前編|ご隠居(仮)、全力で自転車をこぐ
この人を救急車に乗せていいのかどうか。
多分、何か分かんないけど、何か多分違う。気がする。
でも、電話の担当さん「救急車で行って下さい」って言ったし。
「朝方どうこうなっても困るので、お願いできますか?」
これは、昨年の話です。
既に、救急車に乗って30分以上が経過していました。
知ってます?救急車って、すぐに病院に行かないんですよ。
乗って、処置して、受け入れ病院を探して、OKが出たら出発。
すでに、深夜0時30分を過ぎておりました。
ことの発端はこうです。
寝ようと思って、2階に上がろうと思ったら、ご隠居(仮)が青い顔をして、
「脈が速い。ほら脈が速い。」
え?
階段のところで脈を触ったら、どこを全力疾走してきたんだってぐらい速い。
「いつものやつだな。」
「だね。ちょっと茶の間行こうか。」
ご隠居(仮)は、不整脈持ちです。
普段から3回打って、1回休んで。2回打って1回休んで。みたいな脈です。
この出来事の時点から遡って半年ぐらい前でしょうか、夜の11時を回ると、急に脈が速くなるということが月1回ペースで起きてまして。
血圧計で脈を計れるので、計ってみると
$${ \Huge \mathbf{180}}$$
はやぁっ!
いつも20分ぐらい経つとおさまるので、顔色と、様子見で時折話しかけながら、脈を見守ります。
「ダメだな。おさまらなねなぁ。・・・息苦しい。」
「だねぇ。」
脈は150程度まで下がったんですが、そこから40分以上経過しても脈が150~160の間を彷徨っているカンジ。
いわゆる「頻脈」です。
「どうする?救急車呼ぶ?」
この症状は、心房細動といい、不整脈の一種です。
心臓が小刻みに震えて、不規則に脈が速くなる現象です。
息苦しく、唇の色も悪いのですが、本人の意識もあるし、話すカンジもしっかりしてるし。
「一回、安心センターに訊こっか。」
救急車を呼ぶかどうか迷ったときに、電話で訊くことが出来る「救急安心センター事業」。
これ全国共通で$${ \huge \mathbf{#7119}}$$でつながります。
※少しつながるまで時間がかかりますが、担当者が優しくアドバイスをして下さいますので、落ち着いて答えてください。
で、そのアドバイスの答えが「今すぐ救急車で行って下さい。」とのこと。
もちろん本人の意識がはっきりしていること、自分の車で夜間救急へ行く選択肢は妥当かも尋ねましたが、心臓ということもあって「何があるか分からないので、救急車一択で。」と。
「救急車で行けって。」
「えぇぇぇぇ・・・じゃ、着替えるか。電話は待て。」
「いや、呼ぶよ。すぐ来るわけじゃないから。」
「めんどだなぁぁぁ」
そんなこと言われても(笑)。
渋々。
ご隠居(仮)は乗り気ではない様子。
でしょうね。
だって。着替えられるぐらいだから。
この時初めて。
人生初の救急車を呼ぶ。ですよ。
緊張しますねぇ。
ドキドキしながら「119」を押します。
ここは当たり前ですけど、すぐつながる。
訊かれることに淡々と答えて、症状を説明して、本人の状況も説明します。
「すぐ向かいます。」とのことで、電話を切って。
さすがに1時間以上も脈拍150以上は、隊員さんも驚いてました。
救急車って、呼んでもすぐ来ないイメージだったんですけど。
#7119で救急車を要請するよう言われたことを、伝えたのも良かったのか、それともたまたま空いていたのか。
5分ぐらいで、サイレンの音がし始めます。
なんで?って思ってます?
私、田舎の山の居住なんで。
救急車が出てくる音。
丸聞こえなんです(笑)。
夜中は特に山に反射するんでしょうね。
道路の距離で、2kmぐらいのところに、消防車両が止まっているところがあるんですけど。
出発したかどうか、すぐ分かるんです。
家族を起こして、状況を説明して。
急いで着替えて。
救急車のサイレンを確認して、ご隠居(仮)にもうすぐ来ることを伝えに、2階から降りて行くと、しっかりめに準備して、保険証も用意して。
あ、救急車に乗せるときには、本人の被保険者確認証、もしくはマイナンバーカード。あれば病院の診察券を。
あと、靴。ご本人様が担架で運ばれるときは、付き添って行かれるかた、靴、忘れずに。
絶対これ、救急車乗っていい人じゃないよね。
しっかり、靴もはいて。
玄関出て仁王立ちですよ(笑)。
一応、脈をとってみれば、速さは相変わらずですけども。
やってきた救急車に近寄って、元気よく手を挙げて。
これは違う。絶対、違う。
納得はいってないんですけど。
乗せろって言うから。
救急隊員さんに「御本人ですか?」って、ご隠居(仮)に聞いて、外にいた私にも「乗ってください」って。
ご隠居(仮)、ベッドに寝かされて、いろいろ聞かれながら、モニター用の電極?つけられて。
でも、相変わらず脈は150~160を行ったり来たり。
すぐ近くの病院を手配しようとしてましたが、「あそこはダメだ、医者がいない。」とご隠居(仮)が嫌がり。
まぁ、確かにそうです。
小さな田舎の病院は、担当医がいないと、得てして夜中に処置できることが限られることがあります。
そんなこんなで30分以上。
救急車で様子見して。
「どうします?〇〇病院聞いてみますよ?」
「朝方どうこうなっても困るので、お願いできますか?」
「いや、△△病院。そこならいい。」
ご隠居(仮)が、寝ながら元気に答えます。元気に。
ただ、さほど遠くはないですが、大きな病院ですから。受け入れしてくれるかどうかは分かりません。
隊員さんが「どうかな?」とつぶやきながら、連絡をしてみて、二つ返事だったそうなので。ようやく救急車が出発できるもよう。
よかった。
「付き添いのかた」
「おまえ、車でついてこい」
間髪おかずご隠居(仮)が私に言います。
「え?今日帰る気ですか?」と驚く隊員さん。
「これ。こいつ車なかったら帰りどうすんだね?」
「ですね。ではご家族のかた、車で」
「分かりました。」
私、晩酌しないので、こういうときは出番です。心得ております。
救急車を降りて、出てきていた家族に説明して。車に乗り込みます。
「ついていこうか?」って言うけど、自分で救急車とめるような状況なら、付き添いは私ひとりで十分です(笑)。
というわけで、病院まで無事向かうこととなります。
つづく
