第五章 結婚・出産「親も親なら子も子」
同居していた義父の連れ子二人からは、脱衣所や部屋を覗かれることがたびたびあった。
思春期にありがちなこととはいえ、不愉快極まりなかった。
やがて義父の父まで同居するようになり、義父が立ち上げた会社は倒産、家具まで差し押さえられた。
次々と押しかける借金取りへの対応を、義父と母は居留守を装い避け、その矢面に立たされるのはいつも私と妹だった。
そんな生活にほとほと嫌気がさし、当時交際していた相手との結婚を決めた。
22歳の春だった。
式は二人だけであげ、披露宴は夫の会社の事情で後日開くことになった。
しかし当日の朝、義父の顔に笑みはひとつもなかった。
それでも、心は開放感に満ちていた。
結婚後、夫の提案に驚かされたことがある。
性の不一致とはこういうことかと思いながら曖昧にやり過ごすうち、間もなく長女を身ごもった。
母は大層喜んでくれた。
姑もきっと喜んでくれるはずだと意気揚々と電話をかけると、返ってきたのは意外な第一声だった。
「どうすんの?」
空耳かと聞き返したが、その後のやりとりはショックのあまり記憶に残っていない。
その後出血し、流産の危機に陥って絶対安静を強いられたが、なんとか持ちこたえた。
無事出産を終え、年末に初孫を連れて夫の実家へ帰郷したが、わだかまりが消えるどころか、母乳が一ヶ月で出なくなったことを責め立てられた。
「母乳で育てんとどうするよ!」
「ミルクばっかりで!」
「だから若い時に産むとこうなる」
「わたしらは若くても周りの子を見て育てられた。あんたらとは違う」
「親も親なら子も子やね」
矢継ぎ早に浴びせてくる姑の言葉に、実の母まで否定されて返す言葉を失った。
隣でその一部始終を見ていた夫は、我関せずという態度だった。
周囲からは「人当たりのいい優しい旦那さん」と評されていた夫だが、この時はっきりと悟った。
優しさという仮面をかぶった人だと。
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