見出し画像

言葉でわかる、子どもの成長 ~海外で日本語教師をして感じること~

はじめに

今月の教育子育て部のテーマは、「子どもの成長を感じるとき」です。

子どもの成長というと、身長が伸びたことや、できなかったことができるようになったことを思い浮かべる方が多いかもしれません。

もちろん、それも大きな成長です。

しかし、海外で日本語教師をしている私が、一番「成長したな」と感じる瞬間は、少し違います。

それは、

「言葉遣いが変わったとき」

です。

たった一言の違いかもしれません。

それでも、その言葉の変化には、子どもたちの心の成長が詰まっているように感じています。


言葉は、その人を映す鏡

私はオーストラリアで子どもたちに日本語を教えています。

授業では、日本語の読み書きや会話だけではなく、日本の文化や、人との接し方についても自然と話題になります。

最初は、多くの子どもたちが友達同士で話すような言葉遣いをします。

「うん。」

「いいよ。」

「ちがう。」

もちろん、それが悪いわけではありません。

相手が友達であれば、ごく自然な話し方です。

しかし、先生に対しても同じ話し方をしてしまうことがあります。

それは海外で育つ子どもたちにとって、とても自然なことです。

日本のように日常生活で敬語を耳にする機会が少ないため、敬語そのものを使う経験が少ないからです。

だから私は、授業の中で少しずつ伝えます。

「先生には『はい』と言ってみよう。」

「『お願いします』と言うと、もっと気持ちが伝わるよ。」

そんな小さな積み重ねが、子どもたちの中に少しずつ根付いていきます。


「です・ます」が自然に出た日

ある日、一人の児童が質問に答えるときでした。

以前なら、

「できた。」

と答えていた子が、

できました。

と自然に話したのです。

私はその瞬間、とても嬉しくなりました。

もちろん、その子は意識して話したわけではないかもしれません。

しかし、「です・ます」が自然に出てきたということは、その言葉が自分のものになり始めている証拠です。

言葉は暗記するものではありません。

生活の中で使いながら、少しずつ身についていくものです。

その変化を見るたびに、「成長しているな」と感じます。


行ったり来たりでいい

もちろん、成長は一直線ではありません。

今日は丁寧に話せたのに、翌週にはまた友達言葉に戻ってしまうこともあります。

注意した言葉を、また使ってしまうこともあります。

でも、それでいいのだと思っています。

子どもの成長は、階段ではありません。

山登りのようなものです。

登ったと思ったら少し下る。

遠回りをする。

休憩する。

それでも、少しずつ頂上へ近づいていきます。

教育の仕事をしていると、その「行ったり来たり」を何度も見てきました。

だから私は、一回の失敗で「できない子」とは思いません。

昨日より少しでも前へ進めたなら、それは立派な成長です。


言葉は人を育てる

私は、「使う言葉」は、その人自身を育てると思っています。

「ありがとう。」

「お願いします。」

「すみません。」

「大丈夫です。」

こうした言葉は、相手への思いやりを表すだけではありません。

その言葉を使う本人の心も育てていきます。

反対に、乱暴な言葉ばかり使っていると、知らず知らずのうちに人との距離も遠くなってしまいます。

もちろん、子どもたちは完璧ではありません。

時には感情的になったり、友達同士で強い言葉を使ってしまったりすることもあります。

しかし、そのたびに少しずつ学び、少しずつ修正していく。

その繰り返しが、人としての成長につながっていくのだと思います。


教師としてできること

教師の役割は、言葉を教えることだけではありません。

「どう話せば相手が気持ちよくなるのか。」

「どう伝えれば思いやりが伝わるのか。」

そんなことも、一緒に考えていく仕事だと思っています。

海外で育つ子どもたちは、日本語を使う機会が限られています。

だからこそ、学校という場所が、日本語だけではなく、日本らしい礼儀や思いやりを学べる場であってほしいと願っています。

私は毎週の授業で、できるだけ丁寧な日本語を使うよう心掛けています。

子どもたちは、大人の言葉をよく聞いています。

教えるよりも、見せること。

その積み重ねが、一番の教育なのかもしれません。


言葉の先にある成長

子どもの成長は、テストの点数だけでは測れません。

漢字が書けるようになることも大切です。

計算が速くなることも大切です。

しかし私は、それ以上に、

「どんな言葉を選べるようになったか」

を大切にしたいと思っています。

「ありがとう」が自然に言える。

「お願いします」と相手に伝えられる。

「です・ます」で話せる。

そして、自分で「この言葉は使わないほうがいい」と考えられるようになる。

そんな小さな変化の積み重ねが、子どもたちを大きく成長させていくのだと思います。


おわりに

教育には、すぐに結果が見えるものもあれば、何年も経ってから実を結ぶものもあります。

言葉遣いは、まさに後者ではないでしょうか。

一朝一夕では身につきません。

だからこそ、一人ひとりの小さな変化が、とても嬉しく感じられます。

これからも子どもたちが言葉を通して人を思いやり、自分の気持ちを大切に伝えられるよう、成長を見守りながら、私自身も教師として学び続けていきたいと思います。

そして数年後、「先生、あのとき教えてもらったことを今でも覚えています。」

そんな一言を聞ける日が来たら、それ以上の喜びはありません。子どもたちの未来を信じながら、これからも一つひとつの言葉を大切に届けていきたいと思います。

いいなと思ったら応援しよう!

彩流(さいりゅう)❤️asunaga🦘 最後まで読んでいただき、ありがとうございます! 合わせて、サポートのお願いでございます。 心づけ(サポート)いただけましたら、数日以内に記事を無理のない範囲、好感を持てるよう貴記事をご紹介させていただきます。 また逐次お役に立てるように使わせていただきます。