「計算が速い」は、小4以降なんの保証にもなりません|最難関中に進んだ私が、低学年で見ていた3つのサイン【序】
はじめまして。
私は、いま自分の子を通わせているとある幼児教室(算数教室)の、元・生徒です。
通っていたのは、30年ほど前。年中頃から小学2年生までの3年ほどです。
まだマンションの一室でやっていた時代で、専用の学具すら存在しませんでした。 手作りの道具で教わっていたと聞いています。
その後、中学受験をして、関西では最難関と言われる中学に進みました。
そして今、自分の子に、同じことをさせています。
なぜ同じことをさせているのか。理由はひとつです。
子どもの教室をいくつも回ったうえで、ここの理念とやり方に、いちばん納得できたからでした。自分が通っていたからではありません。
この連載は、その記録です。
自分が受けた教育を、30年たってから、親の側から見直しているところです。
中学受験の算数は、小4から作るものだと思われています
塾に入るのが小4。そこから算数を鍛える。
これが標準的な理解だと思います。
ただ、私は自分の経験から、小4より前にすでに勝負がついている部分があると考えています。
そして、その「勝負」は、テストの点数には出ません。
出ないどころか、点数がいいせいで見落とされます。
今回は、その見落としを、いま家で確認する方法から書きます。
「計算が速い」は、判断材料になりません
計算ドリルが速い。100までの足し算も引き算もほとんど間違えない。学校のテストも取れている。
これを見ると、親は安心します。まわりからも「算数が得意なんだね」と言われる。
でも、計算は「数がわかっていなくても」解けます。
5+3なら、指を5本立てて、そこから3つ数え足せば8になる。
数を順番として覚えていれば、それで正解が出ます。低学年のうちは、これで十分に点が取れてしまう。
問題は、この解き方に上限があることです。
上限は、ここで来ます
紙に、こう書いてみてください。
234 + 156
これを、指で解けるでしょうか。
解けません。指は10本しかないからです。
つまり、指で数えるやり方は、どこかで必ず止まるやり方です。
そして止まるのは、たいてい小学校2年から3年のあたり。「急に算数ができなくなった」と言われる時期と、きれいに重なります。
中学受験でいえば、ちょうど塾に入る直前から、入った直後です。
低学年で見るべき、3つのサイン
いま家で確認できるものを3つ挙げます。
1. 指を使う。または、頭の中で1つずつ数えている
指が机の下に隠れているだけ、というパターンもあります。目線が動いていたら、たぶん数えています。
2. 数が大きくなると、急に崩れる
10までは完璧なのに、20を超えたあたりから間違いが増える。
これは「覚えた順番」の射程が切れた地点です。
3. 単位変換を、毎回ゼロから覚え直している
1m=100cm、1kg=1000g。
ここは丸暗記でもいけますが、少し形を変えられると崩れます。丸暗記でしのいでいるサインです。
この3つのうち1つでも当てはまるなら、計算の速さは実力を表していません。
もうひとつの症状——文章題で固まる
同じことが、別の形でも出ます。
「りんごが5こ ありました。3こ たべました」
ここまで読んで、顔を上げてこう聞く。
「これ、たすの? ひくの?」
これを読解力の問題だと考える方が多いと思います。国語をやらせよう、音読を増やそう、と。
違います。
文章題は、順番では解けません。
「食べた」が引き算だと分かるには、量が減っていくイメージが頭の中に要ります。りんごが5個ある、という状態が「5番目」ではなく「これくらいのかたまり」として見えていないと、たす・ひくの判断ができない。
計算が速いのに文章題で固まる、というのは、ちぐはぐな現象ではありません。
そもそも別の力だというだけです。
だから、文章題を練習させても直りません
文章題が苦手なら文章題を、3桁の計算が苦手なら3桁の計算を。
そう考えるのが自然です。
でも、私が受けた教育は、その逆をやっていました。
3桁が苦手な子には、3桁をやらせない。20までの数、100までの数に戻す。
親になってこれを聞いたとき、正直、腑に落ちませんでした。
できないところをやらせないで、どうやってできるようにするんだ、と。自分が受けていたはずなのに、中身は何も覚えていなかったわけです。
でも実際、自分の子で試すと、戻したほうが越えました。
順番が、逆でした
なぜそうなるのか。理由はひとつです。
問題集ができるようになったから力がついたのではなく、力がついたから問題集ができるようになる。
この順番でものを見るかどうかで、家でやることが正反対になります。
順番を「教材 → 能力」だと思っていると、できない単元をひたすら反復させることになる。
順番が「能力 → 教材」だと知っていると、できない単元から離れて、その手前の能力を育てにいくことになる。
私は自分がそう育てられたことを、大人になるまで知りませんでした。
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判定1〜4の手順(何を見るか、何を聞くか)
月1回の記録欄(当てはまった数を書いていくと、方向が合っているか分かります)
当てはまったときに「やること/やらないこと」
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この連載で書くこと
この記事も、次の記事も無料です。次回で、いま書いた「順番の逆転」を正面から扱います。連載全体の幹になる回で、以降の記事は全部そこから枝分かれしています。
そのあとは、
未就学のうちに、何をどの順番で積むのか
「教えない」で、どうやって数をわからせるのか
答えのない問題集で育った子どもが、実際どう感じていたのか(これは私にしか書けません)
教具に実際いくら払ったのか、元は取れたのか
中学受験の塾に入ったら、計算が遅い方だった。それでもどうなったか
中学受験の算数で差がつく「図形」と、幼児期の遊びがどうつながるのか
を、順番に書いていきます。
まず、今日やること
さっきの3つの判定を、実際にやってみてください。
指を使っていないか(目線が動いていないか)
20を超えたところで崩れないか
単位変換を丸暗記でしのいでいないか
ひとつでも当てはまったなら、読解力でも、やる気でも、練習量でもありません。
そして、いまならまだ、時間があります。
次回に続きます。
この連載は、全18本の予定です
いま出しているのは5本です。これから書くのは、たとえばこんな話です。
・筆算は、家で教えてはいけない——九九を教えていないのに、大きな数の掛け算を自分で解くまで
・計算ドリルを増やしても、暗算は速くならない——図形が計算の土台になる仕組み
・【全公開】未就学から幼児教室に払った総額——中学受験の塾代と比べて、元は取れるのか
・答えがついていないことに、気づいていませんでした——「教えない教育」を受けた側として(無料)
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