RESCENEに見る、小さな会社が逆転するヒント
恥ずかしながら、K-POPアイドルに少しだけ興味がある。
いや、ほんの少しである。
そんな私が最近、妙に気になっているのが韓国の女性アイドルグループ、RESCENE(リセンヌ)だ。
その話の前に。
私は長く鞄メーカーでものづくりに関わってきた。その中で、いやというほど聞いた言葉がある。
「良いモノを作っただけでは売れない」
若い頃は、本当だろうか? それはお前が良いモノを作ってないだけやろ? と思っていた。
しかし長く仕事をしていると、残念ながらこの言葉はかなり正しいことに気づく。
良いモノでも知られなければ売れない。広告、営業、展示会、販路。この辺は金も人もある大企業が圧倒的に強い。
さて、リセンヌである。
2024年、小さな新興事務所からデビュー。2026年、日本人メンバーのミナミが動画で発した「巨済ヤッホー」が韓国でミーム化した。
正直、私は何がそんなに面白いのか分からない。多分、日本人が見てもいまいちピンとこないと思う。
でも韓国では妙に刺さった。
そこから過去の動画や楽曲が掘られ、2年前の「LOVE ATTACK」が突如としてチャートを駆け上がり、ついにはMelon TOP100で1位になった。
これだけなら、SNSでバズったアイドルの話である。
ただ、バズだけでここまで行ったわけではない。
このLOVE ATTACKという曲は、特にサビに入るところで一瞬「ん?」となる。
ところが、よく聴くと別に奇抜なことをしているわけではない。変拍子でもないし、露骨に転調しているわけでもない。普通のポップスの範囲なのに、普通ではない。
作っている側は音楽のガチ勢で、演者にもそれを理解して表現する力がある。
実は奇抜なことなどしていなかった。ただの技術だった。
これは鞄でも似たような経験がある。
以前勤めていた会社で、少し変わった素材を使った商品があった。展示会では評判が良く、注文も付く。でも実際に売り場へ出すと思ったほど売れない。
その後、形はそのままに普通の素材へ替えた。
途端に売れた。
展示会でバイヤーが面白がるものと、実際に消費者がお金を出して買うものは同じではない。
変わっていればいいわけではない。普通に使えて、普通に欲しい。でも、どこか少しだけ違う。
LOVE ATTACKも、その辺が絶妙なのだと思う。
もう一つ面白いのが、「巨済ヤッホー」が生まれた動画である。
ウォニのYouTubeを手掛けていたのは、事務所内のSNS担当ではなく、外部の映像制作会社Solfa Studioだった。
撮影して投稿するだけではない。何をやるか、誰をどう見せるかまで考えるディレクターがいた。
中小零細でも「SNSが大事だ」となると、すぐ社内に担当を置きたがる。
でも一度担当にすると、そいつがいまいちでも簡単には替えられない。そして少し数字が伸びれば「自分が育てた」みたいな顔をするので腹立つ。
いや、お前じゃなかったらもっと伸びていたかもしれない。
これは誰にも検証できない。
実は大企業だって、多くの仕事を外に出している。人が足りないからではない。
外の専門家の方が優れていると、はっきり判断しているのである。
大企業はその辺が賢い。
中小零細に置き換えれば、何でも自分でやる精神は大切だと思う。人が少ない以上、ある程度は何でもやらなければ回らない。
ただ、専門性の高い分野まで無理に自前でやる必要はない。
自分たちが強いところは自分たちでやる。外の方が優れているところは任せる。
そして、人選には妥協しない。
奇しくもリセンヌがブレイクしたのは、KARAの「Pretty Girl」をリメイクしてカムバックする時期だった。
私は少し、売れない頃のKARAを思い出した。
KARAも最初からスターだったわけではない。苦しい時期を経て、Pretty Girl、Honeyあたりから一気に伸びていった。
リセンヌのPretty Girlも良かった。
ただし、元はKARAの名曲である。
ここからリセンヌがもう一段上へ行くには、LOVE ATTACKに続く強いオリジナル曲をもう一つ出せるかどうかだと思う。
一度なら偶然でも起きる。二度出せたら、もう偶然ではない。
「巨済ヤッホー」がリセンヌを作ったわけではない。
LOVE ATTACKは、そのずっと前からそこにあった。
たまたま入口が開いた時、その奥に本当に良いものが置いてあった。
若い頃に思っていた、
「それはお前が良いモノを作ってないだけやろ?」
も、今では8割以上は当たっていると思う。
ただし、ここでいう「良いモノ」は物そのものだけではない。
誰に、どこで、どう見せるのか。売り場や発信の設計まで含めてプロダクトだと思う。
そこで得た信頼を次でも裏切らず、継続していく。
それが所謂「ブランド」なのだと思う。
中小零細やスタートアップであっても、技術と力の入れどころを間違えず、規模をきちんとコントロールできれば、こういう勝ち方は再現できるはずだと考えている。
規模のコントロールは、事業の継続性に直結する。
人を増やしすぎない。固定費を抱えすぎない。専門性の高い部分は、優れた外部の力を借りる。
大きくなることより、長く、生き残る。
