ラジオ体操は、毎日ではありません。
夏休みのラジオ体操は、毎日参加するものだろうか。
毎朝来る人もいる。
予定がある日は休む人もいる。
宇宙生命体博物館でも、この夏、一か月だけ開館前にラジオ体操が行われた。
展示生命体も、職員も、来館者も参加できる。
ミチオは、その夏に十九回参加した。
七月下旬。
農村展示区の掲示板に案内が貼られた。
夏季早朝ラジオ体操
午前六時四十五分開始
自由参加
参加者には飲み物が一本。
一定回数以上参加すると、最終日に記念品も出る。
ミチオは最後まで読んだ。
翌朝。
畑の土はまだ湿っていた。
急いで水をやる必要はない。
ミチオは道具を置き、広場へ向かった。
すでにミツバチ型ヒトの群れ個体や、早番の職員、ほかの展示生命体が集まっている。
音楽が流れた。
ミチオも腕を上げた。
数分で終わった。
帰りに麦茶を一本受け取った。
「毎回もらえるのですか」
「参加した日はもらえます」
「そうですか」
ミチオは麦茶を持って畑へ戻った。
翌朝。
午前六時四十五分。
広場では同じ音楽が流れていた。
ミチオはいなかった。
畑が乾いていたので、先に水をやっていた。
翌々日は参加した。
その次の日も参加した。
その次の日は参加しなかった。
ラジオ体操は毎朝あった。
ミチオは、毎朝は行かなかった。
八月。
早朝開館の日には、来館者も広場に入った。
宿泊施設から来た家族。
夏休み中の子ども。
展示生命体。
職員。
放送が流れる。
「身体構造に応じて、可能な範囲で参加してください」
二本の腕を上げる個体。
四本すべてを上げる個体。
身体を曲げる代わりに、全身を伸縮させる個体。
動きはばらばらだった。
その中で、ミツバチ型ヒトの群れだけはよく揃っていた。
ミチオの隣にいた子どもが言った。
「すごい。みんな一緒だ」
ミチオも見た。
「そうですね」
次の動きが始まったので、腕を回した。
八月下旬。
最後のラジオ体操が終わった。
職員が参加記録を見る。
「ミチオは十九回ですね」
「はい」
十五回以上参加したので、記念品が渡された。
小さなタオルと果汁飲料だった。
ミチオはタオルを広げた。
「三十回来た個体も、同じですか」
「同じです」
「そうですか」
タオルを畳んで、小屋へ持ち帰った。
翌朝。
午前六時四十五分。
広場から音楽は聞こえなかった。
昨日で終わったからだった。
ミチオは一度だけ広場を見る。
それから畑へ戻った。
しばらくすると汗が出た。
小屋へ行き、昨日もらったタオルを取る。
汗を拭く。
また畑へ戻る。
ラジオ体操は終わった。
タオルは、まだ使えた。
