給料を上げたい人が、まず理解すべきこと
「もっと給料を上げたい」と考えたとき、多くの人は仕事を頑張ろうとする。
資格を取る。残業する。上司の期待に応える。高い評価を目指す。
もちろん、どれも無駄ではない。しかし、その努力によって給料がいくら上がるのかを、きちんと把握している人は少ない。
年収を上げたい人が最初に理解すべきなのは、自分の能力ではなく、会社の報酬構造である。
どれほど努力して成果を出しても、その成果が会社の評価制度や昇格条件に合っていなければ、給料には反映されない。新しい仕事に挑戦すれば、ビジネスパーソンとしての経験は増える。しかし、会社が求めていない挑戦であれば、評価が下がることさえある。
給料を上げるには、まず「何をすれば、この会社では給料が上がるのか」を知る必要がある。
年収を上げる二つのルート
年収を上げる方法は、大きく二つある。
一つは、今の会社で昇給・昇格すること。もう一つは、別の会社や役割に移り、より高い金額で評価されることである。
この二つでは、給料が決まるルールがまったく異なる。
私が新卒で入った大企業では、何年目にどの試験を受け、どの等級に上がれば、給料がどの程度になるのかをかなり正確に予測できた。
真面目に働き、大きな問題を起こさなければ、同じ年次の社員はおおむね同じように昇給する。高い評価を取っても、賞与が少し増えるだけで、基本給は次の昇格までほとんど変わらないこともあった。
このような会社で年収を上げたいなら、仕事量を増やす前に、次のことを調べるべきである。
自分の職種や等級の給与レンジはいくらか。次の等級には、いつ、どのような条件で上がれるのか。高評価は、基本給、賞与、昇格のどこに反映されるのか。最速で昇格した先輩は、どのような仕事をしていたのか。
会社員の給料は、努力や成果を採点した点数ではない。多くの場合、給与テーブル上の位置によって大枠が決まる。
給与テーブルが社員に公開されていなくても、社内の先輩や上司の話、求人票に記載された年収レンジを見れば、おおよその水準は推測できる。
年収1000万円の席がなければ、1000万円にはなれない
重要なのは、「頑張れば報われるか」ではない。
自分が希望する給料の席が、その会社、その職種に存在するかである。
たとえば目標年収が1000万円なら、どの等級や役割に上がれば届くのか。そこまで何年かかるのか。そもそも、その職種に年収1000万円の給与レンジがあるのか。
その席が存在しないなら、どれだけ高い評価を取り続けても届かない。
これは能力不足ではない。給料が決まる仕組みの問題である。
だから転職とは、単に働く会社を変えることではない。別の給与テーブルへ移ることである。
転職市場で評価されるのは「頑張った量」ではない
ただし、希望すれば誰でも高い給与テーブルへ移れるわけではない。
他社から、「この人には、今より大きな役割を任せられる」と判断される必要がある。
そのときに評価されやすいのは、主に三つである。
一つ目は、リーダーシップだ。
役職があるかどうかではない。自ら課題を見つけ、関係者を動かし、必要な判断を行い、成果が出るところまでやり切った経験である。
二つ目は、思考力だ。
何を問題と捉え、どのような選択肢を比較し、どんなリスクを考え、なぜその打ち手を選んだのかを説明する力である。
三つ目は、生産性への理解だ。
忙しく働いたかではなく、投入した人員、時間、費用に対して、どれだけ価値を増やしたかを考える力である。
たとえば、「AI研修を100人に実施した」というだけでは、活動量を示しているにすぎない。
研修によって何時間の業務を削減できたのか。仕事の品質は上がったのか。売上や利益にどのような影響があったのか。そこまで説明できて、初めて実績になる。
市場で評価されるのは、成果の数字だけではない。
その成果のうち、どこまでが本人の判断によるものだったのか。そして、別の会社や環境でも同じような成果を再現できるのかが問われる。
給料を上げたい人が、明日からやること
まず、自社の給与テーブル、昇格ルート、評価基準を調べる。
次に、自分の目標年収が、今の会社で実現できるかを確認する。
実現できるなら、最短でその等級や役割へ上がるための仕事を選ぶ。実現できないなら、転職も選択肢に入れる。
そのうえで、リーダーシップ、思考力、生産性を示せる仕事を意図的に取りにいく。そして、自分が直面した課題、行った判断、実行したこと、得られた結果を記録しておく。
年収を上げるために必要なのは、ただ努力の量を増やすことではない。
自分が今、どの給与テーブルの上にいるのかを知り、次にどのテーブルへ移るのかを決めることである。
