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初鰹とイチゴのカルパッチョ ── 果実酸で食べる、春のワイン前菜


初鰹とイチゴを合わせる。

文字だけ見ると、ちょっと事故っぽい。
魚に果物を乗せました、
みたいな料理は一歩間違えると急に「おしゃれを頑張った皿」になる。
正直、僕も最初はそこが怖かった。

ただ、試作してみたら結論はかなり単純だった。

めちゃくちゃうまい。

ただし、イチゴをそのまま鰹に乗せる料理ではないです。
イチゴを果物として使うとたぶん負ける。
今回はイチゴを「甘い具材」ではなく、赤ワインと酢で崩して、果実酸のソースにする。

初鰹を、果実酸で食べる春の前菜。
ワインと合わせるための一皿です。

きっかけはかなり単純です。

春になって、イチゴが美味しそうに見えた。
同じタイミングで、スーパーに初鰹のたたきが並び始めた。
それを見て、「これ、合わせられないかな」と思った。

最初は、科学的にも何か綺麗な接点があるのかと思って少し調べていました。
ただ、調べた限りでは「初鰹とイチゴは科学的に相性抜群です」
と言えるほどの決定打はなさそうだった。

じゃあ、ワインに寄せよう。

ちなみに最初は、バルサミコを使うつもりでした。
でも赤も白も切らしていた。
そもそも普段の料理は、だいたいりんご酢で足りるので、
家にバルサミコの在庫がなかった。

それで、手元にあった赤ワインをいくつか見て、いちばん合いそうなものを出しました。
飲み比べたときに、ぼんやり「これは魚のたたき系に合いそうだな」と思っていたワインです。

怠惰がたまに設計を進める。


概要

  • 料理ジャンル:カルパッチョ / 魚介前菜

  • 仕上がり:藁焼き鰹の香ばしさ、イチゴの酸、赤ワインの果実香がつながる

  • 想定用途:ワイン向け前菜、春の酒肴、少し攻めた魚料理

  • コンセプト:鰹の鉄感を、イチゴと手持ちの赤ワインで整える

単体で食べても普通にうまいです。
でも、この料理はたぶんワインと合わせた方が強い。

鰹の血っぽさ、藁焼きのスモーク、イチゴの明るい酸、赤ワインの少し深い果実香。
ここが噛み合うと、魚と果物が別々にいる感じではなく、口の中で一本の線になる。

ペアリングって恐ろしい。


材料

  • 初鰹のたたき:100〜200g

  • 塩:少量

  • 大葉:1束

イチゴのビネグレット

  • イチゴ:100g

  • 新玉ねぎ:1/4〜1/2個

  • りんご酢:15g

  • 赤ワイン:30g

  • オリーブオイル:少量

  • 塩:少量

  • 鰹のたたきのタレ:少量

鰹は100gでも作れます。
200gくらいあっても、ソースの量としては足ります。

新玉ねぎは軽めにしたいなら1/4個。
前菜として玉ねぎごとしっかり食べるなら1/2個でもいいです。
薄切りにしてソース化するので、思ったより邪魔にならない。

大葉は数枚でも成立しますが、個人的には1束入れていいと思っています。
この皿は鰹、イチゴ、赤ワインの主張が強いので、大葉が多少多くても負けない。

たたきのタレは、市販の鰹たたきに付いているようなもので大丈夫です。
醤油、酢、旨味が入っているので、今回の試作ではかなり使いやすかった。

自作するなら、醤油は少なめにした方がいいです。
醤油が強いと、イチゴの香りが急に沈む。

近づけるなら、レンチンでアルコールを飛ばしたみりんを醤油の1.5倍くらい入れて、水で軽く希釈し、そこに醤油と同量くらいのりんご酢を入れる。
旨味が足りなければ、鰹節を粉末にした魚粉を少し足す。

市販のボトル醤油を強めに使うくらいなら、白醤油寄りの方が合うと思います。
ただし醤油を強くしすぎると、イチゴが急に負ける。
ここは和風に寄せすぎない方がいいです。


レシピ

作り方

1. イチゴを軽く冷凍する

イチゴはヘタを落として半分に切り、1時間ほど冷凍します。

完全にカチカチにする必要はないです。
狙いは凍らせることではなく、あとで潰したときに果汁を出しやすくすること。
少し組織がゆるんで、ソースにしやすくなれば十分です。

2. 新玉ねぎをスライスして、酸とワインになじませる

新玉ねぎを薄くスライスします。
そこに、りんご酢15g、赤ワイン30g、塩少量、たたきのタレ少量を加えてなじませます。

この時点では、かなり酸が立っていて大丈夫。
あとからイチゴの果汁とオリーブオイルが入るので、少し角が取れます。

新玉ねぎは、ただの添え物ではないです。
鰹とイチゴを直接つなぐと少し危ないので、玉ねぎの香味を間に挟む。
こいつがかなりいい通訳をしてくれる。

3. イチゴを加えて、軽く潰す

軽く冷凍したイチゴを加えます。

ここで強く潰しすぎない。
ただし、シャキシャキしたイチゴが残るのも違う。

アイラップやビニール袋、もしくはビニール手袋を使って、イチゴを一度だけ軽く潰します。
目安は、膨らんでいるイチゴが軽くぺしゃんこになるくらい。
果汁はしっかり出す。
でも完全なピューレにはしない。

ここが結構大事です。
この料理でのイチゴは、主役の果物ではなくソースです。
食感としては、シャキッとした果物より、やわらかいジャムの手前くらいがいい。
イチゴの形が少し残っているけど、口に入るとソースとして鰹に絡む。
そのくらい。

オリーブオイルを少量加えて、全体を軽く混ぜます。

イチゴにはペクチンが含まれるので、果汁、酸、オイルが合わさると、ただの水っぽいソースより少しまとまりが出る。
厳密な乳化ソースというより、鰹に絡む果実ビネグレットに近いです。

ここに新玉ねぎが入ると、玉ねぎ側の甘みと旨味も出てきます。
辛みも少し溶ける。
この段階で、ソースとしてはかなり完成しています。

4. 鰹を切る

鰹のたたきを薄めに切ります。

今回は藁焼き風のたたきがかなり良かったです。
最初に考えていた「スモーク要素を入れる」という話を、鰹のたたき側で回収できた。

鰹は鉄感がある魚です。
そこにイチゴの甘味だけをぶつけると、たぶん変な方向に行く。
でも、表面に香ばしさがあると、赤ワインの果実香とつながる余地が出る。

今回うまかった理由は、イチゴだけではなく、藁焼きの香ばしさがあったからだと思っています。

5. 和えて、置きすぎない

鰹をイチゴのビネグレットと軽く和えます。

置き時間は5〜10分。
今回は10分くらいで十分でした。

ここは「漬け」ではなく「和え」に近いです。
酸と塩が入っているので、長く置くと鰹の表面が締まりすぎる。
セビーチェっぽくしたいなら別ですが、今回は鰹の食感を残したい。

疲れすぎないように、じゃなくて、漬かりすぎないように。
音声入力の名残が出るとこういう誤変換になる。料理メモあるある。

6. 盛り付ける

皿に新玉ねぎとイチゴのビネグレットを敷きます。
その上に鰹を並べて、周りに少しイチゴを散らす。
最後に刻んだ大葉をのせます。

大葉はかなり合います。
ミントでも成立すると思いますが、今回の和風カルパッチョとしては大葉の方が収まりがいい。


なぜ成立するのか

この料理のポイントは、イチゴを主役にしないことです。

イチゴは強い。
香りもあるし、甘味もあるし、色も派手。
そのまま乗せると「鰹にイチゴを乗せた皿」になりやすい。

だから今回は、イチゴをいったんソース側に落としています。

  • りんご酢で甘味を締める

  • 赤ワインで果実香を深くする

  • 新玉ねぎで魚と果物の間をつなぐ

  • オリーブオイルで全体をまとめる

  • 藁焼きの香ばしさで鰹の鉄感を整える

やっていることは、かなりシンプルです。
鰹の血っぽさを消すのではなく、香りと酸で輪郭を整える。

初鰹は脂が重すぎないので、こういう果実酸のソースが入りやすい。
戻り鰹だと脂が強くなって、また別の設計になると思います。


ワインとの相性

この料理は、単体で完結させるよりワインに寄せた方が面白いです。

ただし、ここはまだ僕の感覚ベースです。
ワインに詳しい人が読むと突っ込みどころはあると思うので、先に逃げ道ではなく前提を書いておきます。

今回この料理は、ほぼ「この手持ちの赤ワインに合わせる」前提で作っています。
ソースにも同じ方向の赤ワインを使いました。
つまり、一般論として「初鰹とイチゴにはこのワインが合う」と言える段階ではないです。

今回合わせたワインは、ベリー、イチジク、プルーンのような少し濃密な果実香があるタイプでした。
普通のフレッシュなイチゴというより、少し熟した赤〜黒系果実の印象。

これが藁焼きの鰹と意外に合った。

理由はたぶん、鰹の表面の香ばしさと、ワイン側の深い果実香がつながったからです。
イチゴのビネグレットが間に入ることで、魚とワインが急に近くなる。

今回の実食から言える範囲に絞るなら、方向性はこのあたり。

  • 酸がある

  • 果実香がある

  • タンニンが強すぎない

  • スモークや魚の鉄感と喧嘩しない

この4つです。

もっと感覚的に言うと、「飲んでみて、さっぱりしていて、果実由来の甘い香りがある赤」が合いやすいと思います。
ワイン界隈では「飲みやすい」が雑な言葉なのはわかっているんですが、家庭で合わせるならこの感覚はわりと大事です。

舌にまとわりつくような濃さ、渋み、重さがある赤は、今回は少し怖い。
僕の中では、そのあたりが強いと「タンニン強め」「濃いめの赤」として警戒します。

ここから先はまだ仮説。
たとえば軽めの赤や、果実香のある白でも成立する可能性はあると思います。
ただ、まだ同条件で試していないので、この記事では「候補」くらいに留めます。

強いミネラル感のある白も、場合によってはイチゴの明るさと分離しそうです。
これも未検証なので断定はしません。
ただ、今回の皿は「酸と果実香でつなぐ」方向なので、香りが硬すぎるワインより、果実のニュアンスがある方が自分の感覚では合わせやすい。

今回の試作で言えるのは、このくらい。

藁焼き鰹とイチゴの組み合わせは、少なくとも今回の赤ワインでは成立した。
理由も、香ばしさ、鉄感、果実酸、赤ワインの香りである程度説明できる。
でも、まだ普遍ルールではない。

僕の舌ではかなり当たった。
ただし、標準化はこれから。


失敗しやすいポイント

イチゴを甘い具材として使う

これはかなり危ないです。
イチゴを主役にすると、魚と果物が分離します。

甘味を出すのではなく、酸と香りを使う。
そのために、酢と赤ワインで必ず料理側に寄せます。

鰹を長く漬ける

酸が入っているので、長く置くと食感が変わります。
5〜10分で十分。

今回は「浸透させる」より「まとわせる」くらいの意識でいいです。

ワインを重くしすぎる

鰹は鉄感があるので、タンニンの強い赤は難しい。
今回合った赤はあるけど、赤なら何でもいいわけではない。

飲んでみて、舌に重く残る赤より、さっぱりした果実香がある赤の方が入り口としては安全だと思います。
専門的な正解というより、今の僕の舌ではそこが基準です。


まとめ

初鰹とイチゴは、思いつきだけだと危ない組み合わせです。

でも、イチゴをソースに落として、酸で締めて、藁焼きの香ばしさとワインの果実香につなぐと、ちゃんと成立する。

今回の料理は、健康料理ではないです。
そこを売りにする料理でもない。

魚と果実の共演を、ワインと一緒に楽しむための春の前菜。

そのくらいが、たぶん一番しっくりくる。

次は、漬け時間を5分、10分、別添えで比べたい。
あとワインも、今回のボトルだけで終わらせず、果実香の方向が近いものと、あえて外しそうなものを比べたい。

これはまだ完成ではないけど、かなり手応えがある。
少なくとも、イチゴを見たときに「デザート」だけで終わらせるのは、
ちょっともったいない。


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