良いマネージャー、都合のいいマネージャー
「良いマネージャーとは、どのような人か」と聞くと、たいてい似た答えが返ってくる。
話をよく聞いてくれる。細かく口を出さず、仕事を任せてくれる。失敗しても責めず、挑戦を応援してくれる。部下を褒め、感謝を伝え、困ったときには守ってくれる。
もちろん、どれも悪いことではない。しかし、それは本当に「良いマネージャー」の条件なのだろうか。
単に、自分にとって「都合のいいマネージャー」を並べているだけではないだろうか。
私にとって良いマネージャーとは
私にとって良いマネージャーとは、給与を上げてくれる人である。
少し身も蓋もない話に聞こえるかもしれない。しかし、仕事では残業がほどほどの範囲に収まっているなら、給与はかなり重要な要素である。
給与が上がれば、生活の選択肢が増える。家族に使えるお金も、学習や経験に投資できるお金も増える。将来のために貯蓄でき、会社に依存せずに意思決定しやすくなる。
「仕事のやりがい」や「職場の雰囲気」も大切だが、給与は仕事から得られる価値を極めて具体的に表している。
だから私にとっては、優しく話を聞いてくれるマネージャーより、自分の成果と役割を大きくし、その結果として給与を上げてくれるマネージャーの方がよい。
給与を上げてくれるとはどういうことか
もちろん、マネージャーが好き勝手に部下の給与を決められるわけではない。
ここでいう「給与を上げてくれる」とは、理由もなく高い評価をつけてくれることではない。次のようなマネジメントによって、より高い評価に値する状態を作ってくれることである。
事業にとって重要な仕事を任せる
期待する成果を明確にする
本人の能力より少し難しい仕事に挑戦させる
足りない点を率直にフィードバックする
本人の成果を組織内で正しく認識させる
昇進や昇給に必要な役割を獲得する
評価会議で本人の成果と価値を説明する
このようなマネージャーは、必ずしも優しいとは限らない。高い成果を求めるため、厳しい指摘をすることもある。簡単で楽な仕事ではなく、責任の重い仕事を任せることもある。
短期的には面倒なマネージャーに見えるかもしれない。しかし、その人の下で成果と役割が大きくなり、給与や市場価値まで上がるなら、私にとっては良いマネージャーである。
都合のいいマネージャー
反対に、都合のいいマネージャーとはどのような人だろう。
細かいことを言わない。厳しい目標を設定しない。本人がやりたい仕事だけを任せる。成果が出ていなくても褒める。評価に影響する欠点があっても、関係を悪くしたくないので指摘しない。
その人の下で働くのは快適である。叱られず、否定されず、好きなように仕事ができる。短期的な満足度は高い。
しかし、数年たっても役割が広がらず、給与も上がらず、社外で通用する能力も身についていないとしたら、その人は本当に良いマネージャーだったのだろうか。
本人の機嫌を損ねないことと、本人の利益を増やすことは違う。
都合のいいマネージャーは、今日の不快感を減らしてくれる。良いマネージャーは、明日の選択肢を増やしてくれる。
「良い」は立場によって変わる
ただし、すべての人にとって給与が最優先だと言いたいわけではない。
子育て中であれば、給与よりも勤務時間や柔軟性が重要かもしれない。若いうちは、給与よりも成長機会を優先する人もいる。仕事内容、裁量、勤務地、雇用の安定、人間関係、社会的意義を重視する人もいる。
大事なのは、何を選ぶかより、自分が何を最大化したいのかを自覚していることである。
給与を上げたいと言いながら、難しい仕事は避けたい。成長したいと言いながら、厳しいフィードバックは受けたくない。裁量がほしいと言いながら、結果への責任は負いたくない。
このように、得たいものと避けたいものが矛盾している人は少なくない。
その状態で「良いマネージャー」を語ると、自分に要求せず、気分よく働かせてくれる人を選びやすい。それは良いマネージャーではなく、現在の自分に都合のいいマネージャーである。
何を最大化したいのか
良いマネージャーに出会いたいなら、最初に考えるべきなのはマネージャーの性格ではない。
自分は仕事を通じて何を得たいのか。給与なのか、時間なのか、成長なのか、裁量なのか、安定なのか。何を優先し、そのために何を引き受けるのか。
私の場合、残業がほどほどであるなら、給与が最大のファクターになる。だから、私にとって良いマネージャーとは、成果を出せる仕事を作り、必要な要求とフィードバックを与え、その成果を給与につなげてくれる人である。
良いマネージャーは、誰にとっても優しい人ではない。
自分が本当に得たいものへ近づけてくれる人である。そして、その人を見分けるためには、まず自分が仕事で何を大事にしているのかを決めなければならない。
