第九章 母の最期と介護の現場「泣いて笑って」
実母もまた、苦労の多い人生を歩んだ。
父と離婚後、男の子二人の連れ子を持つ男性と再婚したが、その息子たちの窃盗事件で何度も警察に足を運ぶことになった。
スナックを経営して売り上げは順調に伸びていたが、知人に権利書を持ち逃げされて閉店。
その後、再婚相手の浮気が本気になって強制的に離婚をさせられ、その相手は浮気相手にも捨てられた末、銀行強盗を起こして刑務所に入った。
こうした出来事が重なり、母は二度、自殺未遂を起こしている。
晩年は胃がんを患い、かなりの苦しみの末に他界した。
最期まで苦しい人生を歩んだ母だったが、入院中には忘れられないエピソードがある。
痛みを和らげるためのモルヒネの影響で幻覚症状が出て、意味不明な言葉を連発する時期があった。
そんな母を前に、妹と二人で大笑いしてみせたことがある。
最初は表情ひとつ変えなかった母だったが、見舞いに行くたびに笑いかけていると、あるとき一瞬だけニヤリとした。
それだけで、報われた気持ちになった。
少し前の話になるが私自身、三人の娘たちが手を離れた頃に旧・介護ヘルパー2級を取得し、働いたことがあった。
訪問介護や有料老人ホームでは多くを学んだ。
中でも気難しい利用者への対応には苦労したが、当時心理セラピストとして別の場でボランティアをしていた経験が役に立った。
やがて笑い合えるようになった利用者から指名をいただけるまでになった。
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