月を拾ったねこ
🍊第48回 3つのお題(日本むかし話)
🎈お題①:「月を拾ったねこ」
🐾お題②:「ほたる橋の約束」
⏳お題③:「龍神さまの忘れ傘」
お題④イラストから空想した世界を書いて下さい。
まえがき
昔話には、不思議な出来事や、優しい生きものがよく登場します。
けれど、本当に不思議なのは、人の心なのかもしれません。
誰かに会いたい。
誰かと話したい。
そんな気持ちは、人もねこも、龍神さまも同じなのです。
これは、月を拾ったねこと、少しさみしがり屋の龍神さまのお話です。
月を拾ったねこ
第1章 月を拾ったねこ
昔、昔、あるところに、月を拾ったねこが住んでおった。
そのねこは、光る月を大事そうに抱えて、いつも持ち歩いておったそうじゃ。
夜になると、月は一際明るく輝き、ねこのまわりを優しく照らした。
そのおかげで、ねこが訪れる村々では、
「ありがたいねえ。」
「今夜は明るいのう。」
と、とても大切にされた。
寝る場所にも困らず、温かいご飯を分けてもらい、ねこは気ままに旅を続けておった。

第2章 ほたる橋の約束
ある村に、「ほたる橋」と呼ばれる橋があった。
その橋で約束をすると、願いが叶うと言われておった。
若い男女はもちろん、願いを持つ人たちが、毎夜たくさん集まってきたそうじゃ。
けれど、橋は長い年月で古くなっておった。
ある夜――。
大勢の人を支えきれず、橋はとうとう崩れてしまった。
それからというもの、ほたる橋へ来る人はいなくなり、ほたるの光だけが静かに飛び交っていたそうじゃ。
その話を聞いた月を拾ったねこは、
「もう一度、橋を作れないものかな。」
と思い、山奥に住む龍神さまを訪ねることにした。
第3章 龍神さまの忘れ傘

龍神さまは、深い森の奥に住んでおった。
月を拾ったねこは、ぺこりと頭を下げた。
「龍神さま、どうか、ほたる橋をもう一度作ってください。」
すると龍神さまは、長いひげをなでながら言った。
「わしの大切な傘を探してくれたら、願いをかなえてやろう。」
「わかりました!」
月を拾ったねこは、月の光を頼りに森じゅうを探し回った。
「この傘ですか?」
「ちがうのう。もっと、きらきらした傘じゃ。」
また探した。
「これですか?」
「うーむ、ただの傘じゃな。」
何度も何度も探したが、龍神さまは首を横に振るばかり。
とうとう、月を拾ったねこは腹を立てた。
「だいたい、本当にあるんですか?龍神さまなら、自分で探せるでしょう!もういいです。お願いなんてしません!」
ぷんぷん怒りながら帰ろうとすると、龍神さまは寂しそうに笑った。
「そう怒るでない。わしは、誰かに相手をしてほしかっただけじゃ。」
「え?」
「昔は、みんな“龍神さま、龍神さま”と言って頼みごとをしに来た。じゃが今は、水を飲みに来る動物しか来ん。」
その言葉を聞いて、月を拾ったねこは、少し申し訳ない気持ちになった。
「じゃあ……ほたる橋は作ってくれるんですね?」
「もう、できておるわい。」
「えっ?」
驚いて山の下を見ると、ほたる橋が月明かりの中で静かに輝いておった。
月を拾ったねこは、照れくさそうに笑った。
「じゃあ、僕が龍神さまの話し相手になります。」
龍神さまは嬉しそうに目を細めた。
「おお、そうか。わしの話は、よくすべるらしいがええか?」
すると、月を拾ったねこは言った。
「はい。よくすべるように、橋みたいにぴかぴかに磨いておきます。」
龍神さまは、大笑いしたそうじゃ。
その夜、月を拾ったねこがほたる橋へ行くと、橋の上には愛を約束する若い二人の姿があった。
ほたるがふわふわと飛び交い、月の光が優しく橋を照らしておった。

月を拾ったねこは、龍神さまの好物の月見団子を持って、すたこらさっさと山へ向かっていったそうじゃ。
おしまい。
あとがき
人は、お願いを叶えてくれる存在を求めます。
けれど、本当に大切なのは、願いを叶えることよりも、誰かと心を通わせることなのかもしれません。
月を拾ったねこは、橋だけではなく、龍神さまの心にも灯りをともしたのでしょう。
今夜、空を見上げたら、どこかで月を抱えたねこが歩いているかもしれませんね。
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