旅なんて、やっぱり向いてない_4
この記事はマスクドnote企画投稿作品です。
【ゆきのしたチーム 4 エッセイ】

「旅はいいよ〜人生が変わるよ」って言う人、ほんとに別の世界線の住人だと思う。私は、旅があんまり好きじゃない。というか、向いてない。
まず、知らない土地に行くのがしんどい。駅の改札を出た瞬間、もう帰りたくなる。Googleマップを開いたら北も南もわからんし、人の流れに乗ったら逆走してる。
「旅先の偶然を楽しもう」とか言うけど、私は偶然に弱い。というか、予想外に脆いタイプ。
壮大な自然を見ても、「うわ〜すごいね〜(帰りたい)」ってなる。富士山よりも、自販機の前で買った麦茶の安心感のほうが勝つ。旅って、私の人間バグをこれでもかと露呈させてくるんだよね。
荷造りの時点でまず敗北。靴下を何足持っていけばいいかわからず、「念のため」を連呼してスーツケースが閉まらん。もしもに備えすぎて、たぶん災害対策用の荷物になってる。で、旅先では結局ほとんど使わない。いつも通りの服を着て、いつも通りに疲れる。
帰ってきたらもっと地獄。洗濯物の山。おみやげ袋の山。スーツケースのすき間から、謎の砂。「非日常」ってやつの残骸が、現実にバラまかれてる感じ。
その光景を見ながら思う。
「旅なんて、やっぱりしなきゃよかった」って。
……でも、数日たつとね。思い出すんだよ。新幹線で食べたおにぎりの味とか、知らない街角で見た夕日の色とか。道を聞いたおじさんの「気をつけてね」の声とか。
あのときは何も感じなかったのに、時間がたつとじわじわ来る。これが旅のズルさ。失敗も面倒も、あとで「味」になる。
たぶん、旅って「自分のポンコツを許す儀式」なんだと思う。
道に迷っても、荷造りに失敗しても、全部「ハプニング」で済む。
日常だったらただの不器用なのに、旅先ではそれがエピソードになる。
お得だよね、人間って。
スーツケースの砂を見つけてまた思う。「もう旅なんてしない」でも、少ししてこうも思う。「……次は、どこ行こうかな」って。
ほんと、懲りない。
人生、だいたいこのループでできてる気がする。
▼本日のピリスタチームの覆面作家の作品はこちら
▼他の覆面作家の作品はこちらから
いいなと思ったら応援しよう!
本田すのうは皆様からのご支援で活動を続けています。