旅の主人公はいつだって_6
この記事はマスクドnote企画投稿作品です。
【ゆきのしたチーム 6 エッセイ】

朝の涼しい風が吹く日に出発しよう。
使い古したベージュのリュック。
そこに食べ物と着替えと、夢と希望を詰め込んで。
あわよくば。
相棒のポケモンに、特殊能力、忍術もあればなお良し。
……そんな気持ちだけはいつでもあった。
アニメや漫画の主人公たちは、旅を経て大きく強くなっていく。旅には出会いと別れがあり、時に涙しながらも、大切なものを彼らは見つけ出す。
ああ。かっこいいなぁ。
小学生の私は、よく自分が旅に出る妄想をした。
強敵が出たって、負けないよ。
たくさんの仲間も見つけ出して。
旅の果てには、たくさんのものを手に入れて。
またここに帰ってくるよ。
……っていう所までしっかりと妄想する。
「……え、ついて行かないと、ダメ?」
実際の私は。
かかりつけの歯医者も怖くて、診察室まで母を連れ立っていかないとダメな小心者。
「ついてきて」と口にしたときの母の呆れ顔から、ああ、普通はもう、ひとりで行けるものなのか、と気づいた。
それでも私は、ずっと「主人公」になりたかった。
苦難の旅を乗り越えて強くなっていく、物語の主人公でありたかった。
大人になって。
あの頃夢中だった主人公たちの旅に思いを馳せる。
「サトシ……こんなに立派になって……」
「ルフィ……ほんとにもう、ムリしないで……」
「ナルト……強くなったなあ……」
ついつい、親目線で見つめてしまう物語。
私はかつては、その物語の主人公になりたがったのに。
今やすっかり、「傍観者」になってしまったんだろうか?
───ううん。
きっと、違う。
私は、「私」の物語の主人公だ。
それに気がついたのだ。
私が大人になるまで。
確執があった。
別れがあった。
出会いもあった。
学びがあった。
弱さを認めた。
強くもなった。
相棒を見つけた。
命もかけた。
守るべきものを、見つけた。
苦難があった。
得るものもあった。
つまりこの人生は、いつか思い描いていた、旅なのだ。
私はまだ、この人生の旅の途中。
この旅路の果てに、いったい何があるのだろう?
それは、誰にもわからない。
だからこそ面白い。
誰もが人生という旅路の途中。
それにきっと、私もあなたも気がついている。
そうでしょう?
「私」という物語の主人公として、私もあなたも、見えない先の未来に向かって歩いている。
生きている。
それは旅である。
主人公が操られるだけの時代は終わりだ。
さあ。
あなたの物語を、今ここから。
いっしょに初めよう。
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