見出し画像

星の終着駅~君をまた探しに行くよ~

──もう、何度目の夜だろう。
時計の針は、長いあいだ止まったままだった。
星も風も、すべてが同じ場所で呼吸をしている。

猫は屋根の上に座り、何度目か分からない月を見上げていた。
あの日と同じ風。あの日と同じ音。
そして、あの日と同じ孤独。

眠れば同じ夢を見て、
目を覚ませば、同じ月がそこにある。

その夜も、鈴の音が小さく鳴った。
——ほら、まただ。

時間が輪のように閉じている。
その中で、猫はずっと、「あの日」を歩いていた。

新しい朝は、永遠に来ないのだろうか。

ただ、わかるんだ。今日は違うって。
——やっと、この日が来たのだと思った。

優しい雨と、優しい声が聞こえた。
「君をまた探しに行くよ」

猫はゆっくりと立ち上がり、
背中のリュックを整えた。
中には、まだ手放せないものが、静かに息をしていた。

猫は光の差す方へと歩きだした。

見慣れない道。


進むたびに世界が少しずつ遠ざかり、
音が消えていく。
足もとに、小さな星の欠片が落ちた。

——カラン。

その音を合図に、夜が、ゆっくりと動き出した。
猫は知っていた。
この道の先が、きっと“終わりで始まり”なのだと。

雲がほどけ、目の前にぽつんと光る駅が現れた。
そこは“星の駅”。
三日月がすぐそこにあって、
風が吹くたび、星の粉がきらりと舞った。

列車は静かに待っている。
ドアが音もなく閉まり、
がたん、と小さく揺れて、
夜の汽車は動きだした。

——星の各駅停車。

第一の駅:風の星

空気が透きとおるような青の世界。
風が音を持ち、笛のような旋律が流れている。

猫は耳をすます。
知らないはずの旋律。
でも、どこか懐かしい。

思い出した。
あの窓辺、夕暮れのベランダ。
誰かが吹いていた笛の音。
その横が猫の特等席だった。

猫は目を閉じると、気持ちがいい風が吹いた。
まるで「ありがとう」と言われたように。

汽笛が鳴る。
列車がまた走りだす。

第二の駅:灯りの星

今度の駅は小さな町のようだった。
木のランプが並び、夜の道を照らしている。

猫が降りると、香ばしいパンの匂いがした。
「おや、旅人さん。」

白い帽子をかぶったフクロウが、
ランプを一つ手にして言った。

「終着駅に行くなら、心の灯りを持っていきな。
 これは希望の火。消えると困るから、だいじにね。」

猫はうなずき、ランプを受け取った。
その光は小さくとも、温かかった。
ストーブの前でぬくぬくと眠っていたことを思い出す。

汽笛が鳴る。
列車がまた走りだす。

第三の駅:記憶の星

窓の外に、懐かしい風景が広がる。
小さな家、庭、鈴の音。

列車が止まると、猫はホームに降り立った。
夜風の匂いが、どこか懐かしい。
鞄の中の鈴が、かすかに鳴った。

——これは……。
あの家の縁側、やさしい手のぬくもり。
名前を呼ぶ声。
すべてが風の中に混ざっていた。

猫は星の砂をひとつ拾い、
鞄にそっと入れた。

汽笛が鳴る。
「さようなら」でも「またね」でもなく、
その音はただ、やさしかった。

最終駅:星の終着駅

列車は霧の中を抜けた。
空が群青から淡い藍へと変わっていく。

——夜と朝のあいだ。

ドアが開き、猫は光の中へ降り立った。
丘の上。草の上に星のかけらが散らばり、
遠くの海が光を返す。

猫はリュックを開けた。
最後の荷物は、君の笑顔。
フクロウのランプはまだ灯っていた。
小さな炎が、ゆらりと揺れる。

「ありがとう。」

猫はその火を丘の上に置いた。
風が包み、炎は空へ昇る。
そして、ひとつの星になった。

リュックは空になった。
胸の奥は不思議なほどあたたかい。


——旅は終わったのだろうか。
それとも、ようやく“始めること”を許されたのだろうか。


猫は光の道を歩き出す。
足もとで露が光った。
地上に落ちた小さな星のように、
やわらかく瞬いていた。

そして夜が明ける。
世界はまた、新しい色を見せようとしていた。

猫の背中が、朝の光に溶けていく。
その尾だけが、しばらくのあいだ、
空の青に、やさしく揺れていた。


——星の駅。
旅はつづく。静かな場所で、いつまでも。

あとがき
昨日アップする予定だったのをすっかり忘れてしまってました(´;ω;`)ウゥゥ
昨日は昨日で心の内を表現できたので良かったです👍✨
今回の物語は以前詩にもして、商品化もしているこちら↓↓↓

今回の物語は、ポストカードやノートにもなっている
旅をする猫

この物語は、幻想的な空間で旅をする猫としてみてもらえますし
空へと旅立つための心の準備や、その時まで待っていた猫としてとらえていただいてもかまいません(*´ω`*)

旅する猫、ぜひご覧ください💖コメント大歓迎です(*´▽`*)



いいなと思ったら応援しよう!

SAI - 青の世界と物語 私の好きな世界観を、物語にして届けたい。 儚く美しい世界線を、あなたと共に。 優しい世界に言葉を紡いで。