「決意」

そんな僕の想いなど虚しく、
時間だけが刻々と過ぎていく。

地獄の入り口がある六道さんまで
若様を無事に送り届ける。

それが僕の最後の仕事。

小野乃家は、昔から冥府と縁が深い。
閻魔大王に仕えたとされる祖を持ち、
その血は今も続いている。

にわかに信じられないことではあるが、
地獄でのお役目は先祖代々受け継がれてきた。

畏怖の敬称として、
一族の血を引く者はこう呼ばれている。

──小野ノ者(おののもん)

若様は、その直系で
次期「おののもん」を襲名されている。

長い歴史の中、
人ならざるものの血も混じったそうで、
浮世離れした美しさをもつ、僕の主。

昔は地獄と現世を自由に往来できたそうだが、
ある時期を境に、戻って来られた者はおらん。

「小太郎?どないしたん?
怖い顔して。
……あぁ、猫逃げてしもたな」

僕の心の騒めきを微塵も気に留めていない様子で
若様はいつも通り、にこやかに落ち着いておられる。

若様を地獄になんか行かせたくない。
けど、冥府に逆らえば
一族がどうなるか分からん。

僕は焦りだけが募り、
思わず口走ってしまった。

「若様、……お願いがございます」

僕の両親はろくでもない人間やった。
ギャンブルに溺れ
そこらへんから借金をしていたそうだ。

微かに残る記憶は、
借金取りの怒声と
泣き崩れる母親。

幼い僕は、
まるで値札がついたかのように
遠縁の小野乃家へ差し出された。

穀潰しでしかない子供など
鴨川へ捨てられても文句は言えへん。

けどご当主である若様のお父上は
僕に情けをかけ引き取ってくださった。
そして若様に出逢った。

あの日から、
僕の命は若様のもんや。

「若様、お願いがございます」
喉が震えた。

「僕は小野乃家に返しきれへん恩があります。
自分のエゴで若様を攫って逃げるなんざできません。
せやけど──」

僕は若様に一歩近づいた。
決して離さないとでもいうように。

「せめて……
せめて一緒に地獄へ連れて行ってください」

かすれた声で希う。

──運命に抗い、逃げることはできひん。
ならば最期までお守りします。

あなたが地獄に堕ちるなら
僕も共に堕ちましょう。

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<次回予告>

「若様は、僕にとって──」

別れ際、溢れ出す小太郎の想い。
止めようとしても、もう止められない。

「わしの願いは、ただ一つ」

若様が静かに告げた、その言葉とは──。

次回 第3話 【唯一の願い】


妖艶に煙を纏う若様

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この物語はフィクションです。登場する人物、団体、名称などは、
実在の人物や事象とは一切関係ありません。


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