第四章 義理の父、そして初めての職場
父と妹との三人暮らしは、決して楽ではなかった。
朝は父と自分の弁当を作り、帰宅すれば夕飯の支度が待っている。
食費は月一万円でやりくりするよう義務づけられ、友達と遊ぶ余裕もなかった。
家事に明け暮れる日々で、唯一の楽しみは音楽鑑賞だった。
二度目の夏休みだっただろうか。
母の家に遊びに行くと、母は再婚相手が建てた新築の家で暮らしていた。
相手には男の子二人の連れ子がいる。
交通至便な高級住宅地に建つ広い家は居心地がよく、妹と二人、迷わず母のもとへ転がり込んだ。
父との折り合いが悪くなっていた時期でもあり、これはちょうどよい話だった。
最初は客間、やがて六畳ほどの納戸をもらい、それなりに満足していたが、その一方でずいぶん気を遣ってもいた。
冷蔵庫を開けるにも一言断り、廊下は音を立てぬようそっと歩く。
居候の身であるという意識が、そうした振る舞いを当然のものにしていた。
それでも、住まわせてもらえること、母の手料理が食べられることに、日々感謝していた。
居候生活も三年が過ぎ、高校を卒業、
この時進学する気持ちはあったが奨学金を受けることは恥だ、働けと父から言われ断念し就職した。
だが最初の職場ではパワハラとセクハラに遭い、わずか三ヶ月で退職。
その後、念願だった音楽関係の仕事に就いた。家庭では義父とも冗談を言い合えるようになり、日常は穏やかに流れていたが、ある日、事件が起きる。
自分で買った大きなステレオの上に財布を置き、少し席を外した隙に、それが消えていた。
母に伝えると義父の耳にも届いたが、返ってきた言葉は「置いておく方が悪い」だった。
犯人は同居していた義父の連れ子と判明したが、本人からも義父からも、謝罪の言葉は一切なかった。
この一件で、家庭の本当の姿が少しずつ見えてきた。
まもなく母は、連れ子たちの起こす問題で、幾度となく警察に足を運ぶことになる。
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