あの日の記憶
🍊第48回 3つのお題(昭和ノスタルジー)
🎈お題①:「夕焼け色のラムネ」
🐾お題②:「あの日の駄菓子屋」
⏳お題③:「古びた映画館」
お題④イラストから空想した世界を書いて下さい。
まえがき
ふとした時に、昔の景色を思い出すことがあります。
夕焼けに染まる帰り道。
ラムネの瓶。
駄菓子屋のおばちゃんの笑顔。
懐かしい思い出は、いつもきれいなものばかりではありません。
さみしかったことや、心の奥にしまっていた感情まで、一緒に連れて帰ってくることがあります。
これは、そんな「あの日の記憶」のお話です。
あの日の記憶
私の住んでいた町は、人口も減り、帰省するたびに、さびれていくのがわかるようになっていた。
商店街はシャッターが閉まり、子どもたちの声も少ない。
そんな町を歩いていると、ふと、昔のことを思い出した。
友だちと古びた映画館へ映画を観に行った日のことを。

何の映画だっただろう――。
そう思い出して、私は少し笑った。
「愛と誠」
恋とは、とんと縁のなかった私は、その映画にすっかり心をわしづかみにされた。
映画館を出ると、外は夕焼け色に染まっていた。
おこづかいで買ったラムネの瓶が、夕陽を映してきらきらと輝いていた。
「夕焼け色のラムネやね。」
私がそう言うと、友だちが笑った。
「うわ、キザやね。でも、ええネーミングや。」
二人で笑いながら、家までの道を歩いた。
帰省した時、私は小学校の近くにあった駄菓子屋へ行ってみた。
けれど、そこにはもう新しい家が建っていて、駄菓子屋の面影はどこにもなかった。
あの日の駄菓子屋で、私は小さなぜいたくを味わっていた。
十円でくじを引く。
でも、当たった記憶はほとんどない。
それでも、おばちゃんは、
「はい、これ持って帰り。」
と、お菓子を一つおまけしてくれた。

えびせんべいをぽりぽり食べながら、私は家へ帰った。
けれど、帰っても誰もいなかった。
兄たちはアルバイト。
父も母も、朝早くから夜遅くまで働いていた。
私は、さみしさを紛らわせるように、一人でままごとをして遊んでいた。
空想の世界の中だけは、いつもにぎやかだった。
そして今、その家も老朽化で取り壊されるらしい。
「あまり、いい思い出はなかったな……。」
そうつぶやきながら、私は夕焼け色の空を見上げた。
あの日、ラムネが染まっていた空と、同じ色だった。

あとがき
懐かしい場所へ帰ると、忘れていた感情まで一緒によみがえることがあります。
楽しかったこと。
さみしかったこと。
誰にも言えなかった気持ち。
けれど、どんな記憶の中にも、小さな灯りのような優しさが残っているのかもしれません。
夕焼け色のラムネ。
駄菓子屋のおばちゃん。
古びた映画館。
それらは今も、心のどこかで静かに輝いている気がします。
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