小説「十年間の沈黙を破る、一冊の手帳の物語」
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【PDF、このノートで一部ですが、違う部分があるかもしれません。
その点はご注意ください】
〈「第四章はどこにつながってますか」ですって?
それは…これを見ているあなたが考えてみてください。〉
あらすじ
大好きな母親を亡くしてから、一日だってその面影を忘れたことはなかった。
21歳になったゆあのもとに届いたのは、お母さんからの優しさに満ちた一通の手紙だった。
お母さんの秘密の隠し味「コーン」を入れたオムライスを作り、まるで隣に母がいるような温もりを感じるゆあ。
だが、お母さんの遺品である古い手帳を開いたとき、ゆあはそこに遺された本当の願いを知ることになる。そして訪れた22歳の誕生日、ゆあは天国のお母さんに向けて、ずっと胸に秘めていた想いを語りかけ始めた。
重力を超えて響き合う、母と娘のまっすぐな言葉。郵便ポストが光を放つとき、永遠の愛を証明する「最後の手紙」がゆあの心に届く。
プロローグ
「じゃあ、お母さん。行ってくるね。」
「うん、行ってらっしゃい。気をつけてね」
その言葉を最後に、お母さんが死んでしまった。
それから十年後──
私は、21歳になった。
21歳になった今でも、死んでしまったお母さんのことは、絶対に忘れない。
そう思い、私が住んでいるアパートに向かった。
第一章:届いた手紙
ある日、私のアパートのポストに、一件の手紙が入っていた。
それはなんと、死んでしまったはずの「お母さん」からだった。
「ゆあ、ちゃんと食べてる?体調崩してない?
うふふ、大丈夫そうね。」
そこまで読んだところで、お隣の紬(つむぎ)さんが声をかけてきた。
「何読んでるんですか?」
私は、
「ううん、チラシ見てるだけ。」
と、嘘をついてしまった。
紬さんは、
「チラシ…ですか」
と言って、私のそばを去っていった。
第二章:懐かしい台所
お母さんからの手紙を読み終え、私の家に帰ってきた。
「ただいま。」
と、思わず実家ではないのにそう言ってしまった。
ふと、玄関の収納の上に乗っている写真を見る。
お母さんと私が、頑張ってオムライスを作ったころの写真だ。
「懐かしいな。」
写真の中のお母さんは、チェックの赤いエプロンをしている。
私もこんなエプロン、買いたいな。
そんな時、ふとお腹が
「グゥ〜〜…」
と、鳴った。
私は、あの懐かしいオムライスの作り方を手紙の中で探した。
手紙の裏を見る。
「あった…!」
そこには、
「オムライスの作り方🥫
・オムライスの卵には、ひとつまみの砂糖と、お母さんの秘密の隠し味『コーン』を入れなさい?」
他にも色々書いてあったが、まずは手順に沿ってオムライスを作ってみることにした。
「コーン…コーンかぁ…あったかな?」
と言いながら、冷蔵庫の中を漁る私。
「ガサゴソガサゴソ…あった!あとは、オムライスに必要な材料を揃えて…よし!」
キッチンを見る私。
「……?」
(13年前──)
「ねーね、おかあさん?」
「なーに?」
「わたしねー、オムライスつくってみたいの!」
「おー、オムライスね!じゃあ、お母さんと一緒に作ってみようか!」
「うん!」
私と、お母さんの声が重なる。
「材料は、卵、温かいご飯に、ベーコン、玉ねぎ。
調味料やソースが、ケチャップ、バター、塩、こしょう、生クリーム。
仕上げに、 パセリ、追いケチャップ、隠し味『コーン』!」
私が、
「よし、完成!」というと、あの頃のお母さんは消えてしまった。
第三章:散らかった部屋
オムライスを食べ終わった私。
「ごちそうさまでした!」
ふと、リビングを見る。
「……片付けないと…」
と言いながら、デスクの上の棚を漁る。
「この場所に、なにかお母さんの私物があったような…」
ガサゴソ、ガサッ…
「…あった…!」
そこにあったのは、茶色い手帳。
「確か、これがお母さんの使ってた手帳だな。」
ページを恐る恐るめくる。
「ペリっ…」
一番最初のページには、こう書いてあった。
「私がもし死んでしまったら、ゆあに手紙を送り続けること。」
そして私は、驚きで目を見開いた。
「えっ…!?
って、言うことは…」
第四章:茶色い手帳
(ここまでのあらすじ:手帳を握りしめる指が、微かに震えている。
お母さんのオムライスで満たされたはずのお腹が、今は別の何かで、心がざわついていた。
『私がもし死んでしまったら、ゆあに手紙を送り続けること。』
手帳に記された、お母さんの、あまりに現実的な筆跡。
奇跡だと思っていたあの手紙は、誰かが意図して届けている『計画』だった……?
──っていうことは、あの時、お母さんの手帳に『あの言葉を書いた』のは……。
…?あれ、これってもしかして…)
「さっき送られてきた手紙は、幻じゃなかった…!?」
と、私は大きな声で言った。
「ううん、気を取り直して…」
手帳の次のページを見る。すると、こんなことが書いてあった。
「私(お母さん)♡」
私は、
「えっ……!?お、お母さんなの…!?これ…」
と、はたまた驚きで目を見開いた。
最終章:最後の手紙
そして、時が過ぎ…
ふと、私はこう思う。
「あの手帳の『私♡』って、絶対お母さんの字だよね…!」
私は、その時思ったことを、天国にいるお母さんに喋りかけるように言う。
「お母さん、天国でも元気ですか?
私は、元気です。
私は今日、22歳になりました。
あの時みたいに、お母さんからの手紙って来るのかな。
楽しみ!
そういえば、私が実家から離れたとき、覚えてる?
その時に、お母さんの使ってた古い手帳、持っていったの…覚えてる?
……『覚えてる?』いっぱいになっちゃったね。ごめん。
その古い手帳の最初のページに、こんなのが書いてあったから、それって本当にお母さんが書いたのか知りたいの。
『私がもし死んでしまったら、ゆあに手紙を送り続けること。』って…」
すると、なぜか体が一瞬軽くなった。でも、すぐ元の重力に戻った。
「これって…送られたってことかな…?」
そして、私はすぐに外に出て、郵便ポストをチェックした。
でも、すぐに返信は来なかった。
「やっぱり、そうだよねー…」
私は、こう思った。
「早くお母さんからこないかなー…」
すると、私のアパートのポストがキラキラとちょっとだけ光っているのが見えた。
「……え…?」
そこを見ると、「お母さん♡」と書かれた手紙が入っていた。
「やった!」
と、思わず言ってしまった。
そこには、こう書いてあった。
「ゆあ、お誕生日おめでとう。もう私は死んでしまったけれど、ずっと、ずぅっと、元気でいてくれるよね。
あと、『私がもし死んでしまったら、ゆあに手紙を送り続けること。』ね。
『本当に』私よ!
古い手帳に書いてあったんでしょ?
そういや、そんなことを書いた時もあったなー…
今でもその約束、守ってるよね!
それじゃあ、おやすみ。
私、実は、天国から手紙を送り続けていたの」
これが、お母さんから私に届いた最後の手紙。
私は、
「こちらこそ、おやすみ。
また、天国で会えたらいいな。」
〈完〉
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