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「みんなで考えれば良いアイデアが出る」という誤解

「一人で考えるより、みんなで考えたほうが良いアイデアが出る」

これは、多くの会社で当然のように信じられている。

新しい商品を考える。事業戦略を作る。組織の課題を解決する。そんなときは、関係者を集めてブレインストーミングを行う。

たしかに、一人では持てる知識や経験に限界がある。異なる専門性や経験を持つ人が集まれば、一人では思いつかないアイデアが生まれそうに思える。

しかし、研究が示していることは、もう少し複雑である。

多くの人を集めれば、自動的に集団の知性が高まるわけではない。むしろ、集まって話し始めることで、もともと存在していた考えの多様性が失われることもある。

「みんなで考えること」について、知っておきたい五つのファクトを紹介する。

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1. 典型的な集団ブレインストーミングは、一人ずつ考える方法に負けやすい

1991年のメタ分析では、20研究、アイデア数について2,577人・844グループを分析している。対話しながら考える集団よりも、各自が一人で考え、後から案を合算する「名目集団」のほうが、アイデアの量と質の両方で優れていた。人数が多い、権威者がいる、口頭で順番に発言するといった条件では、生産性の低下が大きくなった。

原因としては、他人が話している間に自分の思考が止まる「生産ブロッキング」、評価を恐れて発言を控える「評価懸念」、他人の発言に引っ張られる認知的固着などが挙げられる。

研究

Mullen, B., Johnson, C., & Salas, E.(1991) “Productivity Loss in Brainstorming Groups: A Meta-Analytic Integration”

https://doi.org/10.1207/s15324834basp1201_1

2. 成果は低くても、参加者は「うまくいった」と感じる

集団で考えた人は、一人で考えた人より自分たちの成果を高く評価する傾向がある。他人が話している間は自分がアイデアを出せずに困る時間が減り、自分も議論に貢献した感覚を持ちやすいからである。研究ではこれを「集団生産性の錯覚」と呼んでいる。

つまり、ブレインストーミングが残り続ける理由は、成果が高いからだけではない。会議をした人が満足しやすいからでもある。

研究

Paulus, P. B., Dzindolet, M. T., Poletes, G., & Camacho, L. M.(1993) “Perception of Performance in Group Brainstorming: The Illusion of Group Productivity”

https://doi.org/10.1177/0146167293191009

Nijstad, B. A., Stroebe, W., & Lodewijkx, H. F. M.(2006) “The Illusion of Group Productivity: A Reduction of Failures Explanation”

https://doi.org/10.1002/ejsp.295

3. 多様性と創造性には、単純な正の相関があるわけではない

文化的に多様なチームを対象にした47サンプル、2,832チームのメタ分析では、国籍や民族など外から見える「表層的多様性」と創造性・イノベーションには、全体として有意な関係が見られなかった。

一方、価値観、世界観、知識、問題の捉え方といった「深層的多様性」は、創造性・イノベーションと正の関係にあった。ただし、その効果は同じ場所で十分にやり取りできることや、互いの知識を必要とする相互依存的な仕事であることなど、条件に左右される。

したがって、「属性が多様なら良いアイデアが出る」とまでは言えない。重要なのは、課題に関係する異なる知識や思考様式が存在し、それらが実際に利用されることである。

研究

Wang, J., Cheng, G. H.-L., Chen, T., & Leung, K.(2019) “Team Creativity/Innovation in Culturally Diverse Teams: A Meta-Analysis”

https://doi.org/10.1002/job.2362

4. 集団は、全員が知っている情報ばかり話す

StasserとTitusの有名な実験では、メンバー全員が持つ共通情報と、一部のメンバーだけが持つ固有情報を分けて与えた。

グループが正しい判断をするには、各人の固有情報を持ち寄る必要があった。ところが議論では、全員がすでに知っている情報と、最初から支持されていた案に都合のよい情報が繰り返し話された。その結果、集団は固有情報を十分に統合できず、最初の多数派の選好を強化した。

多様な専門家を集めても、全員が知っている話だけをしていれば、専門家を集めた意味はないのである。

研究

Stasser, G., & Titus, W.(1985) “Pooling of Unshared Information in Group Decision Making: Biased Information Sampling During Discussion”

https://doi.org/10.1037/0022-3514.48.6.1467

5. 他人の意見を早く見せると、考えは多様でなくなる

144人を対象にした推定実験では、他人の回答を見せるだけで、参加者の回答のばらつきは小さくなった。しかし集団全体の誤差は改善せず、自信だけが高まる現象も見られた。

「みんなの意見を参考にしてから考えてください」は合理的に聞こえる。しかし、それを最初に行うと、集団が持っていた独立した視点を失うことがある。

研究

Lorenz, J., Rauhut, H., Schweitzer, F., & Helbing, D.(2011) “How Social Influence Can Undermine the Wisdom of Crowd Effect”

https://doi.org/10.1073/pnas.1008636108


多様性は、存在するだけでは価値にならない

異なる専門性や経験、思考を持つ人と意見を交換することで、新しい発想が生まれる。そのためには、別々に考えた人たちの答えを、違いを消さずに持ち寄る必要がある。

いきなりチームメンバーを集めて「さぁ、ブレストしましょう」では「仕事をしたつもり」という自己満足しか生まれない。

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