世界の軍事Techを席巻するパランティア“アレックス・カープ”とは何者か?
〜戦場のAI、哲学者の狂気、そして日本へ伸びる影〜
「倫理」を説いたAI企業はペンタゴンから消され、「狂気」を選んだ哲学者が戦場を支配した。 パランティアCEO、アレックス・カープ。
一行もコードが書けない彼を、なぜピーター・ティールは選んだのか?
今月、官邸で行われた高市総理との密談の裏側。
放送作家・石井成和が綴る、いま、世界で起きている現実…
序章:ペンタゴンが突きつけた「レッドライン」
いま、一番、世界が注目する男の一人、パランティアCEO、アレックス・カープについて、本格的な興味をもったのは、あの事件の時だった。
コトの始まりは、2026年の2月末。
米国国防総省(ペンタゴン)が、いまや、AI界の巨星となったアンソロピック(Anthropic)を「国家安全保障上のサプライチェーンリスク」に指定し、事実上の出入り禁止にしたことだ。
もう、みなさんもご存じのように、理由は、アンソロピックのCEOダリオ・アモデイが守り抜こうとした「倫理」だった。
彼は自社のAI「Claude(クロード)」を、「アメリカ国民の大規模監視」や「自律型兵器による殺傷」には絶対に使わせないというレッドラインを譲らなかったわけだ。
しかし、ペンタゴンはこの「制限」を拒絶し、こう言い放った。
「敵は倫理など気にせず、100%のスピードで殺しに来る。そんな生ぬるいことを言っているお前らのAIに、現場の兵士の命を託せるか?」
トランプ大統領も、同じような言葉でAnthropicを罵った。
なぜなら、いま話題の軍事AI…ベネズエラで電光石火の大統領拘束を実現し、イランの精密爆撃を実現してきた「パランティアが運用する戦場OS〜「Maven Smart System」」には、AnthropicのClaudeが組み込まれていたからだ。
ということは、倫理を守ろうとしたアモデイと、彼が作ったAI「Claude」を自社のシステムに組み込んでいたアレックス・カープは、いわば、盟友のはずだった。
ところが、アモデイがパージされた時、アレックス・カープは、Anthropicの名を挙げこそしなかったものの、ワシントンで開かれたテックサミットの壇上で、こう言い放ったのだ。
「シリコンバレーが全員のホワイトカラーの仕事を奪っておきながら、軍まで裏切る? それが技術の国有化に繋がらないと思うなら、そいつはretarded(知的障害者)だ。IQが160あっても、特にretardedかもしれない」
つまり、カープは、倫理を盾に軍への協力を拒むAI企業を「高学歴のノータリン」と斬り捨てたのだ。
もちろんだが、この「retarded」という言葉は、大炎上した。
そして、この時、僕の心情は、どちらかと言えば、ダリオ・アモデイの立場に近いと感じていた。
誰だって、家族を殺されてから、「あっ、ごめんなさい、その攻撃はAIの間違いでした」と言われたくはない。
(この、「AIの間違い」や、「恐怖の歩留り」に関しては、以下のコラムも読んでみて下さい!)
だからこそ、それをボロクソにいう男が気になって仕方がなかった。
いま、一番、世界の戦場を変えつつある男、アレックス・カープとは、一体、何者なのか?
第1章:雪山の哲学者が振るう「思考のメス」
カープの風貌は、およそ時価総額数兆円の企業のトップには見えない。
トレードマークの爆発したような縮れ毛に、色付きの眼鏡。
Alex Karp is one of @TIME's Most Influential People.
— Palantir (@PalantirTech) April 16, 2025
"An unashamed techno-nationalist . . . [A]ggressive language has won Karp—who recently co-authored the NYT best seller The Technological Republic—legions of followers. Meanwhile, business is booming."https://t.co/lM7rDZcLm3
拠点はシリコンバレーではなく、ニューハンプシャーの雪山にある 。
なんでそんな所に住んでいるのかと調べて見ると、そこで、週に5時間以上のクロスカントリースキーをして、1日40〜60km滑ることもあり、体脂肪率をアスリート並みの7%に抑えているのだという 。
ちょっと、何言ってんのか分からない…
思わず、サンドイッチマン風のボケが頭をよぎる。
しかも、驚くべきは、その経歴だった。
彼はコードを一行も書かない。いや、書けない。
なにせ、プログラミングなど一度も学んだことがないのだ。
代わりに彼が持っているのは、ドイツの名門フランクフルト大学で、現代哲学の巨匠、ユルゲン・ハーバーマスの薫陶を受けて得た「新古典的社会理論」の学位である。
つまり、SNSで言葉が荒れたり、分断が進んだりしてる現代だからこそ、「言葉を尽くして合意を目指す」というハーバーマス氏の愚直なまでの理性を学んでおきながら、彼は世界最強の軍事AIを売り歩くという、 一見すると支離滅裂な矛盾だらけの男なのだ。
なぜ、そんなことが一人の人間の中で起きるのか?
調べてもよく分からなかったが、どうやら彼の根底にあるのは「自由民主主義を守るためには、圧倒的な力の裏付けが必要だ」という哲学らしい。
それ故、彼は、多くのテック企業が掲げる「AIの倫理」を「空虚なポエム」として嫌悪する。
「戦場では、ジャミング(通信妨害)でネットワークが途切り、爆弾が降り注ぐ。その極限状態で『動く』ソフトウェアだけが、真実だ。PowerPointで語られる倫理に、何の意味がある?」と、考えているのだろう。
第2章:「大統領にでも、クソったれと言え」
そんなカープが作り上げたパランティアの社風は、シリコンバレーの「ぬるま湯」とは一線を画す。
さすが、筋金入りの哲学者らしく、社内には「フラット(平坦)」という言葉さえ生温い、剥き出しの議論文化があるようだ。
例えば、新人のエンジニアであっても、CEOであるカープに対して、「あんたの言っていることはクソだ、間違っている」と突きつけることが許されている……いや、むしろ推奨されているという。
議論こそ全て。そこに変な遠慮はするなという哲学。
こんなCEOがいたら、確かに、社員もやる気になるかもとは思う。
実際に、言えるかどうかは別として…
アレックスは言う。
「失敗しても退職金をもらって逃げるようなリーダーは、戦場では真っ先に殺される」 。情報のわずかな歪みが、現場の兵士の「死」に直結するのだと。
実際、2025年、驚異的な爆益を叩き出した際、彼は批判勢に対し、こう言い放った。
「Read 'em and weep」
直訳すれば「読んで泣け!」だ。
つまりは、「文句があるなら、この決算書の数字を見てからにしろ!悔し泣きしろ!もし、敗者に流す涙があるのならな…」と言っているワケだ。
なんという不遜。なんという傲慢。
こんな大企業のトップが、これまでいただろうか?
ここまで変人で狂人で、常識外れの人間だと、誰もが、こんな疑問を抱くだろう?
なぜ、シリコンバレー最強の投資家と言われるピーター・ティールは、一行もコードが書けず、ビジネス経験もゼロだった「哲学オタク」のカープを、テック企業のトップに据えたのか?
実は、二人の出会いは大学時代に遡る。
まだ、何者でもなかった二人は、スタンフォード法科大学院の同級生で、当時は資本主義と社会主義をめぐって「まるで野獣のように」議論を戦わせる仲だったという 。
そして、その時からティールは気づいていたようだ。
これからのAI戦争に必要なのは、高度なプログラミング能力ではない。
「情報の暴力性」と「国家の存亡」という重すぎる問いに、哲学的な答えを出せる狂気なのだと。
こうして、自ら投資し、パランティアを立ち上げたティールは、そのCEOに、かつての同級生、カープを据えた。
すると、カープは就任後、すぐに現場に飛び込み、エンジニアたちが気づかなかった「現場の歪み」を哲学的な洞察で次々と修復していった。
彼はコードを書く代わりに、ソフトウェアに「魂(思想)」を込めたのだという。
第3章:2026年3月5日、首相官邸の密談
そして、カープの「狂気」は、ついに日本へ上陸した。
2026年3月5日。
カープの盟友であり、パランティアの会長であるピーター・ティールが、日本に降り立ったのだ。
向かった先は、永田町の首相官邸。
そこで彼は、高市早苗首相と約25分間にわたる会談を行った。
公式には「日米の先端技術分野の現状と展望について意見交換」とされている。
が、いまや、世界の「キル・チェーン」を握る男が、防衛力強化を掲げる高市政権と何を話し合ったのか?
日本が誇ってきた「平和主義」というレッドラインは、カープたちが作り上げた「剥き出しの力」の前で、どこまで持ちこたえられるのか。
僕は酷く心配したが、そのニュースが、きちんとした解説付きで大手メディアから伝えらることはなかった。
結び:我々はどちらのAIを選ぶのか
我々は、アモデイのような「迷える倫理」を選ぶのか。
それとも、カープの「残酷な現実」を飲み込むのか。
確かなことが一つある。
雪山の哲学者は冷徹な笑みを浮かべ、今日も次の戦場をアップデートし続けているということだ。
「読んで泣け…」
彼の言葉は、平和ボケした我々の意識を、鋭く、そして残酷に切り裂いていく。
