ルミナリア王国物語
🍊第65回 3つのお題(ファンタジー)
🎈お題①:「虹を渡れないユニコーン」
🐾お題②:「魔法使いになった野良猫」
⏳お題③:「手紙を届けるフクロウ」
お題④イラストから空想した世界を書いて下さい。
ルミナリア王国は、七色の虹に守られた美しい国として栄えていました。
しかし、その美しい国をわが物にしようとする闇の魔術師が、少しずつ王国へ近づいていました。
闇の魔術師は、まず空に架かる虹を壊しました。
虹を渡って王国へやってくる正義の使者、ユニコーンを封じるためです。

やがて街には戦争の気配が濃くなり、人々は家に閉じこもりました。
いつも賑やかだった通りから笑い声が消え、王国は静まり返っていました。
そんな街へ、一匹の薄汚れた野良猫がやってきました。
「なんだって最近は食べ物が落ちてないんだ。もう何日も食べてない。このままだと、あの世とやらへ行っちまうな、きっと」
その時です。
バサバサバサ――。
一羽のフクロウが、猫の頭上を飛んでいきました。
くちばしには、一通の手紙をくわえています。
「ずいぶん忙しそうだね。なんか食べるものはないかい?」
「あたしゃ忙しいんだよ」
「そんなに急いで、どこへ行くの?」
「お城だよ」
猫の耳がぴくりと動きました。
「お城? お城には食べ物があるかい?」
「あるんじゃないかい」
「だったら、おいらも連れていっておくれよ」
「あたしゃ忙しいって言っただろ」
「一緒に飛んでいけば、何かの役に立つかもしれないぜ」
フクロウは少し考えました。
「そうさな。使いを頼まれたら、あんたにやってもらえばいい。ほら、つかまりな」
猫はフクロウの足にしがみつきました。

「落とすなよ!」
「だったら、しっかりつかまってな!」
二匹は空高く舞い上がりました。
ところが、お城に近づくにつれて黒い煙が見えてきました。
城下では火の手が上がり、多くの人々が逃げ惑っています。
「こりゃ、飯どころじゃなさそうだな……」
フクロウは城の一番高い塔へ飛びました。
「王様! あの方からのお手紙でございます」
「おお、待っていた!」
王様は急いで手紙を開きました。
しかし、読み進めるうちに、その顔が曇っていきます。
「援軍が到着するまで、急いでも丸二日か……。この城は、それまで持たない」
王様は大きなため息をつきました。
すると猫が言いました。
「そんなに簡単に諦めるのかい?」
「なんだ、この薄汚い猫は」
「まぁ、いろいろありまして、一緒に連れてきました」
フクロウが答えます。
猫は王様の前にちょこんと座りました。
「王様、おいらを魔法使いにしてくんないかな」
「魔法使い?」
「そうさ。魔法使いになったら、敵なんか全部片づけてやるよ」
「どうやって魔法使いになるのだ?」
「そんなこと、おいらが知るわけないだろ」
「…………」
「ただし、お腹いっぱい食べさせてくれたら働くよ」
王様は呆れましたが、もう他に手はありません。
猫の前に魚や肉が運ばれました。
「うまい! 城ってところは最高だな!」
腹いっぱいになった猫は、ごろんと横になりました。
「おい! 働くと言ったではないか!」
「わかってるよ」
猫は起き上がると、フクロウをじっと見つめました。
「フクロウさん。おいらに魔術をかけてくれないか。思いっきり強力なやつをね」
王様が目を丸くしました。
「何を言っている。フクロウにそんなことが――」
その瞬間。
フクロウが、くるりと宙を舞いました。
眩しい光が塔を包みます。
光が消えた時、そこには杖を持った魔法使いが立っていました。
「あんた……あたしが魔法使いだって、なんでわかったんだい?」
猫はにやりと笑いました。
「それはね。僕に気づいたからさ」
「どういうことだ?」
王様が尋ねます。
「このフクロウには、おいらの中にある魔法の光が見えていたんだよ。だから、誰も見向きもしない野良猫を城まで連れてきた」
猫自身にも、その時まで分かっていませんでした。
かつてルミナリア王国には、「虹の守り人」と呼ばれる魔法使いがいました。
しかし闇の魔術師との戦いに敗れ、魔力と記憶を奪われ、一匹の猫の姿に変えられてしまったのです。
その猫こそ――この野良猫でした。
「さあ、時間がないよ」
フクロウの魔法が猫を包みます。

薄汚れた毛が光り、猫の首には小さなマントが現れました。
頭には、とんがり帽子。
「おお! なんか強そうじゃないか!」
猫はさっそく城の外へ向かって杖を振りました。
「くらえ!」
眩しい光が闇の軍勢へ飛んでいきます。
しかし――。
何も起こりません。
「ありゃ?」
フクロウが言いました。
「敵を倒すだけじゃ、この国は救えないよ」
「どういうことだい?」
王様は、もう一度手紙を見ました。
そして、最後に書かれていた言葉に気づきました。
『虹は、外から救うことはできない。
ルミナリアの民が、もう一度空を見上げた時、虹は蘇る』
この国の虹は、ただの虹ではありませんでした。
七つの色には、
勇気。
希望。
優しさ。
信頼。
愛。
夢。
そして未来。
人々の心が宿っていたのです。
闇の魔術師が本当に壊したかったのは、虹ではありません。
人々の希望だったのです。
「だったら簡単じゃないか」
猫が言いました。
「もう一度、みんなに空を見てもらえばいい」
王様は城中の鐘を鳴らしました。
カーン。
カーン。
カーン――。
家の中に隠れていた人々が、恐る恐る外へ出てきます。
「空を見よ!」
王様の声が響きました。
「この国は、まだ終わってはいない!」
一人が空を見上げました。
また一人。
そして、また一人。
すると――。
空に赤い光が現れました。
橙。
黄。
緑。
青。
藍。
紫。
七つの光が少しずつつながっていきます。
「虹だ!」
誰かが叫びました。
壊れていた虹が、再び空に架かったのです。
その時――。
虹の向こうから、白い影が現れました。
パカラッ。
パカラッ。
パカラッ――。
「ユニコーンだ!」
虹を渡れず閉じ込められていた正義の使者、ユニコーンが七色の光の上を駆けてきます。
「今だよ!」
フクロウが空高く舞い上がります。
ユニコーンの角が輝きました。
猫が杖を振り上げます。
「ルミナリアから、とっとと出ていきな!」
三つの光が一つになり、闇の魔術師を包みました。
黒い雲が消えていきます。
そして――。
ルミナリア王国の空に、青空が戻りました。
数日後。
王様は猫を呼びました。
「お前はこの国を救った英雄だ。望むものを何でも与えよう」
猫はしばらく考えて答えました。
「だったら、腹いっぱい飯を食わせてくれ」
「それだけか?」
「それだけさ」
王様は笑いました。
「では、我が国の宮廷魔法使いにならぬか?」
ところが翌朝。
猫の姿は、どこにもありませんでした。
窓辺には一枚の紙だけが残されていました。
『野良猫は、野良猫らしく生きるのさ』
そのころ――。
街の片隅を、一匹の猫がのんびり歩いていました。
「今日は魚でも落ちてないかなぁ」
その頭上をフクロウが飛んでいきます。
「おーい! また手伝っておくれよ!」
猫は空を見上げました。
「飯つきなら考えてやるよ!」
空には、大きな七色の虹。
その虹の上を、白いユニコーンが駆けていました。
――おしまい。
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