台湾🇹🇼の夜市|夜店から
夜の街を、亡霊のように歩いていた。
その場所に現実感さえ湧かなかった。
そこは耳慣れない言語が飛び交っている。時折、英語のフレーズが混じっている。でもほんの僅かだった。
私は失意のなかで、喧噪のなかを歩いていた。
私の周囲だけがトンネルみたいに、空虚で無音の空間がぽっかりと続いていた。

左右から呼び込みの声がする。
言語は判らないが、内容は肌で判る。
空腹だが食指が湧かない。
ひとの姿をした虚数が、ただ歩いていた。

台湾は不可思議な場所だった。
極彩色の中華圏のなかであるのに、通りの端々に荘厳な洋風建築がある。
しかもそれに親近感がある。
何ということもない、それが大日本帝国時代の建築物なのだ。
東京駅を思わせる色使い、装飾。
そして細部に込められた威厳を。
長崎に於いても洋館は徐々に解体されて、近代建築に塗り替えらえていく。街ですらこうして新陳代謝をしていく。
なのに私は自らに拘泥して、ただただ頑固になって意地を張っている。
夜明けがくることさえ、否定しようと悶えていた。

