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雪の降り積もる夜に

せりふ三題噺の企画参加作品

まえがき

仕事に追われる夜。
「今日はここまでにしよう」と自分に言い聞かせても、
心も身体も、なかなか休んでくれないことがあります。

そんな雪の夜に、
もしも――
小さな訪問者がやってきたら。

これは、
疲れた心が、少しだけほどけた夜の物語です。


雪が積もる夜に

「今日はここまでにしよう」

私は、つぶやくように言った。
会社の仕事は山積みで、とても今夜では終わりそうにない。

帰り道、コンビニに立ち寄り、うどんとおにぎりを買った。
外に出ると、雪が静かに肩へ落ちてくる。
これは、まだしばらく降り続きそうだ。

雪が積もり始めた道路を踏みしめながら、アパートへ向かう。
ようやく辿り着いた玄関の横には、頼んでいた荷物が置き配されていた。

それを抱えて部屋に入ると、
ぶるっと身体が震えた。
外と、あまり変わらない寒さだ。

――このアパート、隙間風だらけやわ。
さすがに暖房を入れないと、風邪をひいてしまいそうだ。

遅い晩ごはんを済ませ、深夜番組をぼんやり眺めていると、
突然、窓をたたく音がした。

風の音かな。
そう思いながらベランダを開けると、
白いものが、ひょいと部屋に入ってきた。

「寒かった。今夜はおじゃまさせてもらってええか」

私は、目がてんになった。
どう見ても、雪うさぎにしか見えない。
それに……しゃべっている。

疲れてるんや。
きっと、幻想が見えてるんや。
そう思った。

「幻想、思てるやろ。ほんまもんやで」

……うそ。マジ?

「あの、なんでうちへ来られたんですか?」
「かしこまらんでええ。この家、灯りがついてたから。それだけや。
なぁ、なんか食べるもんないか」

え、そうなんですか。

私は冷凍室から肉まんを取り出し、温めて差し出した。
こないなもん、食べる?

雪うさぎは、ねこ舌なのか、
ふーふー言いながら、ゆっくりかじる。
その様子がおかしくて、思わず吹き出してしまった。

「ほら、やっと笑ったな。
あんさん、笑顔、もう何日も忘れとったやろ」

雪うさぎは、続ける。

「笑顔はな、自分だけのもんやないで」

「この肉まん、最高やな。
……もう一個、もらえるか」

私は、その夜のことを、きっと忘れない。

雪が積もる夜に――。

イラスト:ChatGPT

あとがき

忙しい毎日の中で、
「今日はここまでにしよう」と言えることは、
怠けることではなく、
自分を大切にするための合図なのかもしれません。

もし今夜、
心に雪が積もっている方がいたら、
この物語が、
少しでもあたたかい灯りになりますように。

読んでくださって、ありがとうございました。
※この物語はフィクションです。

せりふ三題噺のお題に書かせて頂きました。
お題をありがとうございます。


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