夜中の3時、慌てなかった理由
夜中の3時、病院から電話が鳴った。
Sさんは、慌てなかった。
それは、半年前にあの一言を聞いていたから。
※はじめに:このお話は、これまでご相談いただいた複数のご家族の実例を組み合わせ、お名前や状況を変えてご紹介しています。
10年前と、今と
ここ最近、現場で強く感じていることがある。
10年前と比べて、事前相談で葬儀屋を決める方が確実に増えてきた。
以前は「亡くなってから慌てて選ぶ」のが当たり前だった。今は違う。「もしもの時のために」と、先に話だけ聞きに来てくださる方がとても多い。
死の準備、というより、これからを安心して過ごすための準備。
そう言い換えたほうが、たぶん近い。
祖父のときの、あのバタバタ
40代のSさんが最初に当社にいらしたのは、お祖母様のことが少し気にかかり始めた頃だった。
「祖父の時は、本当に慌てました」
Sさんは静かに振り返った。
深夜の病院からの電話。誰に連絡すればいいか、葬儀社はどこに頼めばいいか、何にいくらかかるか——何ひとつ分からなかった。電話帳で見つけた葬儀社に頼み、提案されたプランのまま進めた。
「後から請求書を見て、こんなに費用がかかるのかと驚きました。でもその時はもう、何が適正で何が高いのか、判断する余裕もなくて」
あの数日間の記憶は、悲しみよりも、慌ただしさのほうが濃く残っているという。
「お話を聞けて、本当に安心しました」
事前相談では、ご予算のこと、宗教のこと、参列者の人数、ご家族の希望——時間をかけてゆっくり伺った。決めることは何もない。話すだけでいい、とお伝えした。
帰り際、Sさんがこうおっしゃった。
「事前相談に来る前は、葬儀って全くイメージが沸かなかったんです。でも今日、お話を聞けて、本当に安心しました」
肩の力が抜けた、というような表情だった。
ご家族が今お元気な方には、私たちはいつも、見積書をお渡しするときにこう添えている。
「まだまだお元気だと思いますが、お守り替わりとして、お手元に置いておいてください」
実際に使われないまま、引き出しの奥にずっと眠っていてくれて構わない。
それが一番いい、とさえ思う。
夜中の3時の、電話
それから一年あまり経った、ある日の夜中の3時。
お祖母様が、静かに息を引き取られた。
さんは、当社に電話を入れた。
落ち着いた声だった。
「事前に話していた通りでお願いします」
宿直当番の担当者がすぐに伺い、半年前に二人で確認した段取りのまま、葬儀の準備が進んだ。
後日Sさんは、こうおっしゃった。
「祖父の時のような、あのバタバタは、もうなかったんです。祖母とちゃんとお別れする時間が、あったんです」
次に夜中に電話が鳴るのは、いつか分からない
事前相談に来られる方の状況は、本当にさまざまだ。
お元気なうちに準備をしておきたい方。
ご家族の体調が芳しくなく、差し迫った状況の方。
ご家族を看取られたばかりで、これからのことを整理したい方。
どのご状況の方からのご相談も、もちろんお受けしている。
お話を聞かせていただき、できるご提案をさせていただく。それだけのことだ。
次に夜中に電話が鳴るのが、いつかは誰にも分からない。
ただ、その時に少しでも慌てないための「お守り」を、今日は一つ、持って帰ってもらえたら。
気になった時、思い立った時で大丈夫です。
それまでこの記事をブックマークしておいてもらえたら、それで十分です。
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