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ドイツ語の名文をオリジナルで読むための、硬派な参考書「ラブ&ピース」

2025年5月新刊『ラブ&ピース ドイツ語を原文で読む』の「はじめに」と収録内容の一部を紹介します。


はじめに

 本書は詳しい解説付きの独和対訳本です。想定されている読者は、基本文法をひととおり学んだ方、大学に入ってドイツ語を勉強し始めた学生であれば二年生以上の方で、さらに勉強を続けてドイツ語の本を自由に読めるようになりたい、と思っている方です。
 こういう形式の語学学習書は珍しくないですが、本書の特徴はテキストのラインナップです。

 本書で読むテキストは、特定の一冊の書物の全体あるいは抜粋ではなく、時代、ジャンル、テーマに即して集められた、あるいは書き下ろされたものでもなく、また、文法事項別の重点学習を促そうとするわけでも、難易度順に並べてあるわけでもありません。そうではなく、どうせドイツ語を勉強するなら、有名なものを中心に、カッコよく、素敵で、味わい深く、読み応えのあるテキストをいろいろ読んで、ドイツ語圏の知的伝統の一端に触れつつ、ついでに現代社会と人生について考えるためのヒントを手に入れられたら、楽しいし「お得」なのではないだろうか、という発想で構成されているのです。

 ちょっと大げさに言うと、他者との出会いや関わりを恐れず、同胞たる人類に対する愛にあふれ、隣人や遠く離れた見知らぬ人々の苦しみや悲しみに想いをめぐらせ、さまざまな困難にもかかわらず絶望せずに、生きることそのものの喜びとすばらしさを信じ、よりよい未来を希求する批判的精神、それが本書で取り上げる文章の共通点です。だから「ラブ&ピース」なのです。

 本書は、編著者である私の授業を模しています。思えばかれこれ四半世紀の長きにわたって、私は、大学二年生以上向けの「ドイツ語を読む」授業を担当してきました。本書では、その経験をふり返りながら、授業であればここをこう説明するだろう、という内容を註としています。また、訳文は、こなれた「名訳」を目指さず、なるべく原文を復元しやすい、原文との対応関係をたどりやすい直訳を心がけました。ドイツ語読解力養成中のみなさんには、きっと役に立つと思います。

 大学でドイツ語を学び、その後も長い間ドイツ語と関わるうちに、いつの間にか私のなかには「ドイツ語の世界」ができていました。たまたま私の場合はドイツ語が「飯のタネ」でもあるわけですが、また、読者のみなさんのなかにも、将来ドイツ語を仕事で使うようになる方もたくさんあるでしょうけれども、この「ドイツ語の世界」は、それとは別の次元で、なかば自分の内部にあり、外部に通じてもいる、自分だけのもうひとつの世界です。ときにはつらい現実から逃げ込む場にもなり、日常から解放されてくつろげる場にもなります。私は日本語母語話者であり、もっとも自由が利き、愛着のある言葉は日本語ですが、それとはまったく異なった「ドイツ語の世界」に遊ぶことの、かけがえのない喜びと楽しみもまた、実感しています。
読者のみなさんにも、それぞれの「ドイツ語の世界」を育て、広げて、より自由に、より心豊かに生きて欲しいと思います。
本書がその助けとなってくれることを願います。

 本書の企画、出版にあたっては、三修社の永尾真理さんに何から何までお世話になりました。心から御礼申し上げたいと思います。

2025 年春
杵渕博樹


ドイツ語の名文をオリジナルで読むための、硬派な参考書です。初級文法の知識があれば読み進めることができます。

本書は15章構成で、各章の冒頭には、作者や作品の紹介、文学的・社会的・歴史的背景を解説。読解のポイントをつかんでから原文に挑めます。左ページにドイツ語の原文、右ページに文法解説や語句の意味、直訳に近い日本語訳を収録し、読者が自分に合った方法で読み進められる設計です。

各章の冒頭には、作者や作品の紹介、文学的・社会的・歴史的背景を解説
見開きで原文と、解説・日本語訳を掲載

目次

はじめに
読解のための文法

Kapitel 1
»Und als ich aufsah, schwand sie schon im Wind«

見上げたときには、もう風に消えていた
Gedichte von Bertolt Brecht
ブレヒトの詩

Kapitel 2
»Das, was wir den Fortschritt nennen, ist dieser Sturm.«

われわれが進歩と呼んでいるもの、それがこの暴風だ
Aus: Über den Begriff der Geschichte (1940)
von Walter Benjamin
ヴァルター・ベンヤミン『歴史の概念について(歴史哲学テーゼ)』

Kapitel 3
»... hat das Grundgesetz Wirklichkeit geschaffen durch die Kraft des Wortes«

「基本法は言葉の力で現実を創り出したのです」
Aus: Rede zur Feierstunde „65 Jahre Grundgesetz“ im Deutschen Bundestag (2014)
von Navid Kermani
ナヴィド・ケルマニ「連邦議会ドイツ基本法65周年記念講演」

Kapitel 4
»Der rechte Ring war nicht erweislich«

「どれが本物の指輪かは証明できませんでした」
Aus: Nathan der Weise (1779)
von Gotthold Ephraim Lessing
レッシング『賢人ナータン』

Kapitel 5
»Habe Mut, dich deines eigenen Verstandes zu bedienen!«

「自らの悟性を使う勇気を持て!」
Aus: Beantwortung der Fragen: Was ist Aufklärung? (1784)
von Immanuel Kant
カント『啓蒙とは何か』

Kapitel 6
»Die Geschichte aller bisherigen Gesellschaft ist die Geschichte von Klassenkämpfen.«

これまでのすべての社会の歴史は階級闘争の歴史だ
Aus: Manifest der Kommunistischen Partei (1948)
von Karl Marx und Friedrich Engels
マルクス/エンゲルス『共産党宣言』

Kapitel 7
»… es kommt aber darauf an, sie zu verändern.«

それを変えることこそが肝心だ
Aus: Thesen über Feuerbach und Die deutsche Ideologie
von Karl Marx und Friedrich Engels
マルクス/エンゲルス
『フォイエルバッハについてのテーゼ』『ドイツ・イデオロギー』

Kapitel 8
»Einer von uns allerdings zögerte«

ただ、ぼくらのうちで一人だけ、ためらうやつがいた
Aus: Im Westen nichts Neues (1929)
von Erich Maria Remarque
レマルク『西部戦線異常なし』

Kapitel 9
Aber etwas mehr Wahrhaftigkeit und Aufrichtigkeit …

しかしもう少しの誠実さと率直さがあれば…
Aus: Zeitgemäßes über Krieg und Tod (1915)
von Sigmund Freud
フロイト『戦争と死についての時評』

Kapitel 10
»Wir tun sowas nicht.«

「私たちはそういうことはしません」
Aus: Beim Häuten der Zwiebel (2006)
von Günter Grass
ギュンター・グラス『玉ねぎの皮をむきながら』

Kapitel 11
»Also sind wir ihnen ziemlich viel schuldig.«

だからわれわれは彼らに対し相当に多額の借りがあるのです
Aus: Lastenausgleich
von Günter Grass
(Rede auf dem Parteitag der SPD in Berlin, 18.12.1989)
ギュンター・グラス『負担の清算』(ドイツ社会民主党1989年12月18日ベルリン党大会講演)

Kapitel 12
»Noch eine Möglichkeit für Trauer?«

「まだ哀悼の可能性はあるか」
Aus: Die Unfähigkeit zu trauern (1967)
von Alexander und Margarete Mitscherlich
A&M・ミッチャーリヒ『喪われた悲哀』

Kapitel 13
»... dann ist Widerstand ebenso sehr von unserer Natur«

ならば反抗することだって同じくらいにわれわれの性質だ
Aus: Die Welt der Maschine (1977)
von Nicolas Born
ニコラス・ボルン『機械の世界』

Kapitel 14
»Das technokratische Bewußtsein«

テクノクラシー的意識
Aus: Technik und Wissenschaft als ›Ideologie‹ (1968)
von Jürgen Habermas
ハーバーマス『〈イデオロギー〉としての科学と技術』

Kapitel 15
»Deutschlands Energiewende«

ドイツのエネルギー転換
Aus: Deutschlands Energiewende – Ein Gemeinschaftswerk für die Zukunft
von Ethikkommission für eine sichere Energieversorgung (2011)
「ドイツのエネルギー転換――未来のための共同作業」安全なエネルギー供給のための倫理委員会報告


書誌情報

書名 ラブ&ピース ドイツ語を原文で読む
著者名 杵渕博樹
A5判並製196ページ ISBN978-4-384-06041-6 C1084
初版年月日2025/05/30
定価2,860円 (本体 2,600円+税)



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