1日だけのお菓子屋
せりふ三題噺の企画参加作品
まえがき
ハロウィンの夜、子どもたちは仮装して家々を巡る。
「トリック・オア・トリート」と声を弾ませる一方で、そこには小さな危険と奇跡が潜んでいるかもしれません。
これは、リンダという少女が出会った一夜の物語です。
本文
今日はハロウィン。リンダは、おばあちゃんに作ってもらった服を着て、家々を回る。
「トリック・オア・トリート。キャンディくれなきゃ、魔女が暗闇に連れていっちゃうよ」──
そう言って、キャンディやお菓子がリンダのバッグにたくさん入っていきました。
途中、リンダは「一日だけのお菓子屋」に寄り道しました。
店先には見たことのないお菓子が並び、主人はにこりと笑いました。
「トリック・オア・トリート。キャンディをあげるから、チョコレートと交換してくれない?」
主人は交換に応じ、さらに言いました。
「他にも、交換してあげるよ」
リンダはふと口を開きました。
「おばあちゃんの悪い病気を交換してほしいの」
主人は少し考えてから答えました。
「お嬢ちゃんの命を少し分けてくれたら、交換してもいいよ」
リンダは驚きました。
「私の命を分けるのね。そうしたら、おばあちゃんの病気はなくなるの?」
「ええ」
リンダは答えました。
「私、そうするわ」
そして、一日だけのお菓子屋の主人は、リンダの“生気の一部”を受け取った。
その瞬間、空気が少しだけ冷たく震えたように感じた。
ちょうどそのとき、店の扉が勢いよく開いた。おばあちゃんが入ってきたのだ。
「悪魔の使いの魔女め、私の大事な孫の命を奪うなんて許せない」
おばあちゃんは腕に力を込め、持っていた杖を振りかざしました。
「封印したはずなのに、ハロウィンに合わせて誘惑するとは」
杖の一振りで、主人は小さな瓶の中に閉じ込められました。
リンダの生気は、静かに戻っていく。
もしおばあちゃんがもう少し遅かったら、リンダはこの世にいなかったかもしれない。
その夜、街にはいつもの賑わいが戻ったけれど、誰も気づかない小さな戦いが起きていました。
「一日だけのお菓子屋」には、二度と近づかないでと、おばあちゃんは言いました。

あとがき
子どもは無邪気に願いを口にする。大人は、その願いの重さを知っている。
この物語は、願いと代償、そして守るということについての小さな寓話です。
「トリックオアトリート」と笑う夜に、誰かの覚悟が静かに灯りますように。
※この物語はフィクションです。
せりふ三題噺のお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。
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