シーグラスの謎
せりふ三題噺の企画参加作品
「調べない方がいいよ。」
研究員にそう言われた。
そう言われると、余計に調べたくなるのが人間というものだ。
研究所に誰もいなくなった夜、僕は海辺で拾ったシーグラスを、合皮の手袋をはめて慎重に調べ始めた。
古びた雰囲気をまといながらも、半透明なのに光を通さない。不思議なシーグラスだった。
僕は、その謎に心を奪われていった。
夜遅く帰宅すると、母はいつものように夕食を温め直して待っていてくれた。
「自分でできるから、僕が帰るまで起きていなくていいよ。」
そう言うと、母は笑いながら頷いた。
けれど次の日も、そのまた次の日も、母は変わらず僕の帰りを待っていた。
休日になると、十歳下の弟が将棋を指そうと言ってくる。
昔は負けることなどなかったのに、いつの間にか弟の方が強くなっていた。
悔しいというより、成長した弟が誇らしかった。
シーグラスの研究は三か月続いた。
どこで作られたものなのか。
何の破片なのか。
どんな分析をしても、その正体だけは解明できなかった。
残された可能性は、一つ。
宇宙からやって来た物質かもしれない――そんな仮説だけが静かに残った。
今日も僕は、あのシーグラスを研究し続けている。
あの日、研究員が言った。
「調べない方がいいよ。」
あの言葉の意味は、まだわからない。

せりふ三題噺のお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。
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