「波の音」お題で書きはじめるnote企画
『波の音?』
朦朧とした曖昧な記憶のなかを浮遊しているような感覚。
リビングのリクライニングチェアに身体を預けているが、家族は誰も私に気がついていない。
『トイレに行きたいのだけれど・・・』
次から次へと現れる家族にヘルプを頼んでいるのに、半透明になっている私には誰も気づいてはくれなくて、波の音とも川の音ともとれる水音のなか、何とも言いようのない開放感。どうやら私は動けずに失禁したみたい。
足の悪い夫がジーンズ姿で歩いてきた。30歳ほど若返ったようだ。
隣に真っ赤なフレアースカートの若い女の人と手を繋いでいたりして。
『まぁ、お元気なこと、でも歩けてよかったね!』
と声をかけているのだけれど無視される。
孫たちがリクライニングチェアに乗ってきた。
『ダメ、グランマ失敗したんだから!』と叫んだのだけれど、そのリクライニングチェアは、濡れてはいなくて、透き通った私の上に次々と乗って来る。
いつものように、子どもたち家族と夫は食事会を始めるらしい。
グランマ!食べて!と声がかかったけれど、リクライニングチェアの私ではなく、西向きの祭壇に手を合わせている。
あぁ、私はもう逝ってしまったのか・・・
「SAKURAさん!わかりますか?僕ですよ!目が覚めましたか?」
何度も何度も呼びかける声が聞こえる。
「・・・センセ・・・」
白衣の主治医が私を覗いている。
『・・・リビングのあれはいったい何だったの?・・・』
