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🐾 保護猫エッセー①│私目線−朝のハプニングと、何もなかった一日への安堵

平日の朝、まだ外が暗い時間帯のことです。
いつも通り慌ただしく猫たちのごはんを用意し、トイレを掃除し、出勤の準備を進めていました。
時計を見ると、ちょうど五時半。
そろそろ家を出ようと、コートに手を伸ばしたその瞬間でした。

――ポトッ

コートを掛けていたフックが、壁から抜け落ちました。
次の瞬間、視界から消えたそれに、胸がひやりとします。
針の付いた金具。床に落ちたなら、すぐに拾わなければいけない。
そう思って探しましたが、どこにも見当たりません。

時間だけが過ぎていきます。
十分ほど探しても見つからず、いったん諦めて家を出ました。
けれど駅まで歩いても、頭の中からフックの存在が離れません。
ホームに立ち、電車が入ってきても、どうしても乗る気になれず、結局そのまま家へ引き返しました。

再び探し始めましたが、やはり見つからない。
やむなく家族に後を託し、会社へ向かいます。
サナとキキは、いつも通りのんびりしながら、不思議そうにこちらを見ていました。
その視線が、余計に胸に残ります。

仕事中も、気持ちはどこか落ち着きません。
「もし、あれを口にしていたら」
考えないようにしても、思考は何度もそこへ戻ってしまいます。

夕方、ほとんど駆け足で帰宅しました。
着替えることも忘れ、すぐに探し始めます。
部屋には静かに「G線上のアリア」が流れていました。
私の焦りとは無関係に、音楽だけが淡々と時間を刻んでいます。

そして数十分後。
見つかったフックは、別のコートの裾に、しっかりと刺さっていました。

その瞬間、体の奥に溜まっていたものが、すっと抜けていきました。
「見つかってよかった」
「何も起きなくてよかった」
サナとキキにも、何度も謝りました。

静かなクラシックが流れる部屋で、時間はようやく“いつも通り”に戻りました。
特別なことは何もなかった一日。
でも、その普通が、こんなにもありがたいと感じた日は久しぶりでした。


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