終わりそうで、まだ終わらない
夫のお弁当を作り始めたのは、28年前。
夫から「お弁当を作ってほしい」と言われた。
食費が浮くし、私も作ってあげたかった。
それから28年。
ずいぶん長いこと作ったものだと思う。
もちろん、毎朝愛情を込めて作っていたわけではない。
特に、夫婦喧嘩をした翌朝。
嫌がらせ弁当にしてやろうか。
そう思ったこともある(笑)
夫婦関係がうまくいっていない時期は、お弁当作りも本当に面倒だった。
それでも、
「はい、これでお昼ご飯買って食べて」
と、お金を渡したことはなかった。
簡単でも、とりあえず作った。
夫は、前日の夕飯の残り物でも大丈夫な人だった。
冷凍食品も普通に食べてくれた。
だから28年も続けられたのかもしれない。
とはいえ、
「これ、ヘビロテだよね」
なんて、ちょっと嫌味っぽく言われることもあった。
作るほうの身にもなってよ。
と思ったこともある(笑)
でも、夫はお弁当に対して、あれこれダメ出しをする人ではなかった。
「美味しかったよ」
と言ってくれることのほうが多かった。
そんな夫のお弁当作りが、突然終わった。
再就職した会社で、お昼のお弁当が出ることになったのだ。
やったー。
寂しさ?
ゼロ(笑)
ちょうど夫のお弁当箱を買い替えようと思って探していたところだった。
買わなくてよかったー。
夫のほうは、少し寂しかったらしい。
娘に、
「会社で弁当出るけど、母の弁当が恋しくなると思う」
と言っているのが聞こえた。
またまた、上手いこと言って。
私は早速、朝の起床タイマーを15分遅らせた。
これで28年間のお弁当作りも終了。
……と思っていた。
ところが先日、新事実が発覚した。
土曜日は、会社のお弁当が出ないらしい。
聞いてない。
というわけで、久しぶりに夫のお弁当を作ることになった。
献立はすぐに決まった。
冷凍食品の唐揚げ弁当。
所要時間、5分。
少し前に夫から「ご飯の量を減らしてほしい」と頼まれていたので、そこはちゃんと少なめにした。
冷凍唐揚げだけど。
さて。
久しぶりの私のお弁当に、夫は何か言うだろうか。
夫は普通にお弁当を持って仕事へ行った。
そして普通に帰ってきた。
特に何も言わなかった。
夜、台所を見ると、
夫の手によって洗われたお弁当箱が置いてあった。
こうして28年間のお弁当作りは、
終わりそうで、まだ終わらないらしい。

