風鈴の暑気祓い
熱帯夜に寝苦しさから解放するように、澄んだ音が奏でられた。
リリーンーー
窓辺に吊るした風鈴が風に揺れた。
あれはどこかの市に行った時、見つけたもの。
湿気の少ないカラッと晴れた日、太陽の下は真っ白で、真っ黒な影だけが小さく日影を作った。
セミの声が大合唱で鳴り響き、私はその屋台の並ぶ道を1人歩いていた。
昼市だというのに、人はまばらだった。
まるで、私だけが迷い込んだ場所のように。
いくつあるかも分からない風鈴が数百と揺れては真夏の下で澄んだ音を奏でた。
目の前を大きな金魚が泳ぎ、通り過ぎたように見えた。
浴衣の帯だったのだろうか。
そちらを向くと、その金魚が映り込んだように美しい尾ヒレが風鈴の中で揺れていた。
手に取ると、数百の数の中から、たった1つを見つけた気持ちになった。
リリーンーー
目を開けると、ガラスの水槽の中を泳ぐように赤い金魚が風に揺れている。
その昼市をもう一度見つけることはなかった。
熱帯夜の夜半。
風鈴は部屋の中でエアコンの風を受けた。
それでも奏でるその音は、あの日の昼市を連れてくるように、夜の部屋を涼やかに通り過ぎた。
リリーンーー
寝苦しい夜を、赤い金魚が涼やかに通り過ぎる。
ガラスの中を自由に泳ぐように。
お読みいただいて、ありがとうございました。
本作はシロクマ文芸部さんの企画に参加しております。
