ポストパンクは二つあった。― イギリスとアメリカで分かれた、二つの音楽革命 ―
Franz Ferdinandをきっかけに、私はポストパンクというジャンルを調べ始めた。
最初は単純に、「彼らはGang of FourやJoy Divisionの影響を受けているらしい」という程度の興味だった。
しかし、その流れをたどるうちにPublic Image Ltdへ行き着き、さらにMaterialやSonic Youthまで聴くようになった。
そして、一つの疑問が生まれた。
「ポストパンクは、本当にイギリスだけのムーブメントだったのだろうか。」
パンクはアメリカで生まれ、イギリスで爆発した。
一般的に「パンク」と聞くと、多くの人がSex Pistolsを思い浮かべるだろう。
もちろん、それは間違いではない。
しかし音楽史をたどると、そのルーツはアメリカ・ニューヨークにある。
1970年代前半、The Stooges、New York Dolls、Ramonesといったバンドが、それまでのロックとは異なるシンプルで荒々しいサウンドを鳴らしていた。
彼らが作ったのは、「パンクの音」だった。
そして1976年、その音はイギリスへ渡る。
Sex Pistolsは、音楽だけではなく、ファッション、思想、社会への反抗まで含めて「PUNK」という文化を作り上げた。
世界中の若者が、
「俺もバンドをやろう。」
そう思わせたのは、間違いなく彼らだった。
つまり、
アメリカがパンクという音楽を生み出し、イギリスがパンクというムーブメントを生み出した。
ここまでは、多くの人が知っている歴史かもしれない。
しかし、本当に面白いのはその後である。
パンクの終焉とともに、アメリカとイギリスは、それぞれまったく違う未来を選択していく。
アメリカが選んだ道
The Stooges
↓
Ramones
↓
No Wave
↓
Material
↓
Sonic Youth
アメリカは、「ロックをもっと壊す」という方向へ進んだ。
ノイズ、不協和音、即興演奏。
音楽のルールそのものを問い直し、「音楽ではない」と思われていた音まで表現へと変えていく。
イギリスが選んだ道
Sex Pistols
↓
Public Image Ltd(PiL)
↓
Joy Division
↓
New Order
イギリスは、「ロックをもっと進化させる」という方向へ進んだ。
ダブ、レゲエ、ファンク、電子音楽を取り込みながら、パンクの先にある新しいロックを模索していく。
その流れは、やがてニューウェーブやマッドチェスター、そしてブリットポップへと受け継がれていった。
私は当初、ポストパンクとはイギリスで生まれたムーブメントだと思っていた。
しかしMaterialやSonic Youthを聴き、その背景を調べていくうちに、その認識は大きく変わった。
同じ「パンクのその後」を描きながらも、アメリカとイギリスはまったく異なる方法で音楽を発展させていたのである。
だから私は思う。
ポストパンクは、一つではなかった。
イギリスにはイギリスのポストパンクがあり、アメリカにはNo Waveという、もう一つの革命があったのである。
イギリスが選んだ「進化」
Sex Pistols解散後、ジョン・ライドンはPublic Image Ltd(PiL)を結成する。
彼は、もう同じパンクを繰り返そうとはしなかった。
レゲエ、ダブ、ファンク、電子音楽。
さまざまな音楽を取り込みながら、新しいロックを模索していく。
その流れの中で生まれたのが、
Joy Division
Gang of Four
Wire
といったバンドたちである。
彼らはロックを壊したのではない。
壊れたロックを、新しい形へと進化させようとしていた。
そして、その先にNew Orderやニューウェーブが生まれていく。
アメリカが選んだ「解体」
一方、ニューヨークでは別の動きが起きていた。
No Wave。
名前の通り、「New Waveなんてやらない」という、少し皮肉を込めたムーブメントだった。
彼らが目指したのは、ロックを進化させることではない。
ロックそのものを解体することだった。
ノイズ。
不協和音。
即興演奏。
音楽として成立するかどうかよりも、「今まで音楽ではないと思われていた音」を表現へ変えていく。
MaterialやSonic Youthを聴いたとき、私はまさにそんな印象を受けた。
正直に言えば、
「壊れた曲」
そう感じた。
しかし、何度も聴いているうちに、その壊れた音が不思議と音楽として成立していることに気付く。
そこに強く惹かれた。
ポストパンクは、一つではなかった。
イギリスでは、ロックを進化させた。
アメリカでは、ロックを解体した。
同じ「ポストパンク」という言葉で語られることが多いが、その中身はまったく違っていたのである。
イギリスではJoy DivisionやPiLが新しいロックを作り上げ、ニューヨークではNo Waveが音楽そのものの境界線を押し広げていった。
どちらも、パンクの「その後」を模索した結果だった。
おわりに
私はFranz Ferdinandを理解したくて、ポストパンクを調べ始めた。
しかし、その旅は思いもよらない場所へ連れて行ってくれた。
Sex PistolsからPiLへ。
Joy DivisionからGang of Fourへ。
そしてMaterial、Sonic Youth、No Waveへ。
一つのジャンルを調べていたつもりが、そこにはイギリスとアメリカ、それぞれが描いた異なる音楽革命があった。
だから私は思う。
ポストパンクは、一つではなかった。
二つの国が、それぞれ異なる方法で「パンクの次」を創り上げていたのである。
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